行動あるのみです!

文字の大きさ
上 下
10 / 81

パーティーも近い2

しおりを挟む
 
 パーティー、という単語がヒントに思えるが。


「ミルティー様のドレスが用意出来ていないから……な訳ないわね。確かお父様が【聖女】お披露目の意味を兼ねているから、ミルティー様のドレスは王家側から用意されるって言ってたわね」


 装飾品の問題? なら、ラビラント伯爵家が用意していない訳がないがドレスだけ用意する王家じゃない。

 エスコートの問題? 正式発表があるまでは内密なのでエスコート出来ないことを……と考えるが2日前になって発覚する問題じゃない。

 残るは何か……あ、とシェリは大事な問題を思い出す。


「わたしのエスコート……?」


 デビュタントを終え、定期的に参加するパーティーでは必ずレーヴが迎えに来てシェリをエスコートしてくれた。

 嫌われていると自覚していながらも、婚約者だから嫌々でもエスコートをしてくれるレーヴが大好きだった。

 レーヴは律儀な男性だ。嫌っている相手に対しても、定期訪問にも遅れず休まず、贈り物や誕生日プレゼントも欠かさない。……会話だけは一切無くても。

 常に不機嫌な顔を見せられ続けても、そういった場面があるから諦めれらなかった。

 シェリは過去の思い出を払うように頭を振った。


「もう殿下はミルティー様の婚約者よ。わたしじゃない。考えを元に戻さないと」


 今大事なのは、レーヴが何に必死になっているか、だ。

 婚約解消が正式発表されるまでは婚約者の役目を果たす為にシェリを探してエスコートのことで話があるのかもしれない。


「……自分に都合の良いように考え過ぎね」


 止めよう、止めよう。

 シェリは図書室へ再度足を進めた。


 室内に入ると司書が受付にいて、利用している生徒はちらほらといる。

 シェリはカウンターまで行き、目的の本が返却されているか尋ねた。

 まだ返却されておらず、期限は2日後になっていると教えられた。来週に期待しようと些かしょんぼりと落ち込みつつ、時間潰しとして室内を歩くことにした。

 最新の書物から古い物まで、幅広いジャンルを扱うクロレンス王立学院の図書室の広さは王城内になる書庫室と負けていない。

 広すぎて本を探すだけで時間がかかる上、稀に迷子になることも。

 壁に案内図が貼られている為、大抵はそれを見て本を探す。

 ジャンルもなく、かといって特定の本は未だ返却されておらず、人の少なさを言い訳にシェリは本棚に並ぶタイトルを流し読みしていった。

 レーヴはちゃんとミルティーを見つけられただろうか。

 ズキリと痛む胸を手で抑え、力強く握り締めた。


「パーティーまで後2日か……。お父様にエスコートをお願いしないと」


 一頻り室内を歩いたシェリは何も借りず、図書室を出て外に出た。

 待たせていた馬車に乗り込み帰路につくのだった。

しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

親切なミザリー

みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。 ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。 ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。 こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。 ‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。 ※不定期更新です。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい

綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。 そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。 気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――? そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。 「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」   私が夫を愛するこの気持ちは偽り? それとも……。 *全17話で完結予定。

7回目の婚約破棄を成し遂げたい悪女殿下は、天才公爵令息に溺愛されるとは思わない

結田龍
恋愛
「君との婚約を破棄する!」と六人目の婚約者に言われた瞬間、クリスティーナは婚約破棄の成就に思わず笑みが零れそうになった。 ヴィクトール帝国の皇女クリスティーナは、皇太子派の大きな秘密である自身の記憶喪失を隠すために、これまで国外の王族と婚約してきたが、六回婚約して六回婚約破棄をしてきた。 悪女の評判が立っていたが、戦空艇団の第三師団師団長の肩書のある彼女は生涯結婚する気はない。 それなのに兄であり皇太子のレオンハルトによって、七回目の婚約を帝国の公爵令息と結ばされてしまう。 公爵令息は世界で初めて戦空艇を開発した天才機械士シキ・ザートツェントル。けれど彼は腹黒で厄介で、さらには第三師団の副官に着任してきた。 結婚する気がないクリスティーナは七回目の婚約破棄を目指すのだが、なぜか甘い態度で接してくる上、どうやら過去の記憶にも関わっているようで……。 毎日更新、ハッピーエンドです。完結まで執筆済み。 恋愛小説大賞にエントリーしました。

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

あの子を好きな旦那様

はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」  目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。 ※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

処理中です...