行動あるのみです!

文字の大きさ
上 下
23 / 81

王家主催のパーティー6

しおりを挟む
 

     キョロキョロと顔を動かすのは都会が珍しい田舎者がする行い。最低限の動きで辺りに視線を這わせ、ヴェルデを探す。

 
「あ……あのっ」

 
 シェリに声を掛けたのはミルティーだった。
 真っ白なドレスに身を包み、瞳と同じ金色の花を模した髪飾りは非常に似合っていた。

 
「オーンジュ様っ……こ、こんばんは……あ」
「ゴホンッ……夜会の場でこんばんは、なんて言うのはあなたくらいよミルティーさん」

 
 幸い周囲に人は少なかったので、良くはないがこれ以上は何も言わないでおこう。

 
「どうしたのかしら。顔色が優れないわよ」
「あ……あの、王子殿下はどうなさったのです?」

 
 シェリも聞きたい。
 今夜は本来、レーヴとミルティーの婚約発表がある筈だったのに。肝心のレーヴが出席していないのだ。ミルティーの様子から、彼女もレーヴ欠席の理由を知らないとなると……
 チラリと上座へ目をやるもすぐにミルティーに戻った。

 
「さあ……わたしは何も」
「そ、そうですか……」
「……」
「……」

 
 他の場所へ行きたいのに、動く気配を見せるとミルティーが縋る様にシェリを見つめてくる。ヴェルデを探しに行きたかったのに、これでは探し辛い。
 無言の空気が2人を包んでいるとミルティーが突然前に動いた。
 正確には、動かされた。
 思考が違う方向へ行っていたシェリが反応するのが遅れ救助は間に合わず、ミルティーは前方へ転けてしまった。

 
「あらごめんなさい。辛気臭い髪をした方がいるからつい邪魔で」

 
 よりにもよって面倒な相手が来たと内心舌を打ちたくなった。
 アデリッサ・ナイジェル公爵令嬢。

 ふんわりとしたピンクの髪、大きな栗色の瞳を持つ小柄で愛くるしい見た目の彼女だが性格はシェリも苦手意識を抱く程最悪だ。
 特に、ナイジェル公爵とオーンジュ公爵の仲の悪さは有名だ。
 それが子供にも伝染し、会う度に険悪な雰囲気を漂わせた。

 自分に嫌がらせをするのは構わないが無関係なミルティーに手を出すとは最低だ。アデリッサがミルティーに快くない感情を抱いているのは知っている。
 彼女もまた、レーヴに好意を抱く女性だ。
 レーヴとミルティーの仲の良さをアデリッサが知らない筈がない。

 ミルティーを起こしたシェリは挑発的な笑みを見せた。

 
「あらアデリッサ様。視力の老化現象が始まっているのでは? ミルティー様の髪が辛気臭い? メルヘンな髪をしたアデリッサ様よりマシでしてよ?」
「っ!」

 
 本人が気にしている髪色を指摘してやれば、愛らしい容姿からは駆け離れた恐ろしい相貌で睨まれるもシェリが堪える様子はない。
 立たせてもらったミルティーはおろおろとシェリとアデリッサを見やる。

しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい

綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。 そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。 気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――? そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。 「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」   私が夫を愛するこの気持ちは偽り? それとも……。 *全17話で完結予定。

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

親切なミザリー

みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。 ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。 ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。 こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。 ‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。 ※不定期更新です。

あの子を好きな旦那様

はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」  目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。 ※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

処理中です...