うちの息子はモンスター

島村春穂

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息子の日課

【5】

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 ――知らず知らず息子の肉塊に心を奪われていることにハッとして芙美子は生唾を呑みこんだ。喉が焼けつくように渇く。そのくせ口中には粘っこい唾液が溜まっていた。



「……ど、どこがいいの?……」


「先っぽー」


「……こうかしら……」
 芙美子は膝枕したまま海斗の下腹部を覗きこんで涎れを垂らした。


 すると目の前で赤黒い漲りが嬉しそうに跳ねる。ビクン、ビクンと。掌でそれを包むといま垂らした涎れと我慢汁とでにちゃにちゃっとなった。


「あんまり感じないで……」


「なんでえ?」


「なんでって……」
 掌の中ですぐにぴちゃぴちゃと音が変わってきた。


 滑りがよくなってくればやはり海斗は腰を使ってくる。芙美子の掌を味わう腰つきは半年前まで中学生だったとはとても思えない。肉塊に力をこめたり抜いたりさせつつ振っているのだから。


 甘美な弾力が直に伝わってくるから芙美子はまだそれを直視できないでいる。


 しだいに海斗の息づかいが切なくなってきた。


「……だめよ……感じないで、おねがいっ……」
 哀願といっていいほど丁重な言い草であった。聞こえたのか聞こえていないのか、海斗は、


「うぅ……」
 とうめき、


「玉もこねてー」
 と催促はエスカレートするばかりである。


「んもう……こんなことまでやらせてえ」
 そう言いつつも芙美子はふぐりに手を滑らせた。


 硬くすぼまったここに悪魔の子種が詰まっているかと思うと、芙美子はゾッとした。


「こ、こうかしら……」


「うん! ゆっくりやってー」
 催促はもはや一人前である。落ち着きはらい、女に臆するところがまるでない。


「ああー……気持いいー」
 とあえぎ、足裏をくっつけ合わせ股ぐらをひろげてくる。


 まぬけな恰好だが母性がうずうずしてきてしまう。いやだいやだと思いつつ、どこかで指示されるのを期待して待っている。


「口でしてえ」
 そうおねだりされてすぐに芙美子の口中くちじゅういっぱいに甘酸っぱい涎れが溢れた。


「……ほんと調子にのらないで……」
 口先だけの強がりなのはわかっている。それは海斗にもだ。それだから――、


「でもして欲しいんだもん」
 と言われてしまっても仕方のないことであった。


 海斗は虚ろな目をしたままむっくと起き上がり、うわぎのぜんぶを脱いでソファに尻を搗いた。それから膝を立てた両足を左右にくつろげてから浅く座り直す。腰を突きだすその中心では芙美子の淫水を幾度となく浴び、赤黒く焼けた堂々たる漲りが男の自信に満ちてふるふる宙に揺れていた。


「こっちきてー」
 頭の後ろで腕を組み、腰を振って催促をしだす。


 海斗の裸は女の芙美子さながらぬめ白い肌をしていて薄っぺらい胸板がいかにも少年らしい。どこか申し訳なさそうに生えた薄い腋毛すら女の子のようであった。


 その容姿からどうしてこれほど逞しい肉塊が想像できようか。自信に満ち満ちたその男性器は天井を向き、裏スジからグロテスクに盛り上がる双頭の瘤が芙美子を睨み付けて威圧してくるようだ。


 こっちきてと言われてもたじろいでしまう。こんなにも凶暴にいきり勃ったものをどう慰めればよいのか。芙美子は途方に暮れて声を失ってしまう。


「ねえタマタマ吸ってよー」
 一方息子の海斗は、芙美子の前でなんでも口にできた。


 膝を突いてにじり寄っていく間にも腹に据えた理性といま目の前にある現実、そして芙美子の頭の奥でぐちゃぐちゃにされたいどす黒い願望の交差点でドロリと焦げ臭いなにかが垂れ堕ちていく。


「はやくー、はやくー」
 と子どもみたいに無邪気な海斗とはまるで対照的であった。


 その癖、海斗は焦らされてもいっこうに焦る気配がない。後手を突いて体を支え、ソファから小さな尻を持ち上げ、芙美子がこの股ぐらに入ってくるのをいまかいまかと楽しんでいる余裕すらあるのだから。


「……アァ……」
 と、やや芝居がかってはいたものの、嬉しい胸の内を悟らせないように芙美子はできるだけ狼狽してみせた。


 顔を沈めたくさむらは目が沁みいるくらい熱く、そして蒸っしていた。海斗の外見からはギャップのある濃い曲毛くせげがさわさわ鼻先をくすぐってくる。意識がそっちへいった途端、ツンとくる甘い性臭でたちまちに眩暈がした。


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