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第40話 グレンの悩み
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「匂いが段々濃くなっているな。ふむ、明日には会えそうだ」
一心不乱に走り回っていると、すっかり辺りは暗くなっていた。そろそろ休憩にしようか、と提案すると、賛成とグレンが声をあげる。
「じゃあここらで一息つこう」
グレンを地面におろし、丸くなる私。こういうとき獣の姿は便利だ。程よく暖かいし、快適だ。
「本当にマザーに会うのか? とても話が通じるような相手ではないと思うが」
「そんなんテキトーにやるわよ。別に私は喧嘩したいわけじゃないんだし」
そうか、と自信なさげに呟きグレン。何かを危惧しているようだがあまりずかずかと聞くのも悪いと思った。
「……大体何で俺を連れてきた? 道案内なら別にいらないじゃないか」
「まーね」
「じゃあなんで!? 」
「危ないからよ。またいつあの黒いやつが襲ってくるか分からないじゃない。貴方一人であいつらに勝てるとも思えないし」
「はぁ!? 」
アホっぽい声をあげるグレン。よっぽど私の答えが気に入らなかったのだろうか。
「じゃあなんだ、俺を守るために俺を連れてきたってことか!? 」
「まぁそうね。第一貴方行くところなさそうだったし」
乾いた笑いを浮かべるグレン。
「はは……暗殺者を守るなんて変なやつ……」
「そうかしら」
ぶっちゃけ贔屓目もある。ゲーム内では不幸だったグレンをせめて今のルートでは助けてあげたい、という気持ちがないわけではないのだ。
……ただ、ここからどんな展開になるのだろう、ということは私にも分からないのであった。
「もう寝なよ、明日早くここを発つよ」
「……俺は」
一度開きかけた口を閉じる彼。
「赤子のときに売られ、マザーの元で育てられた。育てられたと言っても暗殺者として、必要なことをひたすら叩き込まれたんだ」
ふむふむ、大体ゲームと同じだね。
「俺は人を殺すことしか知らない。そうすることでしか生きられなかったんだから……。だからいきなりこんなことになって……どうしたら良いのか分からない……」
「グレンはどうしたいのさ」
「俺は……」
そう言いかけた彼の瞳は、少し迷っているようだった。
「……分からない。俺はこれからどうすれば良いのか。何をするべきなのか」
「今、連れ回されるのは嫌?」
「嫌……ううん、嫌ではないのかもしれない」
そりゃ良かった。
「じゃあ良いや。まあ、やるべきことなんておいおい見つけていけば良いでしょ。焦ったって良いことないよ」
大体! と私はグレンに詰め寄る。
「グレンはまだ若いんだから悩む必要なし! 」
お前とそんなに年変わらないだろ、とグレンは言ったが、その口許は僅かに笑っていた。
一心不乱に走り回っていると、すっかり辺りは暗くなっていた。そろそろ休憩にしようか、と提案すると、賛成とグレンが声をあげる。
「じゃあここらで一息つこう」
グレンを地面におろし、丸くなる私。こういうとき獣の姿は便利だ。程よく暖かいし、快適だ。
「本当にマザーに会うのか? とても話が通じるような相手ではないと思うが」
「そんなんテキトーにやるわよ。別に私は喧嘩したいわけじゃないんだし」
そうか、と自信なさげに呟きグレン。何かを危惧しているようだがあまりずかずかと聞くのも悪いと思った。
「……大体何で俺を連れてきた? 道案内なら別にいらないじゃないか」
「まーね」
「じゃあなんで!? 」
「危ないからよ。またいつあの黒いやつが襲ってくるか分からないじゃない。貴方一人であいつらに勝てるとも思えないし」
「はぁ!? 」
アホっぽい声をあげるグレン。よっぽど私の答えが気に入らなかったのだろうか。
「じゃあなんだ、俺を守るために俺を連れてきたってことか!? 」
「まぁそうね。第一貴方行くところなさそうだったし」
乾いた笑いを浮かべるグレン。
「はは……暗殺者を守るなんて変なやつ……」
「そうかしら」
ぶっちゃけ贔屓目もある。ゲーム内では不幸だったグレンをせめて今のルートでは助けてあげたい、という気持ちがないわけではないのだ。
……ただ、ここからどんな展開になるのだろう、ということは私にも分からないのであった。
「もう寝なよ、明日早くここを発つよ」
「……俺は」
一度開きかけた口を閉じる彼。
「赤子のときに売られ、マザーの元で育てられた。育てられたと言っても暗殺者として、必要なことをひたすら叩き込まれたんだ」
ふむふむ、大体ゲームと同じだね。
「俺は人を殺すことしか知らない。そうすることでしか生きられなかったんだから……。だからいきなりこんなことになって……どうしたら良いのか分からない……」
「グレンはどうしたいのさ」
「俺は……」
そう言いかけた彼の瞳は、少し迷っているようだった。
「……分からない。俺はこれからどうすれば良いのか。何をするべきなのか」
「今、連れ回されるのは嫌?」
「嫌……ううん、嫌ではないのかもしれない」
そりゃ良かった。
「じゃあ良いや。まあ、やるべきことなんておいおい見つけていけば良いでしょ。焦ったって良いことないよ」
大体! と私はグレンに詰め寄る。
「グレンはまだ若いんだから悩む必要なし! 」
お前とそんなに年変わらないだろ、とグレンは言ったが、その口許は僅かに笑っていた。
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