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第38話 狼は自分勝手なのです
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グレンの案内で、一番偉くて一番悪いやつの元に行ってみた私だが、そこには人っこ一人いないガランとした場所だった。
瓦礫のようなものが積み重なり、ゴミが散乱していて、とても誰かが住めるような場所ではない。
「誰もいないけど……」
「あ、あれっ?! 嘘、おかしいな……」
グレンの慌てぶりを見ると、彼にとってもこの状況は予想外のようだ。
「ふむ、でも最近まで人がいたような匂いがする」
白粉と血が混ざったような奇妙な香り。普通の人間からは到底しないような臭いだ。
「嘘……まさか……俺……」
ガクガクと震えるグレン。そして腰から崩れ落ちた。
「ど、どうしたの」
「捨てられたんだ……俺はもう……マザーから」
「マザー? 」
「お前が探してるボスさ。俺たちは彼女の指示のもと動いている。マザーの指示は絶対だ。失敗は許されない」
へえ、ボスは女の人なんだ。
しっかしそのマザーをグレンは酷く恐れているように見える。
「もう終わりだ……任務に失敗した俺を見限ったんだ」
「終わり? そんな大袈裟な……」
大袈裟なもんか! とグレンが吐き捨てる。
「いずれ兄弟たちが俺を殺しに来る。口を塞ぐためにな」
「ふーん、ま、確かに誰か来たみたい」
人数は三人ぐらいか?
ビリビリとした殺意を感じる。
「正解だグレン。マザーの命令だ、お前を殺せだと」
じめっとした声。物陰からまーた黒づくめたちの姿が現れた。
私から逃げたくせに、みすみす姿を現すとは。
「……そんな、許してください。俺はまだ! まだやれます! 」
「マザーは仰っていた。二度目はない、と」
「悪く思うなグレン。これでもマザーはお前を気に入っていたんだぞ」
別の黒づくめが言う。
「そんな……俺は……」
ボロボロ涙を溢してうずくまるグレン。さっきまでのツンツンした態度とは一変してまるで子どもみたいだ。
「じゃあな、いずれ地獄で」
グレンに飛びかかる三人の影。私はとっさに彼らの間に体を滑り込ませると、腕を大きく振り上げる。
ほとばしる鮮血。
男の呻き声。
「き、貴様! なぜ邪魔をする。そいつはお前の主人を狙った暗殺者だぞ」
「別に。ただ私は道案内が欲しいだけ」
グルルルと唸って見せる私。全身の毛が逆立つのが分かった。
「お前たちのルールとやらは知ったこっちゃないけど、私には私のやることがある。そのためにはグレンが必要なんでね」
彼らの悲鳴と同時に私は彼らに飛びかかった。
殺しはしない。ただ撤退させるだけだ。
……当分動けないよう骨ぐらいは折っとくか。
そっからはもう一方的な蹂躙だったので割愛させて頂く。
ただ全て終わった後、返り血で染まった私を見てグレンが目を丸くしてこう言った。
「だいぶイカれてるな……お前」
「そう? 褒めても何も出ないよ」
褒めてねーから! とグレンが苦笑を浮かべていた。
……こうして私はグレンという仲間を得た。
瓦礫のようなものが積み重なり、ゴミが散乱していて、とても誰かが住めるような場所ではない。
「誰もいないけど……」
「あ、あれっ?! 嘘、おかしいな……」
グレンの慌てぶりを見ると、彼にとってもこの状況は予想外のようだ。
「ふむ、でも最近まで人がいたような匂いがする」
白粉と血が混ざったような奇妙な香り。普通の人間からは到底しないような臭いだ。
「嘘……まさか……俺……」
ガクガクと震えるグレン。そして腰から崩れ落ちた。
「ど、どうしたの」
「捨てられたんだ……俺はもう……マザーから」
「マザー? 」
「お前が探してるボスさ。俺たちは彼女の指示のもと動いている。マザーの指示は絶対だ。失敗は許されない」
へえ、ボスは女の人なんだ。
しっかしそのマザーをグレンは酷く恐れているように見える。
「もう終わりだ……任務に失敗した俺を見限ったんだ」
「終わり? そんな大袈裟な……」
大袈裟なもんか! とグレンが吐き捨てる。
「いずれ兄弟たちが俺を殺しに来る。口を塞ぐためにな」
「ふーん、ま、確かに誰か来たみたい」
人数は三人ぐらいか?
ビリビリとした殺意を感じる。
「正解だグレン。マザーの命令だ、お前を殺せだと」
じめっとした声。物陰からまーた黒づくめたちの姿が現れた。
私から逃げたくせに、みすみす姿を現すとは。
「……そんな、許してください。俺はまだ! まだやれます! 」
「マザーは仰っていた。二度目はない、と」
「悪く思うなグレン。これでもマザーはお前を気に入っていたんだぞ」
別の黒づくめが言う。
「そんな……俺は……」
ボロボロ涙を溢してうずくまるグレン。さっきまでのツンツンした態度とは一変してまるで子どもみたいだ。
「じゃあな、いずれ地獄で」
グレンに飛びかかる三人の影。私はとっさに彼らの間に体を滑り込ませると、腕を大きく振り上げる。
ほとばしる鮮血。
男の呻き声。
「き、貴様! なぜ邪魔をする。そいつはお前の主人を狙った暗殺者だぞ」
「別に。ただ私は道案内が欲しいだけ」
グルルルと唸って見せる私。全身の毛が逆立つのが分かった。
「お前たちのルールとやらは知ったこっちゃないけど、私には私のやることがある。そのためにはグレンが必要なんでね」
彼らの悲鳴と同時に私は彼らに飛びかかった。
殺しはしない。ただ撤退させるだけだ。
……当分動けないよう骨ぐらいは折っとくか。
そっからはもう一方的な蹂躙だったので割愛させて頂く。
ただ全て終わった後、返り血で染まった私を見てグレンが目を丸くしてこう言った。
「だいぶイカれてるな……お前」
「そう? 褒めても何も出ないよ」
褒めてねーから! とグレンが苦笑を浮かべていた。
……こうして私はグレンという仲間を得た。
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