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悪役令嬢、隠れる

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「女の癖に可愛いげのない部屋してんなー」

 物珍しそうにロキがキョロキョロと辺りを見回す。

「う、うるさい。良いでしょ別に」

 私は自分のベッドに座り込むと彼と向かい合う。

「なるべく声を出すなよ、いないふりするんだ」

「分かったわ」

 ゴロンとカーペットに横になるロキ。いや、人の部屋でそんなに寛がれても困るんですけど……。

「リラックスしてるわね」
 
 私は呆れたように目を細める。

「まぁな。ここからは耐久戦だ。あんまり気を張っていても疲れちまうぞ」

 それもそうね、と私は頷いた。

「それにしても何もない部屋だな。テレビとか観ねえの? 」

「うーん……。観ないわね……」

 そしてふと、自分の部屋に男性を連れ込んでいるという事実に気が付く。  

……どうしよう、今まで何とも思っていなかったのに変に意識して来てしまった。
 
「そうだ、女同士なら浮気にならないんじゃないか? 」

「へ? 」

 隙を突かれ、ボフッとベッドに押し倒される。

一瞬の静寂。しばし見つめ合う。

 え?

 何が起こったのか分からず、私は必死に、あまり良くはない頭を回転させた。

「一緒に寝ても良いって言ったのはイリアだよな? 」

「いやいやいやいや!!! だから浮気調査してる側が浮気は……」

「今はロキ"子"だぞ、お前がそう言ったんじゃないか」

 確かに言ったけども……!!
 心臓がバクバクと高鳴り、口から飛び出しそうだ。

「女同士のキスなんて友達の遊びみたいなもんだろ? 」

 馬鹿馬鹿!! なんでこんなときに発情してんのよ!!
 突き飛ばそうと思ったが腕を押さえつけられた。

 強い力。これは女のものではない。間違いなく彼は男で、私は女なのだ。

「大きい音、出しちゃ駄目だから」

「ま、待ってよ心の準備が……!! 」

 するとガチャリと部屋の扉が開かれた。とっさに転がり落ちるようにベッドの下に隠れる私たち。

 待って、一体誰?
 掃除のメイドだろうか。

 いや、それはない。彼女たちは必ずノックしてくるはずだ。

 そして侵入者"たち"は会話をし始めた。

「ここがイリアの部屋か」

 聞き覚えのある男の声。

「ええ、そうです」

 そして……妹の声。

 間違いない。エドワードとエミリアの声だ。

  嘘、なんで!? どうして二人が私の部屋に!?

 思わず叫びそうになる私の口をロキの手が覆う。静かに、のジェスチャーをされ、彼に抱き締められるようにただ息を潜める。

 しかしどうして私の部屋に?
 もしかして物音を聞き付けて様子を見に来たのだろうか?

 ただ不可解なことに、彼らは一切声をかけてこなかった。様子がおかしいと思った私は少しだけ顔を出そうとするが、ロキに止められる。

 ーーここは大人しくいないふりをしろ、ということなのだろう。
 
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