砂糖漬けの日々~元侯爵令嬢は第二王子に溺愛されてます~

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5 愛でるのは毎日のこと

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几帳の奥に帳台があった。

帳を押し開けると、二畳ばかりのその場所へ私と貴人は倒れ伏した。

畳の敷いてある寝所である。


帳の内には焚きしめた香の匂いがこもっていた。

灯明の火が風に揺れ影法師が大きくなったり小さくなったりする。

彼の人の肌えには、薄っすらと汗が滲む。

しっとりと汗ばんで肌えからは甘酸っぱい匂いがたちのぼる。

私は彼の人をかき口説いた。

「お会いしたばかりの貴方様にこのような無礼をお許しください。私めは貴方様がどのようなお方かも存じ上げぬ下郎にすぎませぬ。しかし今ははっきりわかるのです。私が求めていたのは貴方だったのだと。お慕い申し上げております。どうぞ私の思いをとげさせてくださりませ」

しかし貴人は諾と言わない。

「貴方様がおのこということは私は一向気にしておらぬのです。私はあなたのお美しさに魅せられております。どうぞ今一たび貴方様の甘美なる蜜を吸わせてくださいませ」

私は伏して拝んだ。

「良いだろう。しかしここに長居してはいけない。貴殿にはこの後訪ねてもらいたい宅がある」

貴人はそう言って枕もとから一通の文をとり私に手渡した。

「ありがたき幸せ。必ずやお届け申し上げます」

長居するなと言われたのは哀しい限りだった。だがこのように美しく儚げな貴人なのだ。己が独り占めできるような相手ではない。

「貴方様のお相手ができることが嬉しゅうございます」

私はたまらなくなり彼の人の衣に手をかけた。
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