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ヘタレ生徒会長と友人(剛の者) 2
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「ねえダン、なんでこんなことになったか覚えてる?」
「全く。お前は?」
「それが、俺もなんだ。気づいたら夜になってて、帰ろうと思ったらゾンビに襲われて……」
「で、逃げた先が掃除道具入れの上か」
「そこしか思いつかなかったんだよ」
恐怖を紛らわせるためか、もともと軽口の多いWilliamはいつも以上にDanielに話しかけていた。廊下は月明かりしか光源が無く、ほんの少し足を止めればはぐれてしまうような状態。それなのに迷いなく突き進む友人の手を、Williamは冷や汗で滑りそうになりながら握りつづけていた。
「……お゛ぁ゛ぁ゛あ゛ああ!!」
「ひぃっ⁉」
「チッ」
二人が下ろうとした階段の踊り場。そこにゾンビたちのたまり場ができていた。腐臭を漂わすそれらは明らかに二人をにらんでいる。
「相手は……三体か。ウィル、廊下を見張っててくれ。背中は壁に付けとけよ」
「わ、わかった……え、ダン⁈」
Williamが返事を返すやいなやDanielは踊り場に向かって飛んだ。十段以上ある階段を、全て抜かして飛び降りたのだ。
彼は着地と同時にゾンビを一体踏み潰した。間髪入れず、横にいた一体の頭を箒で打ち落とす。仲間がやられてようやく状況が飲み込めたらしい最後の一体も、Danielを襲う前に箒の柄で壁に突き飛ばされた。
Danielがゾンビたちの頭を念入りに踏み壊す様子を、Williamは呆然と見つめていた。Danielに手招きされてハッと我に返ると、彼は手すりにすがりながら踊り場へ向かった。辺りにはゾンビの肉片が飛び散っており、靴越しにぐにゃりとした感触が伝わってくる。
「う……」
「気にしてたらキリないぞ。ほら」
怖じ気づいているWilliamにDanielは手を差し出したが、その手は黒い血で汚れていてとても触りたいと思える状態ではなかった。Daniel自身も苦い顔になり、ズボンでガシガシと血を拭う。再び差し出された手はあまり綺麗になっているとは言いがたかったが、Williamはもう迷わずにその手を取った。
「ふふっ」
「どうした?」
「いや、まるで別人だなあと思って」
「……?」
「ところでさ、ダンってなんか武術やってたんだっけ?」
「昔“イアイ”を習ってた。でももう十年近く前だな」
「そうなんだ」
「ああ。それがどうかしたか?」
「ううん、何でもないよ」
「そうか」
(もし無事に生き残れたら、俺も“イアイ”やろう)
Williamがあてのない決意を固める横でDanielが首を傾げつつ、二人は階段を下っていった。
「全く。お前は?」
「それが、俺もなんだ。気づいたら夜になってて、帰ろうと思ったらゾンビに襲われて……」
「で、逃げた先が掃除道具入れの上か」
「そこしか思いつかなかったんだよ」
恐怖を紛らわせるためか、もともと軽口の多いWilliamはいつも以上にDanielに話しかけていた。廊下は月明かりしか光源が無く、ほんの少し足を止めればはぐれてしまうような状態。それなのに迷いなく突き進む友人の手を、Williamは冷や汗で滑りそうになりながら握りつづけていた。
「……お゛ぁ゛ぁ゛あ゛ああ!!」
「ひぃっ⁉」
「チッ」
二人が下ろうとした階段の踊り場。そこにゾンビたちのたまり場ができていた。腐臭を漂わすそれらは明らかに二人をにらんでいる。
「相手は……三体か。ウィル、廊下を見張っててくれ。背中は壁に付けとけよ」
「わ、わかった……え、ダン⁈」
Williamが返事を返すやいなやDanielは踊り場に向かって飛んだ。十段以上ある階段を、全て抜かして飛び降りたのだ。
彼は着地と同時にゾンビを一体踏み潰した。間髪入れず、横にいた一体の頭を箒で打ち落とす。仲間がやられてようやく状況が飲み込めたらしい最後の一体も、Danielを襲う前に箒の柄で壁に突き飛ばされた。
Danielがゾンビたちの頭を念入りに踏み壊す様子を、Williamは呆然と見つめていた。Danielに手招きされてハッと我に返ると、彼は手すりにすがりながら踊り場へ向かった。辺りにはゾンビの肉片が飛び散っており、靴越しにぐにゃりとした感触が伝わってくる。
「う……」
「気にしてたらキリないぞ。ほら」
怖じ気づいているWilliamにDanielは手を差し出したが、その手は黒い血で汚れていてとても触りたいと思える状態ではなかった。Daniel自身も苦い顔になり、ズボンでガシガシと血を拭う。再び差し出された手はあまり綺麗になっているとは言いがたかったが、Williamはもう迷わずにその手を取った。
「ふふっ」
「どうした?」
「いや、まるで別人だなあと思って」
「……?」
「ところでさ、ダンってなんか武術やってたんだっけ?」
「昔“イアイ”を習ってた。でももう十年近く前だな」
「そうなんだ」
「ああ。それがどうかしたか?」
「ううん、何でもないよ」
「そうか」
(もし無事に生き残れたら、俺も“イアイ”やろう)
Williamがあてのない決意を固める横でDanielが首を傾げつつ、二人は階段を下っていった。
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