蒼炎の魔法使い

山野

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第四十七話 地下に潜入してみまショウ。

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「フンフン♪    フンフ~ン♪」

澄んだ空の朝日に咲いた花の様な笑顔で鼻歌混じりに朝食の支度をするメイド服の女性。
テキパキと一人で難なくこなすその様は見ていて気持ちがいい物がある。

「…イレスティご機嫌。」

「かなり機嫌がいいわね」

「イレスおねーちゃん昨日のことバレてないと思ってるのかな?」

「流石に一週間篭ってた私でもあれは気付くよ」

「指輪を眺めては顔を赤くしての繰り返しじゃ!」

リビングでイレスティのご機嫌な姿を見た女性陣が何かを感じた様だ。

準備が一段落した所でみんなの元にイレスティが来た

「それではご主人様を起こして来ますね!」

「それはどっちの意味のご主人様なのかしら?」
フララがニヤニヤしながらイレスティをからかった

「ど、どっちもです!」
イレスティの顔が真っ赤になってしまう。

「…イレスティ。  ご飯持ってってあげて。  2人分」

「何故ですか?  それに2人分??」
イレスティが唇に指をあて首をかしげる

「お兄ちゃんは多分昼までここに来れないからだよー」

「はぁ…  わかりました、それでは行ってまりますね」

これから起こる方を経験済みの3人はニヤニヤして見送った。

レデリとルチルは顔を合わせて何だろう?という顔だ

◇    ◇    ◇    ◇

パンの芳醇な匂いに、ベーコンエッグのような香ばしい香り、良質な茶葉で入れた紅茶が織り成す香りのハーモニーが寝ているショウの目を覚まさせた。

「お目覚めになられましたか?」
膝に手を置いて屈んだ姿勢で、ベットの端から俺を覗き込んでいるメイド服の愛しい女性。

「おはよう」

「朝食をお持ちしました」
いつものように軽くウェーブかかった前髪を片方だけ垂らし、かっちり髪をあげたハキハキと話すメイドになっていた。

昨夜の豊満な胸がはっきりわかるネグリジェ姿を思い出したが、こっちもいい。

「…昨日の夜のイレスティもいいけど、やっぱりその姿も好きだなぁ」

俺が考案したメイド服をカチっと着こなし一つ一つの動きがメイドとして完璧な所作で、顔やしぐさもタイプだし理想のメイドさんだ。

「昨日の事は忘れてください!」
恥ずかしそうに両手で顔を覆ってしまった。

いちいち可愛いいので腕を掴んで狭いベットに引きずり込んで朝の口づけをしようと顔を近づけるが、昔の様に人差し指をちょんと置かれた

「不意打ちはだめですよ?」

「イレスティが朝の準備でそっとベットを出た時、一度起きたんだけどあれ結構寂しかったんだ」

「引き止めてくだされば良かったのに…」
昨日自分で付けた噛み跡を愛おしそうに指でなぞりながら言った。

「出る前のキスでちょっと満たされたから思い留まったよ」

「き、気づいてたんですか、恥ずかしいです」
彼女は恥ずかしそうに顔を赤らめ自分の唇に指を置く。 間接キスだね、なんか違うドキドキがある。 彼女は唇に指をちょこんと置くのが癖だ

「あのご主人様…    朝食が冷めてしまいます…」
吐息がかかる程の距離にいるので、一晩中間近で香った彼女の柑橘系の中にジャスミンのようなフローラルさを覗かせた匂いが、鼻腔を刺激して昨夜の彼女の感度のいい体を思い出させた。

「ひゃん! ダメ… ご主人様ぁ…」
昨夜散々味わった胸を鷲掴みにしてキス

「もう… ダメですよ? 折角ご主人様の為に作りましたのに…」
しようとしたのだがまた指で遮られた、逆に燃える

「ごめん、でも今はイレスティが欲しいよ」
嬉し恥ずかしそうに顔を赤らめて自分の唇に指を置く。

「…はい…   存分に…」
俺にベットで抱きかかえられ、艶やかでプルプルした唇に置いた繊細な指をそっとどかし唇を奪った。

出来立ての朝食が冷めていく中、2人はベットを温める。

「ご、ご主人様…    その…    着たままでよろしいのですか?」

昼頃まで濃厚に絡み合い、すっかり冷めた朝食を2人で仲良く食べた。

◇  ◇  ◇  ◇

「行ってらっしゃいませご主人様」

「主様の留守は任せるのじゃ!」

「じゃあ行ってくるね!」
イレスティとルチルに見送られ俺とルー、フララとレデリはオークションへと向かった。エメは俺の中だ

「兄さん、場所はストフが案内してくれるんだよね?」

「そうだよ、だから一旦スラムまで行くよ」

「「「了解」」」

暫く歩くとレデリの様子が少しおかしくなる

「どうかしたのか?」

「兄さんごめんちょっと具合悪いみたい。 やっぱり戻ってもいい?」

「それは良いけど、送ろうか?」

「大丈夫だよ、そんなに遠くまで来てないし。 それじゃあね」
レデリはそういうと踵を返した

「…ショウいいの?」

「ちょっと様子が変だったわね」

『どこが悪いのかな?』
様子のおかしいレデリを見て三人共心配な様だ

「屋敷に戻るだけなら大丈夫じゃない?」

「…何もないといいけど。」

「ルー、フラグっぽいの言うのやめろよ」

「一先ず私達はやる事やるわよ」

少しレデリの事は気にかかるがストフとの待ち合わせの場所まで来た

「兄貴! 時間ぴったり!」
いつものツーブロックが俺達を発見して声をかけてくる。

「…お前いつもよりジョリってないか?」
大根おろしが作れそうな位ジョリってた。 

「今日の為に気合いれだんだ!」
どういう気合の入れ方だよ… ツーブロックの人って合コンとか行く前に青光するぐらい両脇剃るわけ? 

「それよりそのとんでもない美人二人は何なの?!」
ストフがルーとフララの美しさに驚いていたようだ

「二人とも俺の婚約者だよ」
ドヤ顔である、俺の唯一の自慢ポイントは婚約者のスペックが圧倒的に高い事だ! 俺? ゴミだけど人の事言えんのかお前ら!

「初めまして。私はルーメリア。」

「初めまして坊や、私はフラミレッラよ」
二人がスカートをちょこんと摘まんで優雅に自己紹介した。 そのちょっとした動作だけで育ちの良さが溢れだしていた。

「は、初めまして…兄貴の弟分のストフといいます」

余りの美貌にたじろいでしまったようだ。 
わかる。 俺もやることやってるが、今でもそうなる時あるし。つかお前いつから俺の弟分になった

「しかし兄貴凄いな! 俺一生ついて行くよ!」
何故か力強く拳を握っているが無視だ。 男なぞいらん!

「来なくていいわ! とりあえず早く案内しろよ」
興奮気味に語るジョリジョリツーブロックをせかした

「それじゃあこっちに!」
ジョリツーの案内で俺達は路地裏にある地下への入り口から薄暗い地下に入る。

「【ライト】」
照明魔法手で照らすと奥の方に魔物の様な物がいくつか蠢いているような気配を感じた

「なぁ本当にここなのか?」

「オイラの情報は間違いない! 入り組んでるから案内するよ!」

「…わかった、じゃあストフは俺達の後ろに下がれ。 ルー、フララ、エメいくよ」

「…うん。」「面倒だわ」『ちゃっちゃと行こう!』

そうして俺達一行は魔物をどんどん倒していき先に進むのだが

「兄貴なんでこいつら核がないんだ?」

「何?」
魔物には原動力となる核がある、心臓のような物だ。 輝人の宝石の核とはまた違う。
金になるから欲しいなら持って行っても良いとストフに言っておいたのだ

「ほら」
そういって倒した魔物の核が埋まっている場所をみると代わりに黒い何かが埋まっていた

「何だこれ」
取り出すとドロドロと溶けて消えてしまう

「…普通の魔物じゃない」

「おかしいわね、とにかく先へ進みましょう」

魔物をサクサク倒していくとひらけた空間に出た、かなり広い

「ずいぶん遅かったですね」
この声には聞き覚えがある

「エグバードさんですか?」

「流石にもう隠す意味もないですね」
そう言い終わると開けた空間に火がともり四人の黒装束の人影が現れた。

「…あの時のやつ」

「あれは私が逃がした子ね」

ルーとフララが取り逃がした相手を見つけたようだ

「オークションを邪魔されたくないからって足止めか?」
いや待てよ… おかしい。 俺達が来るのを知っていたようなそぶりだった…

「そんな所ですね、ここで死んでもらいましょう」
待ち伏せ? 罠? もしかして…

『ルチル、レデリは帰って来たか?』

『ん? 主様かえ? 主様と出て行ったきり帰ってきておらんのじゃ』
やっぱり。 オークションに出品される物の中には輝人の核を使った物も多い。 となれば…

「みんなまずいかもしれない」

「…どうしたの?」

「おそらくこれは罠だ」

「罠? ここが会場じゃないって事?」

「あぁ、ついでにレデリも危ない」

「…どうして?」

「多分輝人特有の核の共鳴で多くの核の気配を感じて、さっき別れてそこに向かったんだ。 家に帰ってきてない」

「それはまずいわね、そっちが本当の会場って事じゃないかしら?」

「おそらくね」

『お兄ちゃん急いだほうがいいよ! 多分レデリおねーちゃんそんな事知らないと思う!』

「………」

「…ショウ行って。」

「貴方が見つけれる可能性が一番高いわ」

「でも」
四対二か… 問題ないとは思うけど…

「…心配性。 ショウだけに。」
冗談下手か!

「しょうがないから任せなさい。 ショウだけに」
お前ら才能ないから止めちまえ!

『ここで男気をLet me show ショウだけに』
お、おう。 ちょっといいなそれ

「そんなしょうもない事言えるなら大丈夫だね。 ショウだけに」
最後の俺のキメ顔である

「「『………』」」
俺は乗っかっただけだからね?! 俺が全ての元凶みたいなのやめろ!

「ス、ストフ! お前は俺と退避な! 行くぞ」

「あ、兄貴待ってよ! 俺はそんなに悪くなかったと思うよ! あれ? 水滴が前を走る兄貴の方から…」

タタタタ
悲しみに打ちひしがれた男の足音が地下に鳴り響いた…

二人になった所でエグバードが口を開く
「…美女二人を置いて行ってしまうとはしょうがない男ですね。 ショウだけに」

『『『『『お前もやるんかい!』』』』』
敵味方関係なくみんなく心の中で突っ込んでいた。

「…ショウは私達を信じてるだけ」

「二人でも過剰戦力だけど、面倒だから【眷属召喚】」
骨で出来た巨大な両開きの扉が開くと、いつもの骸骨剣士とその旦那が登場しフラミレッラの前に跪く

「お嬢、おれっちの弟子はいないんですか? 成長を見たかったんですけどねー」

「お前というやつは… お嬢も何か言って下され」

「はいはい貴方達、敵はあそこにいる黒い奴らよ」
フララがショウから貰ったレースの日傘をたたみ、エグバード達を差した。 何故地下で日傘を差す必要があったのかは謎だ。

「ほう、かの有名なフラミレッラ様の眷属達ですか、そちらの方がこちらは好都合ですがね」
エグバードがにやりと笑う

「 ※※※※   ※※※※   ※※※※ 【セイントサークル】」
部屋全体を青白い光で包み込んだ

「…神聖属性。 お姉様大丈夫?」

「何言ってるのルーメリア、問題ないわ。 これぐらいのハンデをあげないと可哀想ってもんよ」

「流石ですね、雑魚ならこれだけで消滅するものですが…」

「その辺の下等なアンデッドと一緒にしないで欲しいわね。【骸の嘆き】」

鋭利な骨が地面から突如突き出し四人はそれを避ける為にバラバラに散る

「うふふふ、今宵は楽しめそうね」
フラミレッラが蒼い目をサファイアの様に輝かせ邪悪な笑みを漏らしていた

「…あいつは私が貰う」
ルーメリアも赤黒い大鎌と紅い瞳を煌めかせた。

人知れず王都のスラムの地下での激しい戦いが始まる

◇  ◇  ◇  ◇

ストフを担いでレデリと別れた場所付近まで行き、俺の屋敷の場所を伝えて別れた。 ルチルには連絡済みだ

「しかしどこいった? どう探す?」
レデリは生物として認識されないので魔素を解析できず【チェイサー】が使えない。 自分の魔力の残痕でも残してあればよかったのだが恋人でもないのでボディータッチなんかはほぼなかった。

「あークソ!」
考えろ考えろ【思考加速】

何で俺は共鳴現象が起こらないんだ?
元々自分の物でない物を強制的に体内に入れたから?

結晶魔術ではなく結晶魔法なのは俺の体内に入って新しい物に変わったって事だよな…
いや待てよ? 共鳴できなくても、もしかして探知はできる?

共鳴っていうのは核からお互いに特殊な電波みたいなのを飛ばして反応し合ってお互いを特定する事で起こるんじゃないか? 
そう仮定すると個人の特定は俺には無理だろうが、核の力を電波みたいに飛ばせば核がある場所位はわかるんじゃないだろうか?

レデリ個人を特定しなくても宝石の核が集まっている場所に行けばいるはずだ!

となれば即席だが…「無属性結晶魔法【宝石探知】」
無属性魔法の【レーダー】に核からのエネルギーを混ぜた探知魔法だ

………あった! いくつか候補はあるが、多分こことあそこは宝石店。 となればレデリと別れたところから考えて… よし行ってみよう!

俺は全力で走った。 レオナルドの件もある、もしもレデリに万が一の事があれば… 
レデリの顔が頭から離れないまま特定した場所に着くとそこには考えもしなかった光景が広がっていた。

『お兄ちゃんこれって…』

「何があったんだ?」
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