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悪役令嬢、作戦を練る

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「どうしようロキ……そんなに残ってる時間も少ないのに学校に放り込まれるなんて……」

『ん? なぜそんなに悲観しているんだ。チャンスではないか』

 チャンス? 私は彼の意図が分からず聞き返す。

『ああそうだ。向こうには二人をよく知る人間も多いだろう。聞き込み調査に打ってつけだ』

「私がするの!? 」

『当たり前だろ、他に誰がするんだ』

「無理無理無理!!! 私なんてボロ出しちゃうよ。ロキが聞いた方が絶対上手くいくと思うんだけど」

『赤の他人の俺がエドワードやエミリアの話なんて聞き回ったら不審がられるだろ? それなら一応姉で婚約者であるお前の方が警戒心も抱かれにくい』

 確かに。  

「分かったよ……じゃあせめてロキも一緒に来てよ」

『無理だ。俺は俺でやることがある』

「そんなぁ、って何するの? 」

『それは帰って来てからのお楽しみだ』

 通信の向こうでまたあの悪戯っぽい笑みを浮かべてるんだろうなぁと容易に想像がつく。

 あぁそうそうとロキが付け加える。

『聞く相手は選べよ。間違っても二人と仲が良かったり、二人に好意を抱いている者には聞くんじゃないぞ』

「そんなん分かるわけないじゃない……」

『ここはおとめげーむとやらの世界で、ルートというものがあるんだろ? それならそのルートごとに悪役もいるんじゃないのか? 』

「そりゃいるけど」

 各攻略対象につき一人はお邪魔キャラがいたはず。

『悪役は皆往々にしてエミリアを嫌ってるはずだ。きっと面白い情報を提供してくれると思うけどな』

「なるほどね……分かったわ」

『それじゃあな、健闘を祈る』

 流石ロキだ。頭がキレる。他の悪役令嬢に聞き込み調査するなんて私じゃ思い付かなかった。

 私は通信機から耳を離し、一人考え込んだ。
 基本的にゲーム内で悪役同士の絡みはなかったはず。そのため彼女たちが私にどんな態度を取ってくるのかは想像することも出来ない。そもそもイリアは学生ではなく、エドワードルートでのみ出てくるキャラクターなので尚更分からない。

「まずは……話を聞いちゃいけない相手ね」
  
 私は情報を整理するために真っ白な紙に人物をまとめ始めた。

 エミリアに好意を抱く者……他の攻略対象のキャラは避けた方が良いだろう。

 具体的には
 エミリアの幼なじみ リュカ

 学園一の問題児 ルドガー=コールマン

 イケメン教師 ルイス=アルミルト

「ん、でもモブ男子生徒からもモテモテって設定だったな……」

 男子生徒全員×、と。

「このぐらいかな……んで、エドワードに好意を抱くのは」

 そこでペンの動きが止まった。
 学園中の女子生徒は大体エドワードが好きだったし彼のファンクラブすらあった。

「モブ女子生徒も駄目か……」

 そうすると本当に悪役にしか聞き込みをすることが出来ない。

 リュカは小さい頃からの幼なじみだったから特にライバルキャラはいなくて……。後のキャラは確か……。

 ルドガールートのライバル
 レベッカ

 ルイスルートのライバル
 ミラン

「ミランはおっとりした音楽教師って設定だったからあまり参考にならないかも……狙うのはレベッカね」

 レベッカ=タリスマン

 ルドガールートにおいて立ちはだかるお邪魔キャラであり、金髪ツインテールが特徴の美少女。
 ルドガーとは幼なじみであるが、彼からは気の強い妹のようにしか思われていない。そこでやきもきしているところをエミリアに全てかっさわられてしまうという話だ。

 性格は意地悪でヒステリック、というまあTHE 悪役といった様子だ。

 そんな人から情報なんて引き出せるのだろうか……?

 そもそも私はこのキャラクターが苦手だった。女生徒を味方につけてエミリアをいじめるその狡猾さは、イリアとはまた違ったタイプの悪役令嬢であったのだ。

 一抹の不安を胸に、私は明日の準備を始めたのだった。
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