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ひきこもりの殺意
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季節は冬だった。
風が肌に突き刺さるように寒い。
少年はあるホームセンターで、あるモノを買った帰り道であった。
はじめ、まったく気がつかなかったんだ。男がわめき散らしていることに。
地下鉄を上がっていく階段を振り返ってみたら、自動券売機の傍で、ホームレスってひとを初めて見た。
上から下まで、ぜんぶねずみ色っていう服装でさ、灰色っぽい髭というのが、男の孤独の分だけ伸びていた。
もうぜんぜん呂律が回っていなくって、何をわめいているのかまるで聞き取れやしなかったけれど、身振り手振りをおおきく使ってさ、周囲のひとたちをひどく威嚇していた。
切符を買おうとしていたご婦人たちが、身を庇うようにしてこの男を避け、関わりたくないって態度で距離を置いていた。
少年もあのホームレスを見て、最初怖いなと思った。でも思い直した気持はすぐに同情へと変わっていった。
彼はひきこもりだったからさ、周囲の連中がぜんぶ敵に見えてしまう葛藤を肌で知っていた。
あのホームレスは毎日すれ違う、何千ってもの無機質な人間たち(ホームレスの男に対する)と、ああやってひとりぼっちで戦っているうちに、きっと気が触れてしまったんだと、少年はそう思った。
ひきこもりの殺意というのが、少年の胸の内でも燻っていた。
風が肌に突き刺さるように寒い。
少年はあるホームセンターで、あるモノを買った帰り道であった。
はじめ、まったく気がつかなかったんだ。男がわめき散らしていることに。
地下鉄を上がっていく階段を振り返ってみたら、自動券売機の傍で、ホームレスってひとを初めて見た。
上から下まで、ぜんぶねずみ色っていう服装でさ、灰色っぽい髭というのが、男の孤独の分だけ伸びていた。
もうぜんぜん呂律が回っていなくって、何をわめいているのかまるで聞き取れやしなかったけれど、身振り手振りをおおきく使ってさ、周囲のひとたちをひどく威嚇していた。
切符を買おうとしていたご婦人たちが、身を庇うようにしてこの男を避け、関わりたくないって態度で距離を置いていた。
少年もあのホームレスを見て、最初怖いなと思った。でも思い直した気持はすぐに同情へと変わっていった。
彼はひきこもりだったからさ、周囲の連中がぜんぶ敵に見えてしまう葛藤を肌で知っていた。
あのホームレスは毎日すれ違う、何千ってもの無機質な人間たち(ホームレスの男に対する)と、ああやってひとりぼっちで戦っているうちに、きっと気が触れてしまったんだと、少年はそう思った。
ひきこもりの殺意というのが、少年の胸の内でも燻っていた。
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