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ビアンコではなく、ベルティーナが➇
しおりを挟む最初アニエスと父の仲の良さを疑問に持ち、調べ始めアニエスの持つ魅了を突き止めたのはベルティーナで、ベルティーナが皆に魅了の存在を報せ更に解いたせいで苦しい思いをしている。そうビアンコとクラリッサに叫ばれたベルティーナは言い返せなかった。
自分が魅了の存在を知り、これ以上アニエスに好き勝手されたくない気持ちで暴露した。結果、両親は精神崩壊を起こした。父は双子の姉が光になって助けているお陰で予想以上の速さで回復しているが母は依然精神崩壊を起こしたまま。
名家と呼ばれたモルディオ家は当主夫妻の重罪により既に処刑済みで没落済。
魅了の力を知ってもあのままにしておけば誰も不幸にはならなかった。
「ベルティーナ以外は幸せなままだったね」
アルジェントが微笑を浮かべたまま、淡々とビアンコとクラリッサが欲しがる言葉をくれた。顔色を変えた二人は味方を得たとばかりに更にベルティーナを詰るがアルジェントの次の言葉で止めた。
「まあ、君達が公爵家を継いでいたらどの道没落していたんじゃない?」
「なんだと!?」
「アルジェント君酷い!」
「何故? 人の不幸も人の痛みも理解しない、見ようとしない君達に領民を幸せになんてできるの?」
「人の不幸を餌とするお前みたいな悪魔に言われたくない!」
それはそうだ、とアルジェントはわらう。
「強ち間違いではない。俺の場合は人間の不幸を餌にする弱い悪魔じゃないから、どうでもいいけど」
「王子様だものね、貴方」
「へ?」とはビアンコとクラリッサ。
イナンナがアルジェントを悪魔王子と呼ぶのは文字通りの意味だった。悪魔の世界の王子様。但し、三番目で自分より上二人の兄の方が強いから大した意味はないと言う。
「アルジェント。このお馬鹿二人に悪夢を見せてあげられる?」
「出来るよ。どんなのにする?」
「お父様が受けた仕打ちを体験させてあげて。そうすれば、魅了を受ける苦痛を少しは理解するでしょう」
「いいよ」
怯える二人へ一度見ると忘れられない艶笑を見せ、魔法を掛けられたのを見届けベルティーナは使用人達を呼び二人を領地行の馬車に詰め込んだ。
クラリッサはともかく、ビアンコの荷物を纏めてと侍女に指示し、部屋に戻った父に二人を馬車に詰め込んだとだけ報告した。
オプションに関しては言わない。どうしようもない二人でも父にしたら息子と姪。言わない方がいい。
――と、オプションに関してだけ除きリエトにビアンコとクラリッサの二人を領地へ飛ばした訳を話した。聞き終えたリエトは苦い顔をしており、瞼を伏せた。
「殿下からすれば、元恋人と友人を一度に失った訳ですが」
「いや……君や公爵の判断は正しい。ビアンコのベルティーナと仲良くしたいとは何だったのだ……?」
「私に聞かれても……」
ただのパフォーマンス、と思おう。
「君がアンナローロ家を継ぐのか」
「ええ。私が家を継ぐなんて考えもしませんでした。この選択が正解にしろ間違いにしろ、役目は最後まで果たします」
「そうか……」
リエトとの婚約破棄はモルディオ夫妻の審議が終わった後にされ、無事認められた。次の王太子妃候補を見つけるのは大変だろうがベルティーナ以外には愛想の良いリエトなら相手を見つけられる。
魅了は人の性格や周囲の印象を変えてしまう。実の父親にも悪し様に言われれば周囲の声よりも真実味は強くなる。リエトの拒否反応も今になればまま理解は示せる。
父と同じで受けた仕打ちは忘れない、許すつもりはない。
でも、今の父と同じでゼロから関係を築くのも悪くないと思う自分がいる。
「私も覚悟を決めた」
「何をです」
「今度開かれる王宮舞踏会で公表する。そういえば、ベルティーナや公爵は参加出来るのか?」
「ありましたわね……」
忙しくてすっかりと忘れていた。
王国に住む貴族なら基本参加しないとならない。
「私はともかく、お父様は体調次第でしょう」
「そうか」
「殿下が何をされるか知りませんが後悔はないのですか?」
「ああ。この一月、ずっと考えて出した答えだ」
「そうですか」
王太子である彼が言うのなら、それほどの決意なのだ。
出されたお茶を飲み干した後もしばらくリエトと会話をしてベルティーナは帰った。
茶の席に残ったリエトは――
「ベルティーナの側にいられるなら……」
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