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王家主催のパーティー7
しおりを挟む不穏な気配を漂わせるシェリとアデリッサ。おろおろとするミルティー。周囲の目が段々と集まってくる。いくら犬猿の仲といえど、公の場で醜態を晒す前はアデリッサもしない。どちらかが引けばいいだけ。こうしている間にも時間は過ぎていく。ヴェルデとの約束があるシェリは挑発するように鼻で笑った後「ではごめんあそばせ」とミルティーを連れてその場を離れた。悔しげに歯を噛み締めるアデリッサには十分伝わった。
貴方の相手をしている暇はわたしにはない、と。
ミルティーを連れたのもそれを誇示するため。
アデリッサが見えない場所まで行くとシェリは歩みを止めてミルティーに振り向いた。
「ここまで来たら彼女も追って来ないわ」
「は、はい、ありがとうございます!」
「では、わたしはこれで失礼するわ」
「オーンジュ様はこの後どうされるのですか?」
「友人を探します。約束しておりますので」
「そ、そうですか。すみません、引き止めてしまって……」
何故か落ち込んだミルティーはとぼとぼと人混みの中へ消えていった。アデリッサの件があるので彼女が誰かといるのをきちんと確認して、シェリも行動を始めた。
グラスを片手に会場内を歩くもヴェルデの姿がない。テラスにいのかと足を運んでも姿はない。彼も忙しい人だ、ダンスの約束も絶対ではない。
歩き回ったせいで少々疲れたシェリは疲れた招待客が休憩するための長椅子に腰を下ろした。持っていたグラスを口元へ運んだ。炭酸水に絞ったグレープフルーツが注がれた飲み物はシェリの口内を存分に潤してくれた。レーヴ欠席の訳を1人をいいことに考えてみた。
……何も、答えは出なかった。
クロレンス王立学院内で何度もミルティーと仲睦まじげに会話をするレーヴを見掛けた。婚約者は自分なのだからとレーヴにミルティーと話さないでと訴えることだって……そこまで考えて、シェリは首を軽く振った。
「我儘で嫉妬深い女なんて……嫌われる行動をする選択肢しかないじゃない」
何をレーヴにしても嫌われる要素にしかならない。
とことん、自分の運の無さに嘆きたい。
弱気になるなとシェリは飲み物を一気に飲み干した。炭酸が喉を通って痛く感じたが爽快感があり、うじうじと悩むシェリを前へ押し出した。
「これからは新しい婚約者の方と良好な関係をどう築けるかだけ考えましょう」
レーヴの欠席は好機だと思わなくては。
よし、と決意を新たにしたシェリは会場へ戻ろうと腰を上げた。
「オーンジュ嬢?」
「!」
さっきまでシェリが探していた相手ヴェルデがひょっこりと姿を見せた。
「ヴェルデ様」
「良かった。会場にいらっしゃらなかったので探していました」
「ヴェルデ様こそ、会場にいらっしゃらなかったではありませんか」
「すみません。レーヴ殿下の不在がどうしても気になってしまい、王太子殿下に頼んで会いに行っていました」
「そうだったのですか」
レーヴの友人ならと王太子も快くレーヴに会わせてくれた。
「殿下には会えたのですか?」
「少しだけ」
「お体の調子が悪いとか……?」
「いえ。全く、元気そうでした」
ならば会場に姿を見せないのは何故?
「……オーンジュ嬢。その、約束していた通り僕と一曲踊っていただけますか?」
「ええ。勿論ですわ」
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会場に戻り、中心に行ってヴェルデとダンスを踊った。
「……ヴェルデ……様……」
ホールの真ん中で踊るシェリとヴェルデを悲痛な面持ちで見つめるミルティーだった。
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