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かりそめの天使
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さて、残された狐塚のまえで武宮さんは一人張り切りだした。準備しますね、と浴場に戻ったと思ったら戸口に顔だけだして訊いてきた。
「もしかして寒い?」
狐塚がうなずくと、風邪ひいたらたいへんだ、と武宮さんは言った。
どうするのかと見ているうちに、脱衣所には湯のはいった風呂おけと清潔な白いタオルが二枚、そして、石鹸が用意された。一つひとつの動作に無駄がなくて、狐塚がこれまでバイトしてきたどの従業員よりもきびきびしていた。
「下脱ぎましょうか」と武宮さんは言った。
狐塚は、武宮さんの仕事ぶりに圧倒されたのと、見惚れたのとで口ごもった返事は殆んど弛緩しきっていた。
「ん? どうしたの」と正面きって見据えられた狐塚は顔が赤くなった。「じゃあ、あたしが脱がしていいですか」
狐塚は、武宮さんの目が見られなかった。諦めたようにうなずく狐塚を見て、はーい、と武宮さんが言った。
武宮さんは白い長靴を脱ぐと、その場にしゃがみこんで正座した。
入院着はぺらっぺらの布地だったから簡単にふくらはぎまで下ろされた。母親が子どもの着替えをさせるようなものであった。
武宮さんは、ひざのうえに狐塚の足を片方ずつ載せて入院着を足首から抜いた。武宮さんはその入院着を手際よく畳んでくれた。母親いがいにそういったことをしてもらったのは狐塚にとってこれがはじめてだった。
狐塚は、はじめて武宮さんを意識した。考えてみれば、入院いらい一番口やかましかった武宮さんではあったが、事あるごとに狐塚に話しかけてくれたのもこの武宮さんだった。
白衣から伸びた腕は白磁のように輝いているみたいだった。エキゾチックな奥二重に、どこか眠そうな目尻には、化粧をしていないせいか少女の面影さえあった。そして、自立心のつよそうな鼻梁には色っぽいものがある。
狐塚は妙な感覚に囚われた。なぜ、今まで武宮さんの魅力に気がつかなかったのだろう、と。そればかりか、これまで邪険にあつかって避けてきたというのだから不思議だった。こうして武宮さんの顔を見下ろしていると、武宮さんとはじめて会ったときの顔が思いだせない。というのは、武宮さんがまるで別人のように思えてきたからだ。狐塚の胸のうちで急に羞恥心が高まっていった。
「……ちょっと待ってください」と狐塚は言った。
十五日も洗っていない粗末なものを見せる訳にはいかなかった。今だってパンツと武宮さんの顔との距離はちかい。匂いだってとどいているはずだった。
武宮さんは、パンツのゴムから指を離した。
「……十二日も風呂はいってないんですよ……汚いですよ」
恥かしさのあまり、三日分については嘘をついた。
「汚れているから綺麗にするんでしょ」と武宮さんは言った。
ごもっとも……だが、そうはいかない。男の沽券にかかわる問題なのだ。
「……だめです。かんべんしてください」
「そうゆう言い方って。なんかあたしがわるいことしてるみたいじゃない」と言って、武宮さんは再びゴムに指をかけた。
狐塚がその指を払った。
「痛い……」と武宮さんがきつく睨んできた。
「すみません……そういうつもりじゃ」
武宮さんは怒っていた。狐塚が委縮したすきにパンツは一気に下ろされた。
狐塚の粗末な陰部が露呈した。それでも男としてのプライドが隠すことを拒否させた。
武宮さんは一瞥こそしたが、つとめて顔色をかえないようにしているようであった。
外気にふれたあそこがこそばゆかった。思わず力をこめた。男根がピクリとした。やばい……。しかし、焦ればそれだけ血流が激しくなっていく。
武宮さんは、入院着を脱がしてくれるときにそうしてくれたように、ひざのうえに狐塚の足を載せて、片方ずつパンツを抜き取ってくれた。それを丁寧に畳み、武宮さんは狐塚のあそこに顔を戻した。
すると、目に見えて男根の角度が上がっていった。武宮さんはそれを見た。狐塚にはそのたった数秒が永遠のようだったし、スローモーションのようでもあった。
男根が限界まで吊り上がったところで力がはいった。武宮さんの目と鼻の先で肉竿が二度三度上下した。そして、狐塚が懸念していたとおり、包皮を半分ほど被った鬼頭には言い訳しようがないぐらいティッシュのカスが付いていたし、香ばしい匂いが鼻先まで立ちのぼってきた。
武宮さんの顔が赤くなった。
「……じゃあ、拭きますね」
肉竿が上下に跳ねた。わざとではなかった。だが、これではまるであそこで返事をしたみたいであった。
武宮さんがつとめて表情をかえないようにしているのがわかるせいで、鬼頭に次々と欲望があつまってきてしまう。失礼します、と武宮さんに手を添えられた肉竿がビクリとした。
「冷たくないですか」と武宮さんは言って、お湯で温まったタオルで男根を拭いてくれた。
狐塚は弛緩しきった声で返事した。
狐塚のかぐろい陰部と、白磁のような武宮さんの手が対照的だった。
「汚れ溜まってるとこは念入りにしないとね」と武宮さんは言った。
鬼頭にタオルがふれた。狐塚は尻にえくぼができるぐらいビクッとなった。
「痛かったですか」と武宮さんが狐塚を見あげた。
狐塚は慌てて首を横に振った。
ティッシュのカスは頑固にこびり付いていて、何度タオルで拭いても取れなかった。武宮さんがお湯で濡らした指でこすってもまだ取れない。そんなことをやられているうちに、狐塚の腰が段々とひけてきた。武宮さんは恥かしそうに唇をかんでいた。
「痛くない? だいじょうぶ?」と狐塚を励ましながら、ほそい指先が鬼頭をこすった。
武宮さんはしだいに夢中になって、顔が肉竿にふれそうなぐらい近づいた。武宮さんの洟息というのが鬼頭にふれていた。狐塚はたまらなくなってしまい、力がはいるたびに武宮さんのてのひらの中で肉竿が上下に跳ねた。
「そうだ」と武宮さんは言った。
鬼頭にふれていた指を洗いもせずにひと舐めし、唾をつけてティッシュを引っ掻いたのだった。ぬるりとした感触に、狐塚の腰はさらにひけた。
狐塚は目を閉じた。泣きべそをかきたいぐらいギンギンだった。
「……まだですか」と狐塚はやっとの思いで言った。
「とれましたよ」と武宮さんからかえってきた。
……だったらどうして。
唾でぬめった指腹は鬼頭をなでて終らなかった。やがて、そのぬるぬるは鬼頭の先で広がっていった。まずい……我慢汁が出てきた、と狐塚は思った。
「もしかして寒い?」
狐塚がうなずくと、風邪ひいたらたいへんだ、と武宮さんは言った。
どうするのかと見ているうちに、脱衣所には湯のはいった風呂おけと清潔な白いタオルが二枚、そして、石鹸が用意された。一つひとつの動作に無駄がなくて、狐塚がこれまでバイトしてきたどの従業員よりもきびきびしていた。
「下脱ぎましょうか」と武宮さんは言った。
狐塚は、武宮さんの仕事ぶりに圧倒されたのと、見惚れたのとで口ごもった返事は殆んど弛緩しきっていた。
「ん? どうしたの」と正面きって見据えられた狐塚は顔が赤くなった。「じゃあ、あたしが脱がしていいですか」
狐塚は、武宮さんの目が見られなかった。諦めたようにうなずく狐塚を見て、はーい、と武宮さんが言った。
武宮さんは白い長靴を脱ぐと、その場にしゃがみこんで正座した。
入院着はぺらっぺらの布地だったから簡単にふくらはぎまで下ろされた。母親が子どもの着替えをさせるようなものであった。
武宮さんは、ひざのうえに狐塚の足を片方ずつ載せて入院着を足首から抜いた。武宮さんはその入院着を手際よく畳んでくれた。母親いがいにそういったことをしてもらったのは狐塚にとってこれがはじめてだった。
狐塚は、はじめて武宮さんを意識した。考えてみれば、入院いらい一番口やかましかった武宮さんではあったが、事あるごとに狐塚に話しかけてくれたのもこの武宮さんだった。
白衣から伸びた腕は白磁のように輝いているみたいだった。エキゾチックな奥二重に、どこか眠そうな目尻には、化粧をしていないせいか少女の面影さえあった。そして、自立心のつよそうな鼻梁には色っぽいものがある。
狐塚は妙な感覚に囚われた。なぜ、今まで武宮さんの魅力に気がつかなかったのだろう、と。そればかりか、これまで邪険にあつかって避けてきたというのだから不思議だった。こうして武宮さんの顔を見下ろしていると、武宮さんとはじめて会ったときの顔が思いだせない。というのは、武宮さんがまるで別人のように思えてきたからだ。狐塚の胸のうちで急に羞恥心が高まっていった。
「……ちょっと待ってください」と狐塚は言った。
十五日も洗っていない粗末なものを見せる訳にはいかなかった。今だってパンツと武宮さんの顔との距離はちかい。匂いだってとどいているはずだった。
武宮さんは、パンツのゴムから指を離した。
「……十二日も風呂はいってないんですよ……汚いですよ」
恥かしさのあまり、三日分については嘘をついた。
「汚れているから綺麗にするんでしょ」と武宮さんは言った。
ごもっとも……だが、そうはいかない。男の沽券にかかわる問題なのだ。
「……だめです。かんべんしてください」
「そうゆう言い方って。なんかあたしがわるいことしてるみたいじゃない」と言って、武宮さんは再びゴムに指をかけた。
狐塚がその指を払った。
「痛い……」と武宮さんがきつく睨んできた。
「すみません……そういうつもりじゃ」
武宮さんは怒っていた。狐塚が委縮したすきにパンツは一気に下ろされた。
狐塚の粗末な陰部が露呈した。それでも男としてのプライドが隠すことを拒否させた。
武宮さんは一瞥こそしたが、つとめて顔色をかえないようにしているようであった。
外気にふれたあそこがこそばゆかった。思わず力をこめた。男根がピクリとした。やばい……。しかし、焦ればそれだけ血流が激しくなっていく。
武宮さんは、入院着を脱がしてくれるときにそうしてくれたように、ひざのうえに狐塚の足を載せて、片方ずつパンツを抜き取ってくれた。それを丁寧に畳み、武宮さんは狐塚のあそこに顔を戻した。
すると、目に見えて男根の角度が上がっていった。武宮さんはそれを見た。狐塚にはそのたった数秒が永遠のようだったし、スローモーションのようでもあった。
男根が限界まで吊り上がったところで力がはいった。武宮さんの目と鼻の先で肉竿が二度三度上下した。そして、狐塚が懸念していたとおり、包皮を半分ほど被った鬼頭には言い訳しようがないぐらいティッシュのカスが付いていたし、香ばしい匂いが鼻先まで立ちのぼってきた。
武宮さんの顔が赤くなった。
「……じゃあ、拭きますね」
肉竿が上下に跳ねた。わざとではなかった。だが、これではまるであそこで返事をしたみたいであった。
武宮さんがつとめて表情をかえないようにしているのがわかるせいで、鬼頭に次々と欲望があつまってきてしまう。失礼します、と武宮さんに手を添えられた肉竿がビクリとした。
「冷たくないですか」と武宮さんは言って、お湯で温まったタオルで男根を拭いてくれた。
狐塚は弛緩しきった声で返事した。
狐塚のかぐろい陰部と、白磁のような武宮さんの手が対照的だった。
「汚れ溜まってるとこは念入りにしないとね」と武宮さんは言った。
鬼頭にタオルがふれた。狐塚は尻にえくぼができるぐらいビクッとなった。
「痛かったですか」と武宮さんが狐塚を見あげた。
狐塚は慌てて首を横に振った。
ティッシュのカスは頑固にこびり付いていて、何度タオルで拭いても取れなかった。武宮さんがお湯で濡らした指でこすってもまだ取れない。そんなことをやられているうちに、狐塚の腰が段々とひけてきた。武宮さんは恥かしそうに唇をかんでいた。
「痛くない? だいじょうぶ?」と狐塚を励ましながら、ほそい指先が鬼頭をこすった。
武宮さんはしだいに夢中になって、顔が肉竿にふれそうなぐらい近づいた。武宮さんの洟息というのが鬼頭にふれていた。狐塚はたまらなくなってしまい、力がはいるたびに武宮さんのてのひらの中で肉竿が上下に跳ねた。
「そうだ」と武宮さんは言った。
鬼頭にふれていた指を洗いもせずにひと舐めし、唾をつけてティッシュを引っ掻いたのだった。ぬるりとした感触に、狐塚の腰はさらにひけた。
狐塚は目を閉じた。泣きべそをかきたいぐらいギンギンだった。
「……まだですか」と狐塚はやっとの思いで言った。
「とれましたよ」と武宮さんからかえってきた。
……だったらどうして。
唾でぬめった指腹は鬼頭をなでて終らなかった。やがて、そのぬるぬるは鬼頭の先で広がっていった。まずい……我慢汁が出てきた、と狐塚は思った。
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