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レーヴの謎行動3

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 第2王子とオーンジュ公爵令嬢は不仲だと有名な話だった。話し掛けても無視をされ、会いに行っても無視をされ、兎に角無視をされ続けてもめげずにレーヴを慕い続けたシェリの鋼の精神に敬意を評したい。
 一方で、態度以前に全身からシェリが嫌いオーラを発していたレーヴの心情が1番の謎だ。
 クロレンス王立学院を卒業したら、レーヴは婿養子になりオーンジュ公爵家を継ぐことと決まっていた。オーンジュ公爵家は王家に次ぐ権力を持った家。

 王子が婿入りする家としては最上級といっていい。

 シェリはレーヴにこそ嫌われているが他からは好印象を抱かれていた。

 本人は確実に知らない話である。
 シェリが自身を評価するなら、冷たく我儘な傲慢令嬢、とするだろう。
 学院内で何度か、ヴェルデが好意を抱くミルティーやマナーに不馴れな子女を見掛けるとキツく注意をしていたのを目撃した。
 内容を聞いていると言い方はキツい上に、元々のシェリの人間離れした美貌のせいで余計恐怖心が生まれそうだった。

 ただ、言っている事は正しく相手に対する気遣いも忘れていない。
 言い方と見た目のせいで冷たく恐ろしい人認定されるのだろう。これでシェリを苦手に思う人もいれば、ミルティーのようにもっと上達してシェリに誉めてもらいたい人もいる。

 他にも、男爵家の娘が侯爵家の娘や取り巻きに虐められている時は注意をする時以上の冷徹さと言葉の鋭さに両者揃って震え上がっていた。学院は平等を掲げている。能力が高ければ、平民だって入学出来るし、下位であろうと女性であろうと文官になって出世出来る可能性だってある。
 家柄しか取り柄のない者に将来有望な人材の芽を潰されるのは国にとっても痛い。

 ヴェルデの抱くシェリの印象は、見た目と言葉のキツさのせいで遠くに見てしまいがちだが実際はとても話しやすく、話題や知識も豊富で長くいても飽きない魅力を持った女性、といったところ。

 レーヴがシェリを嫌う理由をヴェルデは聞かされていない。毎日毎日、会いに来てはレーヴに無視をされ悲しげに悔しげに戻って行く姿を何度も見ていたので同情の念を抱いていた。
 1度、理由を聞いても教えてもらえなかった。


『殿下が思うより、オーンジュ嬢は王子妃に相応しい方かと思いますが』
『……ヴェルデ。お前には関係がない』
『……』


 頬杖をついてシェリの寝顔を眺めてもレーヴの心を読むのは無理である。
 まず、本人がいないので。
 婚約が解消されてからは、自分からシェリに会いに行っているらしいが面白い事に1度も会えていないと聞く。彼女が逃げているのではない、とヴェルデは予想する。


「毎日殿下の事を思っていたオーンジュ嬢なら、多分だが殿下が今何処にいるかを言い当てそうだが……殿下になると全く違う場所へ行きそうだな」


 これが2人の思いの差、なのか。
 相手がシェリからミルティーになる。【聖女】の生まれ変わりなら、公爵令嬢である彼女と婚約解消となっても仕方ないと周囲は認識する。【聖女】は王家が保護をしないとならない貴重な人間。義務ではないが【聖女】と結婚した王子は少なくない。

 瞼を閉じたヴェルデは少し思案する。
 王家主催のパーティーが終わった日からは、父に従い見合いを受ける。

 ……相手の選別に口を出して良いのなら――




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