行動あるのみです!

文字の大きさ
上 下
4 / 81

食堂1

しおりを挟む
 

 正式な発表は来週開催される王家主催のパーティー。

 既にラビラント伯爵家には通達がいっているとも教えられた。

 正式発表がされれば、レーヴは堂々と愛しのミルティーと愛し合える。

 張り裂けそうな痛みを訴える心とは裏腹に、達成感のような気持ちも生まれていた。

 初めてレーヴが喜ぶことが出来たからなのかもしれない。

 婚約解消の条件が絶対にシェリから言い出したこととレーヴに言わないこと。

 話す機会が1度もないのでとても簡単に守れる条件だ。新たな婿養子については父フィエルテから何も言われていない。

 レーヴとミルティーの婚約が正式発表された後で聞いてみよう。

 シェリは今クロレンス王立学院の図書室に来ていた。何時もなら、レーヴのいそうな場所を探しては彼を遠くから見つめていた。

 よくよく考えるとストーカーだ。

 我が儘な相手と婚約させられ、更にストーカー紛いな行為までされて好きになってくれる筈がない。今になって自分がどれだけレーヴに相応しくない相手だったかを思い知らされ、泣きたい気持ちになった。

 例え人が少なかろうと決して涙は見せない。公爵令嬢としてのプライドがそうさせる。


「なんの本を読もうかしら」


 前に読んだ推理小説の続きにしようと思ったが運悪く続刊は貸し出し済だった。返却される間に他のを読もう。

 惹かれそうなタイトルを探していると大きな音を立てて扉が開かれた。

 静寂が包む図書室に余計な雑音を入れるのは誰だと眉を寄せ、本棚から覗き込むように犯人を確認して声が出そうになった。

 青みがかった銀髪は若干乱れ、王族にしか受け継がれない宝石眼の青は焦燥に染まった色をしていた。

 忙しく周囲を見回す彼――レーヴは大股で室内に入った。

 誰を探しているのか……等と考えなくても分かる。ミルティーだ。

 それもあんなにも焦っているのを見ると彼女に何かあったのか。だが、シェリが行って訳を聞いたところで余計なお世話というもの。

 焦っている時に嫌っている相手が来たら彼は更に機嫌を悪くする。

 レーヴがシェリのいるフロアとは反対方向に向かったのを見、見つからないよう違う扉から図書室を出た。

 本探しは何時でも出来る。今度行くとき、どんな本を読みたいか決めてから行こう。

 10日前と同じく、帰りは徒歩にすると御者に伝えたので放課後は好きに使える。

 シェリは食堂へ足を運ぶことにした。貴族だけではなく、条件を満たせば平民も入学出来るクロレンス王立学院の食堂は、貴族用と平民用でメニューが分かれていた。

 前から平民用のメニューを食べてみたい好奇心があった。

 昼は生徒の人数が多くて気が引けるが放課後利用している人はあまりいないと聞く。

しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

殿下、私は困ります!!

IchikoMiyagi
恋愛
 公爵令嬢ルルーシア=ジュラルタは、魔法学校で第四皇子の断罪劇の声を聞き、恋愛小説好きが高じてその場へと近づいた。  すると何故だか知り合いでもない皇子から、ずっと想っていたと求婚されて? 「ふふふ、見つけたよルル」「ひゃぁっ!!」  ルルは次期当主な上に影(諜報員)見習いで想いに応えられないのに、彼に惹かれていって。  皇子は彼女への愛をだだ漏らし続ける中で、求婚するわけにはいかない秘密を知らされる。  そんな二人の攻防は、やがて皇国に忍び寄る策略までも雪だるま式に巻き込んでいき――?  だだ漏れた愛が、何かで報われ、何をか救うかもしれないストーリー。  なろうにも投稿しています。

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

親切なミザリー

みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。 ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。 ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。 こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。 ‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。 ※不定期更新です。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい

綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。 そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。 気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――? そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。 「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」   私が夫を愛するこの気持ちは偽り? それとも……。 *全17話で完結予定。

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

処理中です...