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エンディング後
悪役令嬢、写真を見る
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するとロシャさんが私に気が付いて声をあげた。
「ああこの娘が例の……。いやぁ大層なべっぴんさんじゃないか。良かったら俺と食事でもどうだい? 」
「え!? 」
べっぴんさんと言われて思わず照れる私。
「人の奥さん口説かないでくれよな」
不機嫌そうにロキが私を引き寄せる。
「冗談だよ、王妃様を口説く命知らずなんているもんか」
ロシャさんはガハハと豪快に笑った。
「えーっと、お二人はお友達なんですか? 」
「友達? いやいや、師匠と弟子、かな」
「お師匠さんなんですか!? 」
おう、とロシャさんが言う。
「身一つで飛び出してきたこいつを拾って使い魔や魔術を叩き込んだのは俺さ」
「え! 凄い方なんですね……!!」
「昔はな、今はただのおっさんだ」
ロキが吐き捨てるように口を挟む。
「出会った頃のこいつは可愛かったんだけどなぁ。今では生意気な……」
「おい、余計なことを吹き込むな」
「何ならアルバムもあるぜ、見るかい? 」
「え、見たいです! 昔のロキ……」
「やめろやめろやめろ!! 」
珍しく慌てたロキが私たちの間に割って入る。この慌てぶり、よっぽど見られたくないらしい。
しかしそういう反応をされると尚更見たくなるのが人間というものだ。
「ほらよ、これが出会ってすぐの写真だ」
ロキの守備を掻い潜って写真をキャッチする私。
そしてそこに写っていたのはーー。
「可愛い~~~~!!!」
ダボダボなローブを着てぶすくれた顔をする小さいロキ。年は十そこそこぐらいだろうか?
女の子に見えるぐらい可愛らしい容姿をしている。
「お、おい! やめろ! 」
「この頃は可愛かったんだけどな~……魔法が上手く扱えなくて泣いちまったり駄々こねたり……」
「へえ……駄々っ子だったんですね」
「頼むから!! 返してくれ! 」
「あっ」
一瞬の隙を突かれて写真を奪われる私。残念、宝物にしようと思っていたのに。
「恥ずかしすぎる……」
顔を真っ赤にして俯くロキ。彼がこんなにも照れるなんて珍しい。今日は槍でも降るのではないだろうか?
「良いじゃねえか、奥さんに見せるぐらい」
ロキの反応など露知らず、ロシャさんがくっくっと笑う。
「そうよロキ、すっごく可愛かったわ」
「それ、フォローになってねえからな……」
「それでロシャさん、他に写真はないのですか!? 」
「勿論、あるよ」
やめろ! とロキが叫んだそのとき、彼の懐から警戒音が鳴り響いた。
慌てて音の発信源、通信機を手に取ると、耳に当てて何やら会話し始める。
そして直ぐに王様としての顔に戻り、少しだけ焦りを見せる。
「ーー分かった。すぐ戻る」
「ロキ? どうしたの? 」
ロキは私の方に向き直るとこう言った。
「悪いイリア、用事が出来た。俺は城に帰るが、お前はどうする? 」
「えっ……えっと」
せっかく久しぶりに外に出れたのだ、もう少しここにいたいと言うのが本音だった。それにロキの昔の話も聞いてみたい。
しかし切羽詰まってそうな彼にそんなことは言えない。
「俺が責任持って城まで送ってやるよ。だからもう少しここにいさせてやっても良いんじゃないか?」
私の気持ちを察してか、ロシャさんが口を開いた。
私はそれに便乗するようにコクコクと頷く。
ロキは怪訝そうに眉を潜めたが、ロシャなら信用出来るな、と小さく呟いた。
「分かった。頼むからイリアに変なこと吹き込むなよ」
「考えとくわ」
ロキは慌ただしくマントを羽織ると、バタバタと外に飛び出していった。
「ああこの娘が例の……。いやぁ大層なべっぴんさんじゃないか。良かったら俺と食事でもどうだい? 」
「え!? 」
べっぴんさんと言われて思わず照れる私。
「人の奥さん口説かないでくれよな」
不機嫌そうにロキが私を引き寄せる。
「冗談だよ、王妃様を口説く命知らずなんているもんか」
ロシャさんはガハハと豪快に笑った。
「えーっと、お二人はお友達なんですか? 」
「友達? いやいや、師匠と弟子、かな」
「お師匠さんなんですか!? 」
おう、とロシャさんが言う。
「身一つで飛び出してきたこいつを拾って使い魔や魔術を叩き込んだのは俺さ」
「え! 凄い方なんですね……!!」
「昔はな、今はただのおっさんだ」
ロキが吐き捨てるように口を挟む。
「出会った頃のこいつは可愛かったんだけどなぁ。今では生意気な……」
「おい、余計なことを吹き込むな」
「何ならアルバムもあるぜ、見るかい? 」
「え、見たいです! 昔のロキ……」
「やめろやめろやめろ!! 」
珍しく慌てたロキが私たちの間に割って入る。この慌てぶり、よっぽど見られたくないらしい。
しかしそういう反応をされると尚更見たくなるのが人間というものだ。
「ほらよ、これが出会ってすぐの写真だ」
ロキの守備を掻い潜って写真をキャッチする私。
そしてそこに写っていたのはーー。
「可愛い~~~~!!!」
ダボダボなローブを着てぶすくれた顔をする小さいロキ。年は十そこそこぐらいだろうか?
女の子に見えるぐらい可愛らしい容姿をしている。
「お、おい! やめろ! 」
「この頃は可愛かったんだけどな~……魔法が上手く扱えなくて泣いちまったり駄々こねたり……」
「へえ……駄々っ子だったんですね」
「頼むから!! 返してくれ! 」
「あっ」
一瞬の隙を突かれて写真を奪われる私。残念、宝物にしようと思っていたのに。
「恥ずかしすぎる……」
顔を真っ赤にして俯くロキ。彼がこんなにも照れるなんて珍しい。今日は槍でも降るのではないだろうか?
「良いじゃねえか、奥さんに見せるぐらい」
ロキの反応など露知らず、ロシャさんがくっくっと笑う。
「そうよロキ、すっごく可愛かったわ」
「それ、フォローになってねえからな……」
「それでロシャさん、他に写真はないのですか!? 」
「勿論、あるよ」
やめろ! とロキが叫んだそのとき、彼の懐から警戒音が鳴り響いた。
慌てて音の発信源、通信機を手に取ると、耳に当てて何やら会話し始める。
そして直ぐに王様としての顔に戻り、少しだけ焦りを見せる。
「ーー分かった。すぐ戻る」
「ロキ? どうしたの? 」
ロキは私の方に向き直るとこう言った。
「悪いイリア、用事が出来た。俺は城に帰るが、お前はどうする? 」
「えっ……えっと」
せっかく久しぶりに外に出れたのだ、もう少しここにいたいと言うのが本音だった。それにロキの昔の話も聞いてみたい。
しかし切羽詰まってそうな彼にそんなことは言えない。
「俺が責任持って城まで送ってやるよ。だからもう少しここにいさせてやっても良いんじゃないか?」
私の気持ちを察してか、ロシャさんが口を開いた。
私はそれに便乗するようにコクコクと頷く。
ロキは怪訝そうに眉を潜めたが、ロシャなら信用出来るな、と小さく呟いた。
「分かった。頼むからイリアに変なこと吹き込むなよ」
「考えとくわ」
ロキは慌ただしくマントを羽織ると、バタバタと外に飛び出していった。
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