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クソガキが仲間に加わった!

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「いやーありがとねお二人さん! おかげで助かったよ」
「……」
 隠れて気絶していたときの気概のなさはどこへ行ったのか、赤毛の少年、もといAlfred Foxは、へらへら笑いながらWilliamとDanielの後ろをついてきていた。
「ねえ、本当にこいつ連れて行く必要ある?」
「仕方ないだろ、見つけちまったんだから。置いていって死なれても気分が悪い」
「何コソコソ話してんの~?」
 並んで話していたWilliamとDanielの間に、Alfredは強引に割り込んだ。思わず顔を顰めるWilliamを見て、Alfredは人の悪い笑みを浮かべる。
「うわっ、ひどいなぁ生徒会長さ~ん! いつもの笑顔はどうしたの? ねぇ?」
(このクソガキ……)
 そう、Alfredは学校一のクソガキだった。人に嫌われて喜ぶというめんどくさい性格で、特にWilliamのような、普段品行方正ぶっている人間に絡むのが大好きなのだ。
 WilliamはDanielに助けを求める視線を投げたが、すまないと言うように首をすくめて返された。基本的に何者も恐れないDanielだが、終始ふざけた態度のAlfredとは決定的に相性が悪いのだ。わかっていたとは言え見捨てられたことに悲しくなりながら、WilliamははしゃぐAlfredへの怒りを押さえつける。
 幸か不幸かAlfredを無視するために早足で歩いていたので、あっという間に玄関の近くまで三人はやってきていた。だが近づけば近づくほど、三人の元に何か凄まじい物音が聞こえてきた。そしてそれが人とゾンビが戦っている音だと気づくまでに、たいした時間は必要なかった。
「え……、ちょ、これ、やばいんじゃ」
「ウィル。フレッドのこと見といてくれ」
「は、おい、ダン!」
 Danielは箒を構えると、止める間もなく玄関に向かって駆けだした。Williamも慌てて、(嫌でしょうがなかったが)Alfredの腕を引きながら玄関に向かう。
 その先にあったのはまさしく地獄絵図だった。地面にはぐしゃぐしゃになったゾンビが大量に倒れており、それでもなお、ゆうに十体を超えるゾンビが壁を作っている。どうやらその壁の向こうで誰か戦っているらしい。どうにか壁を崩そうと、Danielもゾンビに殴りかかっていた。
「い、いや無理だろこれ、絶対死ぬって」
「黙ってろ!」
 Alfredを引きずってWilliamは壁の陰に隠れた。恐怖のあまり喋りつづけようとするAlfredの口を手で無理やり塞いで、自身もじっと息をひそめる。どれだけ情けなく思っても、Williamたちが足手まといなのは事実なのだ。自分たちにできることはゾンビを刺激しないことだけだと、彼は歯を食いしばって恐怖に耐えた。
 五分ほど経ったころ、戦いの音が聞こえなくなった。Alfredから手を離し、Williamはそっと玄関の様子を伺った。二つだけ立っている人影が見える。暗くてしばらく見つめないと分からなかったが、どうやらゾンビではないようだった。
「だ、ダン……?」
 恐る恐る声をかけると、人影がどちらもWilliamの方を向いた。
「もうこっち来て大丈夫だぜ、ウィル」
「えっ、ウィリアム先輩⁉」
 人影から聞こえた親友の声に安堵するとともに、もう一つの影の声に彼はひどく驚いた。
「リッキー⁉」
 それは紛れもなく生徒自治会の後輩の声だった。タッと壁の陰から出て二人の元に走り出す。が、ほんの少し進んだだけで、もう駆け寄る気にはなれなくなった。親友と後輩は二人ともゾンビの血肉でドロドロ。そもそも、辺り一面倒れたゾンビだらけで足の踏み場もなかった。
「……すごいね」
「だよな。俺もびっくりした。リッキーがこんなに戦えるって」
「えへへ。ボク、やるときはやるんです!」
 血まみれの二人はWilliamの言葉をいいように捉えて自慢げな顔になっている。よく見ればリッキーことPatrickは曲がったパイプ椅子を抱えている。それでゾンビと戦っていたのだろう。
「……うん、そうだね」
 命を賭けて戦ってくれた二人にそれ以上なにも言えず、Williamは曖昧に微笑んだ。もしも明るい場所だったなら、その笑顔が引きつっていることはすぐにバレただろうが。
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