行動あるのみです!

文字の大きさ
上 下
33 / 81

元には戻らない2

しおりを挟む

 “転換の魔法”とは、高等技術を必要とする魔法で使用するには繊細な魔力操作コントロール能力がなければ発動不可能。アデリッサはレーヴのシェリを愛する好意を自分へ、レーヴのアデリッサを嫌う嫌悪をシェリへ転換した。
 魅了と異なるのは、元々存在する感情の行き先を転換しただけなので魔法を掛けられたレーヴが違和感を覚えることがないことと個人にしか対象と出来ないこと。
 レーヴの目には、シェリはアデリッサ、アデリッサはシェリに見えている。
 元に戻す方法が実はないのだ。
 
 術者であるアデリッサを殺すか、魔力を封じれば万事解決にならない。そうしても、愛する者を失ったレーヴは嘆き悲しむだけ。
 
 
(元々あったシェリへの好意をアデリッサに変換されただけだからね……)
 
 
 隣に歩くシェリに事実を話すべきかと思案する。
 王家の番犬と謳われるヴァンシュタイン家の3男。ナイジェル公爵は娘に甘々な意外、王家に忠実な男。彼の行った政策で数年前襲った飢饉を逃れられた。黒い噂も聞かない。オーンジュ公爵との仲の悪さは性格の合わさなから来ているだけ。アデリッサが行ったことは重罰に匹敵するが第2王子としてのレーヴには問題が起きていない。婚約者がいながら浮気同然の行動をしているのであれだが……うん、とミエーレは判断した。
 
 
(王家にとって今回のこれは実害がないので、問題なし)
 
 
 寧ろ、哀れな女だと抱く。
 ヴェルデと同じく、ミエーレも幼少期からレーヴと交流があった。家同士の繋がりから1番シェリと多く会っていたミエーレは頼れられていた、レーヴに。
 初めての顔合わせで失敗して以来、何度正直に気持ちを言おうとしても緊張と恥ずかしさが勝って進展どころか後退する一方。何度か助言をしたり、シェリの好みそうな場所や物を教えてやるが……結果はお察し。
 ただ、シェリを好きな気持ちだけは本物だったんだ。
 “転換の魔法”を掛けられた対象者を元に戻す方法はない。元からある好意を他人へ矢印を変えられただけだから。
 シェリに向けられていた熱い愛を方向を変えることで自分に向けさせたアデリッサ。そうまでしないとレーヴの心を手に入れられないと覚悟した、彼女なりの最後の行動なのだろうが……哀れ以外の何者でもない。
 レーヴのシェリに対する変貌した接し方。あれが元々自分に向けられていたものと知り、悔しくは悲しくはならなかったのか。
 
 席を立ったレーヴに隠れて見せたあの歪んだ笑み……手に入れれば他のものはどうでもいいことか。
 
  
「はあ……」
「あら、大きな溜め息ね」
「まあね。シェリはもう帰る?」
「ええ。今日は迎えを断ったから、歩いて帰るけれど」
「なんだったら、おれの家の馬車で帰る? ちょっと城に行かなきゃいけないから遅くなるけど」
「何か用事でも?」
「父上に放課後来るように言われているんだ」
「そう。でもありがとう。わたし、今日は歩いて帰りたい気分なの」
「あっそ」
 
  
 シェリと別れたミエーレは寄り道せずまっすぐ校門へと向かった。
 待たせていた馬車に乗り込んだ。
 
  
「出発して」
 
  
 行き先は王城。
 レーヴ、アデリッサの関係の正体を父ヴァンシュタイン公爵と国王に報告する為に行く。
 
  
    
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい

綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。 そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。 気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――? そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。 「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」   私が夫を愛するこの気持ちは偽り? それとも……。 *全17話で完結予定。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

親切なミザリー

みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。 ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。 ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。 こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。 ‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。 ※不定期更新です。

あの子を好きな旦那様

はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」  目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。 ※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

処理中です...