行動あるのみです!

文字の大きさ
上 下
17 / 81

レーヴの謎行動3

しおりを挟む
 

 第2王子とオーンジュ公爵令嬢は不仲だと有名な話だった。話し掛けても無視をされ、会いに行っても無視をされ、兎に角無視をされ続けてもめげずにレーヴを慕い続けたシェリの鋼の精神に敬意を評したい。
 一方で、態度以前に全身からシェリが嫌いオーラを発していたレーヴの心情が1番の謎だ。
 クロレンス王立学院を卒業したら、レーヴは婿養子になりオーンジュ公爵家を継ぐことと決まっていた。オーンジュ公爵家は王家に次ぐ権力を持った家。

 王子が婿入りする家としては最上級といっていい。

 シェリはレーヴにこそ嫌われているが他からは好印象を抱かれていた。

 本人は確実に知らない話である。
 シェリが自身を評価するなら、冷たく我儘な傲慢令嬢、とするだろう。
 学院内で何度か、ヴェルデが好意を抱くミルティーやマナーに不馴れな子女を見掛けるとキツく注意をしていたのを目撃した。
 内容を聞いていると言い方はキツい上に、元々のシェリの人間離れした美貌のせいで余計恐怖心が生まれそうだった。

 ただ、言っている事は正しく相手に対する気遣いも忘れていない。
 言い方と見た目のせいで冷たく恐ろしい人認定されるのだろう。これでシェリを苦手に思う人もいれば、ミルティーのようにもっと上達してシェリに誉めてもらいたい人もいる。

 他にも、男爵家の娘が侯爵家の娘や取り巻きに虐められている時は注意をする時以上の冷徹さと言葉の鋭さに両者揃って震え上がっていた。学院は平等を掲げている。能力が高ければ、平民だって入学出来るし、下位であろうと女性であろうと文官になって出世出来る可能性だってある。
 家柄しか取り柄のない者に将来有望な人材の芽を潰されるのは国にとっても痛い。

 ヴェルデの抱くシェリの印象は、見た目と言葉のキツさのせいで遠くに見てしまいがちだが実際はとても話しやすく、話題や知識も豊富で長くいても飽きない魅力を持った女性、といったところ。

 レーヴがシェリを嫌う理由をヴェルデは聞かされていない。毎日毎日、会いに来てはレーヴに無視をされ悲しげに悔しげに戻って行く姿を何度も見ていたので同情の念を抱いていた。
 1度、理由を聞いても教えてもらえなかった。


『殿下が思うより、オーンジュ嬢は王子妃に相応しい方かと思いますが』
『……ヴェルデ。お前には関係がない』
『……』


 頬杖をついてシェリの寝顔を眺めてもレーヴの心を読むのは無理である。
 まず、本人がいないので。
 婚約が解消されてからは、自分からシェリに会いに行っているらしいが面白い事に1度も会えていないと聞く。彼女が逃げているのではない、とヴェルデは予想する。


「毎日殿下の事を思っていたオーンジュ嬢なら、多分だが殿下が今何処にいるかを言い当てそうだが……殿下になると全く違う場所へ行きそうだな」


 これが2人の思いの差、なのか。
 相手がシェリからミルティーになる。【聖女】の生まれ変わりなら、公爵令嬢である彼女と婚約解消となっても仕方ないと周囲は認識する。【聖女】は王家が保護をしないとならない貴重な人間。義務ではないが【聖女】と結婚した王子は少なくない。

 瞼を閉じたヴェルデは少し思案する。
 王家主催のパーティーが終わった日からは、父に従い見合いを受ける。

 ……相手の選別に口を出して良いのなら――




しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

竜王の息子のお世話係なのですが、気付いたら正妻候補になっていました

七鳳
恋愛
竜王が治める王国で、落ちこぼれのエルフである主人公は、次代の竜王となる王子の乳母として仕えることになる。わがままで甘えん坊な彼に振り回されながらも、成長を見守る日々。しかし、王族の結婚制度が明かされるにつれ、彼女の立場は次第に変化していく。  「お前は俺のものだろ?」  次第に強まる独占欲、そして彼の真意に気づいたとき、主人公の運命は大きく動き出す。異種族の壁を超えたロマンスが紡ぐ、ほのぼのファンタジー! ※恋愛系、女主人公で書くのが初めてです。変な表現などがあったらコメント、感想で教えてください。 ※全60話程度で完結の予定です。 ※いいね&お気に入り登録励みになります!

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい

綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。 そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。 気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――? そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。 「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」   私が夫を愛するこの気持ちは偽り? それとも……。 *全17話で完結予定。

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

処理中です...