43 / 46
第43話 マザーとの対峙
しおりを挟む
「へえ……貴女が報告にあった獣人の娘か」
私の脅しにも屈しず、にやにやとした笑みを浮かべるセーラ。
むむむ……こいつ意外と肝が据わっている。
ただの悪役だと思っていたが、ちゃんとボスらしい風格を纏っている。
「やっぱりあんたがマザーだったのね、初めから臭いとは思ってたのよ」
「あらそう? なるべく気を付けてるつもりなんだけど、犬の鼻には勝てないわね」
本性を露にしたセーラがにたりと笑みを浮かべる。
追い詰められているような気配はなく、どことなく余裕を感じる。
「グレンには失望したわ。赤子のときからみっちり仕込んでやったのに失敗するなんて……」
「幼児虐待で訴えられるぞ」
ふふっと馬鹿にしたように鼻で笑うセーラ。
「幼児? あれは私の所有物よ。私のものを私がどう扱おうと勝手じゃない。それに貴女も奴隷なんでしょ、分かるわよね」
「私のご主人様はそんなことはしない。もうあんたと喋るのも飽きた。そろそろ教えてくれないか? あんたは一体誰に雇われているんだ」
「知ってどうするの? 依頼主を殺すのかしら? 」
私はふむ、と一呼吸置く。
「場合によってはそうなるかもね」
アステルの死亡ルート回避、そのためには手段は選ばない。
きっとそれが私の転生した理由なのだから。
「あら怖い。獰猛な番犬なのね」
「じゃ、さっさと教えなさい。早くしないと喉笛を噛み千切るわよ」
「……嫌だと言ったら? 」
は? そのときセーラが動いた。眠りこけているグレンを抱き抱えると、その首にナイフを押し当てる。
「グレン! 」
思わず私は叫ぶ。
しまった、反応が遅れてしまった。
「おっと動かないで。さもなければこの子の首が飛ぶわよ」
私としたことが……。人質なんて古典的な方法に引っ掛かるとは。
「随分この子と仲良くしてくれてたみたいじゃない? 一応母親として礼を言うわ」
「ぬけぬけと……」
何が母親だ。散々彼をいたぶっていたくせに。
むかむかとしたどす黒い感情が私のなかで渦巻く。
「じゃあそのまま動くんじゃないわよ。この子の命が惜しければね」
じりじりと後ろに下がるセーラ。かすかに火薬の臭いがする。
おそらくグレンを連れて逃走したあと家ごと私を焼くつもりだろう。
しかもこのままグレン共々逃がしても必ず彼は殺されてしまう。
どうする……?
どうすれば良い……?
私の頭の中で、色々な思考が張り巡らされた。
そうだ、と私はある一つの結論に辿り着いた。
私の脅しにも屈しず、にやにやとした笑みを浮かべるセーラ。
むむむ……こいつ意外と肝が据わっている。
ただの悪役だと思っていたが、ちゃんとボスらしい風格を纏っている。
「やっぱりあんたがマザーだったのね、初めから臭いとは思ってたのよ」
「あらそう? なるべく気を付けてるつもりなんだけど、犬の鼻には勝てないわね」
本性を露にしたセーラがにたりと笑みを浮かべる。
追い詰められているような気配はなく、どことなく余裕を感じる。
「グレンには失望したわ。赤子のときからみっちり仕込んでやったのに失敗するなんて……」
「幼児虐待で訴えられるぞ」
ふふっと馬鹿にしたように鼻で笑うセーラ。
「幼児? あれは私の所有物よ。私のものを私がどう扱おうと勝手じゃない。それに貴女も奴隷なんでしょ、分かるわよね」
「私のご主人様はそんなことはしない。もうあんたと喋るのも飽きた。そろそろ教えてくれないか? あんたは一体誰に雇われているんだ」
「知ってどうするの? 依頼主を殺すのかしら? 」
私はふむ、と一呼吸置く。
「場合によってはそうなるかもね」
アステルの死亡ルート回避、そのためには手段は選ばない。
きっとそれが私の転生した理由なのだから。
「あら怖い。獰猛な番犬なのね」
「じゃ、さっさと教えなさい。早くしないと喉笛を噛み千切るわよ」
「……嫌だと言ったら? 」
は? そのときセーラが動いた。眠りこけているグレンを抱き抱えると、その首にナイフを押し当てる。
「グレン! 」
思わず私は叫ぶ。
しまった、反応が遅れてしまった。
「おっと動かないで。さもなければこの子の首が飛ぶわよ」
私としたことが……。人質なんて古典的な方法に引っ掛かるとは。
「随分この子と仲良くしてくれてたみたいじゃない? 一応母親として礼を言うわ」
「ぬけぬけと……」
何が母親だ。散々彼をいたぶっていたくせに。
むかむかとしたどす黒い感情が私のなかで渦巻く。
「じゃあそのまま動くんじゃないわよ。この子の命が惜しければね」
じりじりと後ろに下がるセーラ。かすかに火薬の臭いがする。
おそらくグレンを連れて逃走したあと家ごと私を焼くつもりだろう。
しかもこのままグレン共々逃がしても必ず彼は殺されてしまう。
どうする……?
どうすれば良い……?
私の頭の中で、色々な思考が張り巡らされた。
そうだ、と私はある一つの結論に辿り着いた。
0
お気に入りに追加
2,471
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる