3 / 81
決心3
しおりを挟むフィエルテも国王夫妻も王太子夫妻も知っている。
何度かレーヴに苦言がいくも、その場は渋々謝罪するが結局は同じだった。国王夫妻や王太子夫妻が頭を抱えていた。
「わたしとの婚約が解消されても【聖女】の生まれ変わりであるミルティー様と婚約を結び直すことで、逆に王家が【聖女】を保護する理由としては正当化できます」
「例えそうだとしても、シェリ、お前の気持ちはどうなる?」
本当は声を大にして叫びたい。
嫌だと、レーヴを誰よりも好きなのは自分だと。
レーヴの気持ちと幸せを考えたら、シェリが出来るのはもうこれだけなのだ。
涙が出るのをグッと堪え、紫水晶の瞳を真っ直ぐ父へ向けた。
「優先度を考えれば、王族との婚姻が一番理想かと。わたしの気持ちなど、国と天秤に掛ければどちらに傾くかなど決まっています。……それに、レーヴ様は大層喜んでくれることかと。相思相愛と言われるお相手と婚約出来るのですから」
「……分かった。但し条件がある」
「条件?」
レーヴとの婚約が解消されれば、また、新たな婿養子を探さないとならない。相手の選定にシェリは口出しするなということなのだろうか。ならシェリは頷くだけ。反論するつもりはない。
「婚約解消と言い出したのは、決してシェリからだとレーヴ殿下に言わないこと。この一点のみ、守れるか?」
「?」
よく分からない条件だが、取り敢えずシェリは頷いた。
言うも言わないもレーヴとは、学院に入学して半年経つが1度も会話をしたことがない。
簡単に守れる条件で良かったと安堵した。
父とはそれから他愛ない話をして部屋を出た。足取りは決して軽くない。気持ちは幾らかすっきりとしている。
「レーヴ様に今まで迷惑をかけてきた償いと思えばいいのよ」
嫌っている婚約者よりも、王国に平和と繁栄をもたらす【聖女】であり、更に相思相愛と名高いミルティーなら恨まない自信がある。
これがもし、他の誰かだったらシェリは心の底から嫉妬し、オーンジュ公爵家に相応しくない令嬢となってしまっていただろう。
婚約破棄については、後日フィエルテと国王が話し合って決める。
気掛かりの、婚約破棄の話をシェリが提案したとレーヴに言わないこと。
予想だがプライドの高いレーヴが相手にしていない婚約者から婚約破棄を申し込まれたと聞けば絶対に怒るに違いない。そもそも、婚約を申し込んだのはオーンジュ公爵家なのに。
王国の為に第2王子と聖女の婚約が結ばれる。
「早くならないかしら」
そうしたら、シェリはレーヴを遠くから見守り続けられる。
私室に戻ったシェリは侍女を下がらせ、ベッドに寝転がった。
――約10日後、レーヴとシェリの婚約は破棄され、新たにミルティーとレーヴの婚約が結ばれたとフィエルテに告げられた。
58
お気に入りに追加
986
あなたにおすすめの小説

嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

竜王の息子のお世話係なのですが、気付いたら正妻候補になっていました
七鳳
恋愛
竜王が治める王国で、落ちこぼれのエルフである主人公は、次代の竜王となる王子の乳母として仕えることになる。わがままで甘えん坊な彼に振り回されながらも、成長を見守る日々。しかし、王族の結婚制度が明かされるにつれ、彼女の立場は次第に変化していく。
「お前は俺のものだろ?」
次第に強まる独占欲、そして彼の真意に気づいたとき、主人公の運命は大きく動き出す。異種族の壁を超えたロマンスが紡ぐ、ほのぼのファンタジー!
※恋愛系、女主人公で書くのが初めてです。変な表現などがあったらコメント、感想で教えてください。
※全60話程度で完結の予定です。
※いいね&お気に入り登録励みになります!

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。
スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」
伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。
そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。
──あの、王子様……何故睨むんですか?
人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ!
◇◆◇
無断転載・転用禁止。
Do not repost.

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。

【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい
綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。
そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。
気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――?
そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。
「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」
私が夫を愛するこの気持ちは偽り?
それとも……。
*全17話で完結予定。
【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った
冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。
「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。
※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる