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第37話 暗殺者グレン
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私が取っ捕まえたその暗殺者はグレンという名前らしい。
もう諦めたのか、渋々彼が仮面を取る。
女の子と見間違う端正な顔立ちに、灰色がかった短髪。
んん……? この顔……どこかで見たような。
そうだ、こいつも確か攻略対象。それも隠しキャラだ。
~~以外、簡単なあらすじ
幼いときに親に売られ、暗殺者として育てられてきた彼は、初めてリィンの優しさに触れて人の温もりというものを知る。
お互いに惹かれ合う二人だが、結ばれるためには様々な難関が待ち受けていて……というあらすじだ。
その悲恋ぶりから、隠しと言えど結構人気の高いキャラクターだ。
ルートによってはリィンを庇って死んでしまうのだが、その不憫さも人気の秘密である。
まあこの世界でのシュタインルートに行ってるらしいリィンには関係のないことではあるが……。
それにただのモブ奴隷である私には何一つ接点はない。
しかしまさか彼とここで出会うことになるとは、私も驚きだ。
「何だよ……ジロジロ見て」
「いや別に」
「後さ、連れていくことは約束する。だから人間の姿に戻ってくれないか? そんな姿じゃ目立って仕方ない」
それもそうだ。
ちょっと待ってね……
…………
「……あれっ? 」
「どうした? 」
「……戻らない。へへへ……」
はぁ? とでも言いたげな表情をするグレン。
そんな顔されても……私も前のときどうやって戻ったのかさっぱり覚えていないのだ。
「おいおい、どうすんだよ。そんなんじゃ目立って仕方ないぜ」
「グレンの飼い犬ってことで誤魔化せ……」
「る訳ないだろ! 」
ごもっとも。
うん、まあこうなっては仕方ないな。
私はグレンの体を器用に口で引っ張りあげる。ああ、もちろん牙は立ててないよ。
「ああああ!? 何すんだ? 」
そして彼を私の背中に乗せる。
「こうなっては仕方ない。私が乗せてくから道案内よろしく! 」
「はあああああ!?!? お前馬鹿か? 俺なんかに背向けたら後ろから首をかっ切られるぞ」
「大丈夫大丈夫、生半可な攻撃じゃ私は傷付けられないから」
「そーかい」
ぶすっとした表情のグレンくん。
「じゃ、行くよー!!! まずどっち!? 」
「この路地をずっと真っ直ぐだ! ……ってうわああ!!! 」
私は勢いよく走り出す。全力の私のスピードには誰も着いてこれないだろう。
グレンが私の毛並みをぐっと掴む感覚がした。
元に戻れないんじゃアステルに合わせる顔がない。不安の芽は花開く前に私が摘んでおこう。
"彼"が安心して生活を送れるように。
そのためなら、私はこの牙でこの爪で敵を葬ることを厭わない。
例え、血で汚れたとしても。
もう諦めたのか、渋々彼が仮面を取る。
女の子と見間違う端正な顔立ちに、灰色がかった短髪。
んん……? この顔……どこかで見たような。
そうだ、こいつも確か攻略対象。それも隠しキャラだ。
~~以外、簡単なあらすじ
幼いときに親に売られ、暗殺者として育てられてきた彼は、初めてリィンの優しさに触れて人の温もりというものを知る。
お互いに惹かれ合う二人だが、結ばれるためには様々な難関が待ち受けていて……というあらすじだ。
その悲恋ぶりから、隠しと言えど結構人気の高いキャラクターだ。
ルートによってはリィンを庇って死んでしまうのだが、その不憫さも人気の秘密である。
まあこの世界でのシュタインルートに行ってるらしいリィンには関係のないことではあるが……。
それにただのモブ奴隷である私には何一つ接点はない。
しかしまさか彼とここで出会うことになるとは、私も驚きだ。
「何だよ……ジロジロ見て」
「いや別に」
「後さ、連れていくことは約束する。だから人間の姿に戻ってくれないか? そんな姿じゃ目立って仕方ない」
それもそうだ。
ちょっと待ってね……
…………
「……あれっ? 」
「どうした? 」
「……戻らない。へへへ……」
はぁ? とでも言いたげな表情をするグレン。
そんな顔されても……私も前のときどうやって戻ったのかさっぱり覚えていないのだ。
「おいおい、どうすんだよ。そんなんじゃ目立って仕方ないぜ」
「グレンの飼い犬ってことで誤魔化せ……」
「る訳ないだろ! 」
ごもっとも。
うん、まあこうなっては仕方ないな。
私はグレンの体を器用に口で引っ張りあげる。ああ、もちろん牙は立ててないよ。
「ああああ!? 何すんだ? 」
そして彼を私の背中に乗せる。
「こうなっては仕方ない。私が乗せてくから道案内よろしく! 」
「はあああああ!?!? お前馬鹿か? 俺なんかに背向けたら後ろから首をかっ切られるぞ」
「大丈夫大丈夫、生半可な攻撃じゃ私は傷付けられないから」
「そーかい」
ぶすっとした表情のグレンくん。
「じゃ、行くよー!!! まずどっち!? 」
「この路地をずっと真っ直ぐだ! ……ってうわああ!!! 」
私は勢いよく走り出す。全力の私のスピードには誰も着いてこれないだろう。
グレンが私の毛並みをぐっと掴む感覚がした。
元に戻れないんじゃアステルに合わせる顔がない。不安の芽は花開く前に私が摘んでおこう。
"彼"が安心して生活を送れるように。
そのためなら、私はこの牙でこの爪で敵を葬ることを厭わない。
例え、血で汚れたとしても。
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