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第36話 秘めたる力
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「じゃあな、ワンちゃん」
……アステルにも言ったことのない秘密が私にはある。
いや、私と言うより獣人の秘密なのかもしれない。
ーー獣人は感情が極限まで高まると、獣の姿になることが出来る。
私がそれに気が付いたのは洗濯物を干していたときだ。風に飛ばされてアステルの服を谷に落っことしたとき、取りに行こうと思わず飛び出した。
まずい、これは落ちる。そう覚悟を決めた瞬間
そのとき、私は狼の姿になると同時に比べ物にならないぐらいの身体能力を手に入れていたのだ。
ああ、もちろん直ぐに人間の姿に戻ったけれど、あの体験は忘れられないものであった。
生きるんだ、アステルを守るために。
体が熱い。全身に熱い血が駆け巡るのを感じる。
私の爪、牙がどんどん大きくなっていくのを感じる。
「な、なんだ!? 」
「この女……」
慌てふためく黒づくめたち。
そして彼らの目の前には一匹の大狼の姿があった。
白銀の毛並みに金色の瞳。
私のもう一つの姿、とでも言おうか。
私は一声吠えると、彼らに向かって飛びかかった。
私の鋭い牙は彼らの柔らかな服など易々と引き裂く。
「ひぃっ……!! 化け物……! 」
No.2が放った銃弾がゆっくり見える。私はそれを尾で弾き返した。
嘘だろ……とでも言いたげな表情で呆然とするNo.2はまともにそれを食らった。
「に、逃げろ!! 勝ち目はない!! 」
誰かがそう叫んだ。
私は心のなかで呟く、逃がすわけがないだろう。
ただ私は別に殺戮をしたいわけではない。ただアステルたちを狙った親玉を知りたいだけだ。
私は逃げ遅れたらしいNo.2を押さえつける。非情にも他の仲間たちはとっくに逃げ出したようだ。
「依頼者は誰だ? 教えるなら命だけは助けてやる」
「教える……! 教えるから……命だけは助けてくれ……! 」
「じゃあさっさと教えろ」
「結論から言うと俺たちも知らないんだ……! ただアステル王子を殺せ、とボスから命じられているだけで……! 」
「本当? 」
少しだけNo.2に加える力を強める。ミシミシと嫌な音が聞こえる。
「本当だ!! それならボスに直接聞いてくれ……!! 」
なるほど
「ふむ、それもそうだな。じゃあそのボスとやらの元へ私を案内してくれ」
仮面越しでもNo.2がポカンとしているのが分かった。
別に私は冗談で言ってるわけじゃないぞ。やはり親玉に聞くのが一番早い、と気が付いただけだ。
「……分かったよ」
もう他に道はないと思ったのだろう、諦めたようにNo.2が声を絞り出した。
……アステルにも言ったことのない秘密が私にはある。
いや、私と言うより獣人の秘密なのかもしれない。
ーー獣人は感情が極限まで高まると、獣の姿になることが出来る。
私がそれに気が付いたのは洗濯物を干していたときだ。風に飛ばされてアステルの服を谷に落っことしたとき、取りに行こうと思わず飛び出した。
まずい、これは落ちる。そう覚悟を決めた瞬間
そのとき、私は狼の姿になると同時に比べ物にならないぐらいの身体能力を手に入れていたのだ。
ああ、もちろん直ぐに人間の姿に戻ったけれど、あの体験は忘れられないものであった。
生きるんだ、アステルを守るために。
体が熱い。全身に熱い血が駆け巡るのを感じる。
私の爪、牙がどんどん大きくなっていくのを感じる。
「な、なんだ!? 」
「この女……」
慌てふためく黒づくめたち。
そして彼らの目の前には一匹の大狼の姿があった。
白銀の毛並みに金色の瞳。
私のもう一つの姿、とでも言おうか。
私は一声吠えると、彼らに向かって飛びかかった。
私の鋭い牙は彼らの柔らかな服など易々と引き裂く。
「ひぃっ……!! 化け物……! 」
No.2が放った銃弾がゆっくり見える。私はそれを尾で弾き返した。
嘘だろ……とでも言いたげな表情で呆然とするNo.2はまともにそれを食らった。
「に、逃げろ!! 勝ち目はない!! 」
誰かがそう叫んだ。
私は心のなかで呟く、逃がすわけがないだろう。
ただ私は別に殺戮をしたいわけではない。ただアステルたちを狙った親玉を知りたいだけだ。
私は逃げ遅れたらしいNo.2を押さえつける。非情にも他の仲間たちはとっくに逃げ出したようだ。
「依頼者は誰だ? 教えるなら命だけは助けてやる」
「教える……! 教えるから……命だけは助けてくれ……! 」
「じゃあさっさと教えろ」
「結論から言うと俺たちも知らないんだ……! ただアステル王子を殺せ、とボスから命じられているだけで……! 」
「本当? 」
少しだけNo.2に加える力を強める。ミシミシと嫌な音が聞こえる。
「本当だ!! それならボスに直接聞いてくれ……!! 」
なるほど
「ふむ、それもそうだな。じゃあそのボスとやらの元へ私を案内してくれ」
仮面越しでもNo.2がポカンとしているのが分かった。
別に私は冗談で言ってるわけじゃないぞ。やはり親玉に聞くのが一番早い、と気が付いただけだ。
「……分かったよ」
もう他に道はないと思ったのだろう、諦めたようにNo.2が声を絞り出した。
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