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第45話 やっと戻れた
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「お、おいおい。急に急いでどうしたんだよ」
ぐーすか眠っているグレンを叩き起こした私は、彼を連れて慌てて町に引き返す。
私が番持ち……?
どうしよう、まったく思い当たる節がない。マザーが適当なこと言った可能性は十分にあるが確めざるを得ない。
「何でもない! とにかく家に帰るのよ! 」
「帰るって言ったってお前はその姿だし、俺は家なんてないぞ」
あ……忘れてた。
「そうじゃん……私今狼だ……」
そうでした、一先ず人間の姿に戻らないと話にならない。
「戻り方は分からないんだろ? じゃあ……」
グレンが何かを言いかけたとき。まるで魔法が溶けたかのように私の体が人間に戻っていく。
なんというタイミング……。
「いやありがとう。戻り方は分からないけど戻ったわ」
「……分かったから何か服を着てくれ! 」
おっと、そうだった今の私は全裸だった。
私はグレンが投げてきた上着を羽織ると、ははは……と力なく笑った。
◇◇◇
「で、戻れて良かったな。これで心置きなくご主人の元へ帰れるじゃないか」
「いや~……ご心配おかけしました」
人間の姿って寒いんだな。
久しぶりすぎてすっかり感覚を忘れていた。
「……俺はどうしたら良いんだろう」
「へ? 」
不意にグレンがぽつりと呟く。
「俺には家族も親戚も友達もいない。マザーに捨てられた俺は、どう生きていけば良いんだろうな」
「あら、うちに来れば良いじゃない」
は? というグレンの声が響き渡る。
「だーかーら! うちに来れば良いじゃない。アステルが狙われているのは分かってるんだから一人でも多く戦力が欲しい」
「……お前一人で十分では」
「確かにそうだけど、私に何があるか分からないじゃない。一人ではやっぱり限界があるわ」
意味不明、と呟くグレン。
「お前な、自分を狙った暗殺者のことを信じられると思うか? 」
「アステルはそんな器の狭い男じゃないわよ」
最悪私がグレンのことを監視も出来るしね~。一石二鳥とはまさにこのこと!
「ワケ分からんやつだな……」
「それ褒めてんの? ま、良いじゃん良いじゃん! このまま路上に放り出されるよりマシでしょ! 」
「まあそれは……確かに」
じゃあ決まりね、と私がウインク一つをすると、グレンが不器用な笑みを浮かべた。
「羨ましいよ、アステルってやつが」
「そう? まあ確かに金持ちそうではあるけど……」
彼もその生まれから結構苦労してきているのだ。一概には言えまい。
「そうじゃない。優秀で美しい番犬がいて良いな、って思っただけさ」
優秀で美しい番犬……。
「ん? それって……」
「おやすみ」
私の返事を聞かずに、横になって寝息をたて始めるグレン。
こいつも中々食えない男だ、と私は内心思っていたのである。
ぐーすか眠っているグレンを叩き起こした私は、彼を連れて慌てて町に引き返す。
私が番持ち……?
どうしよう、まったく思い当たる節がない。マザーが適当なこと言った可能性は十分にあるが確めざるを得ない。
「何でもない! とにかく家に帰るのよ! 」
「帰るって言ったってお前はその姿だし、俺は家なんてないぞ」
あ……忘れてた。
「そうじゃん……私今狼だ……」
そうでした、一先ず人間の姿に戻らないと話にならない。
「戻り方は分からないんだろ? じゃあ……」
グレンが何かを言いかけたとき。まるで魔法が溶けたかのように私の体が人間に戻っていく。
なんというタイミング……。
「いやありがとう。戻り方は分からないけど戻ったわ」
「……分かったから何か服を着てくれ! 」
おっと、そうだった今の私は全裸だった。
私はグレンが投げてきた上着を羽織ると、ははは……と力なく笑った。
◇◇◇
「で、戻れて良かったな。これで心置きなくご主人の元へ帰れるじゃないか」
「いや~……ご心配おかけしました」
人間の姿って寒いんだな。
久しぶりすぎてすっかり感覚を忘れていた。
「……俺はどうしたら良いんだろう」
「へ? 」
不意にグレンがぽつりと呟く。
「俺には家族も親戚も友達もいない。マザーに捨てられた俺は、どう生きていけば良いんだろうな」
「あら、うちに来れば良いじゃない」
は? というグレンの声が響き渡る。
「だーかーら! うちに来れば良いじゃない。アステルが狙われているのは分かってるんだから一人でも多く戦力が欲しい」
「……お前一人で十分では」
「確かにそうだけど、私に何があるか分からないじゃない。一人ではやっぱり限界があるわ」
意味不明、と呟くグレン。
「お前な、自分を狙った暗殺者のことを信じられると思うか? 」
「アステルはそんな器の狭い男じゃないわよ」
最悪私がグレンのことを監視も出来るしね~。一石二鳥とはまさにこのこと!
「ワケ分からんやつだな……」
「それ褒めてんの? ま、良いじゃん良いじゃん! このまま路上に放り出されるよりマシでしょ! 」
「まあそれは……確かに」
じゃあ決まりね、と私がウインク一つをすると、グレンが不器用な笑みを浮かべた。
「羨ましいよ、アステルってやつが」
「そう? まあ確かに金持ちそうではあるけど……」
彼もその生まれから結構苦労してきているのだ。一概には言えまい。
「そうじゃない。優秀で美しい番犬がいて良いな、って思っただけさ」
優秀で美しい番犬……。
「ん? それって……」
「おやすみ」
私の返事を聞かずに、横になって寝息をたて始めるグレン。
こいつも中々食えない男だ、と私は内心思っていたのである。
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