転生したけどモブ奴隷だったので、悪役王子を更生させようと思います

寿司

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第35話 大ピンチ(かもしれない)

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 路地裏に一歩足を進めると、なるほど空気がひんやりと冷たい。
 賑やかな表通りとは違って、人はいなく、ぞっとるぐらい寂しい。

 だが、確かに奴はこの辺りにいる。

 しばらくそうして走り回っていると、少し開けた場所に出た。

 ゴミだらけで、まるで山のように積み重なっている。
 嫌な臭いが鼻をつく。まずいな、やつの臭いを逃してしまいそうだ。

 そのときだった

 ゴミの山の影から何者かが飛び出した。咄嗟に私は身を捻り、その攻撃を避ける。

「ちっ」

 そいつが舌打ちをした。

「あら、あんまりなご挨拶じゃない」

「……黙れ、ノコノコこんなとこまで追ってくるなんて、脳ミソ足りてないんじゃないか? 」

 おーおー、あんまりな言われようだ。

「ご心配なく、私は怪我一つしませんから」

 私の一言でキレたらしい黒づくめが、バッと飛びかかってきた。
 怒りに任せた攻撃ほど避けやすいものはない。

 私は彼の鳩尾辺りに蹴りを食らわす。ごほっと彼は悶絶し、しばらくその場でぴくぴくと痙攣していた。

「……うそ、だろ、早い」

「獣人を舐めすぎだよ、お兄ちゃん」

 伊達に王子さまの護衛をやっていない。あ、護衛なんてやったことないか。

 私はグイとそいつの襟を持って引っ張りあげる。

「そんじゃ教えて貰いましょうか。貴方の狙いは何? なぜアステルたちを狙ったの? 」

「言うわけないだろ」

 ふむ、そう来たか。ま、だよね。

「じゃ、質問を変えるね」

 私は鋭い爪を剥き出しにすると、ひたりと彼の首筋に押し付ける。

「教えなさい、さもないとかっきるわよ。言っとくけど私はアステルほど優しくないの」

「ひっ……」

 わずかにそいつの顔色が変わった。
うんうん、やっぱり脅しは効果抜群だな。

 しかし

「なんちゃって、教えると思うか? 」

「は? 」

 そのとき、私の足を銃弾が掠めた。 チリチリとした痛みが走り、私は思わず倒れ込む。

「何やってるんだNo.5。こんな犬と遊んでいるな」

 顔をあげるとそこには何人もの黒づくめ。あー、やっぱり他に仲間がいたのか。

「すまない、油断した」

 No.5と呼ばれたのがアステルたちを襲ったやつだ。

「良いか? 王位継承式までにアステルを殺せ。それが任務だ」

「分かってるよ、No.2」

 No.2というのが私に銃を撃った奴らしい。むむむ、許せぬ。

「そんで、この番犬はどうする? 」

「殺せ。所詮ただの奴隷だ。誰も分かるまい」

 了解、とNo.5が答え、私に向かって銃を突き付けた。

 あーあ、これで私の今世も終わりか。前世よりは良い人生だったかな。

 ……なんちゃって

 獣人の秘密、特別に見せてあげる
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