うちの息子はモンスター

島村春穂

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息子の夜這い

【5】

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 やにわにパンティごと指を掛けられ、声さえあげる間すらなかったほどためらいなくパジャマの下が引かれた。


 芙美子の躰は着痩せする性質たちだったから動揺する胸の内がそのまま悩ましい柔肌を揺らし暗闇を淫靡に香らせた。


 一方、芙美子の仕草の裏に隠されている気持を楽しむかのように海斗は余裕であった。頭のすぐ横にあった旦那の枕を、この海斗にとっては実の父親であるその枕を、無理くり持ち上げられた腰の下にと敷かれた。


 いままでぬくかったお尻の穴まで露骨となって肌寒い夜気がスーッと撫でつけていく。熱く火照った躰にこれがなんだか心地よく、貝のように頑なに閉じ合わせていた太腿がそぞろに緩み、そしてひらいた。股ぐらに海斗の顔がはいってくる気配がした。


 いまの芙美子にとってもっとも淫らに火照ったその場所に、少しずつ、ス~っ、ス~っと欲望にまみれた鼻息がそよがれていく。


 やだあ……嗅いでるっ、嗅いでるっ……
 芙美子は朱唇を噛んで忍んだ。


 すると、暗闇から嘲りが囁かれる。


「……匂いすんのも愛嬌だな」と。
 股ぐらからこちらを睨み据えられている気がした。


 ……やめてェ……
 だが、芙美子が身を捩って抗うには躰が気怠すぎた。一度めいいっぱいにひらききった股ぐらはだらしなくそのままであった。


 海斗はこれが今夜のメインディッシュだと言いたげにすぐに愛撫してくることはなかった。熟した淫裂に不規則なリズムで荒い鼻息だけがそよがれ、こよなく楽しまれているのが嫌なくらいよくわかる。抗うことすら許されない芙美子の躰は高まりますます熱くなっていった。


 吐息が乱れるまでどれほどの時間があっただろう。この暗闇は二人のなかから時すら消し去っていくようであった。それだから、


「……夜は長いぜ」
 と囁かれたとき、アソコに空洞を空けられたみたいな冷たい戦慄が走った。


「ど~れ」


「……くっ」
 と芙美子は豊腰ほうようを引かされた。


 いよいよ魔の触手が肉扉を捲りにかかり、閉じられた聖域を犯しにかかった。


 クチュ……クチュ、っと芙美子の羞じらいが暗闇のなかでおおきすぎるほどよく鳴った。指の隙間を埋めるかのように肉襞が絡みついていく。離せとばかりにその指が遠ざかろうとすれば、行かないで! と肉洞がきつく食いしばった。


 淫裂から蒸れた性臭を吐かされ、穴蔵が嬉しそうに泣かされていく。いじわるな海斗は時折、わざとらしくその穴に空気を入れ、下品なあの音をだしたがった。


「くくく」
 予期せぬタイミングで鼻で嗤われてしまうと芙美子はもうダメであった。


「ああぁ……」
 と思わず声が洩れ、部屋が暗くて助けられたとさえ芙美子は思った。


「ウケる」
 披ききった花弁を息子の手でふたたび閉じ合わされ、


「土手肉が掴めるね」
 なんてどうして耐えられようか。真昼間だったら死ぬ思いだ。


「女の躰義母さんしか知らないけど、これって掴めるものなの?……」


 ……知りませんっ……、と胸の内でつぶやき聞こえない振りをした。
 漆黒の闇から視線がひしと突き刺さる。股ぐらから顔だけを覗かせ、こちらを睨み付けてくる海斗のギラついた視線が。


 ううう……
 むらがりを鼻先で掻き分けられながら肉丘のまるみをぐりぐりやられていく。いまの仕返し、いや違う、お仕置きだと言わんばかりに。


 やめてよぉ……声にならない唇がわななく。アソコの匂いで深呼吸をされるなんて。自分の匂いくらい嫌でも知っている。乳酪めいたあの生ぬるい匂い。


「……ザ・ま×こって匂いすんなぁ、しっかし……」
 恥骨の上で顎先を乗っけられ、嗤われた音吐おんとが子宮に響く。


「だからおばさんはやめらんねえ……」
 卑猥な言葉を次々とたたみ掛けられ、痺れた快美感が腰裏からせり上がってきてさざ波を立ててくる。


「な~に発情してんだよ?……匂うぞ~」


 うふんっ……と芙美子の細い喉が揮えた。


「……やめてェ……っ」
 金縛りにあっていたような躰からやっとかすれた声だけでた。


 と、ひらいた足元でなにやらベッドシーツの上をまさぐる渇いた音がした。股ぐらから顔を離した海斗から膝立ちになったような気配がしてベッドがその重みで軋んだ。


 ……なにかを手に持っているみたい。
 闇のなかで反射したものが見えた。そしてブラウン管の砂嵐みたいなノイズのあと、


『はぁっ……、あんっ、いやっ……アハン……』といった年増のあえぎ声が流れだした。いま闇のなかで行われている情事そのままで年増は乱れ、男と女が激しくこすれ合っている。その女がいったい誰なのか、芙美子にはすぐにわかってしまった。


『……海斗さんの奴隷になります!……だからもっと!……後ろから激しく突いてーッ!』


「やめてェじゃねえんだよ……誓っただろ?……なあ?」
 冷たい囁きが実によく闇に映えた。


 ノイズにまみれ、女の嬉し泣く音声は放置されたままであった。


「……ああっ……」
 と芙美子から落胆が洩れ、テープレコーダーで録音されたことを思い出していた。


 ……信じられない。
 いまの子はみんなこうなのだろうか。動画でも音声でもなんでも記録してコレクターしたがる。これは異常なほどの自己顕示欲だ。端から協力し合ったり仲良くするなんてことさえ考えやしない。弱みを握ってひたすらマウントをとるだけ。そんなことをやっていったいその先にどれほどの未来が待っているというのだろう。陰湿だ。気持悪い。狂ってる。そして退屈だ。息子の海斗も例外ではない。


 ここまでくると寝室に盗聴器が仕掛けられているのではないかとさえ疑ってしまう。いやそれだけじゃない。海斗のことだからトイレやお風呂場だって危ない。


 ああっ!……もうなにも信じられないっ……
 もはや家中が海斗の監視体制に置かれているのかもしれない。現に、頓服薬を飲まなかった夜はおそらくこうしたいたずらをされたことがないし、起きなかっただけかもしれないが事実だ。


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