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第34話 襲撃者を追え!
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「アステル様! ロゼッタ様! 」
「アステル! 」
弾かれたように現場へと向かう私とヴァイス。
そしてそこには、黒い仮面を被った怪しい人物と、ロゼッタを庇うようにして彼女を背に隠すアステルの姿。
周りの人々を刃物を持ったその黒い仮面に驚き、逃げ惑っている。
日中の町に現れた全身真っ黒な人物。
あまりにも異様な光景だ。
「な、な、な、何者だ! 」
震える声でその仮面の人に喋りかけるアステル。
しかしその人は言葉を発しない。
ああ、あのアステルがここまで成長するなんて……奴隷冥利に尽きる。って、今はそんな感慨に浸っている場合ではない。
まるで返事の代わりとでも言うのか、アステルに向かってそいつは飛びかかった。
ロゼッタのきゃあ! という甲高い声が嫌に耳に響いた。
なるほど、早い。相当腕の立つ暗殺者だと見える。
でも
「私には遅い」
とっさにアステルの前に出た私はそいつののっろーい刃を勢いよく蹴り飛ばした。
丸腰になったそいつは何が起きたのか分からないといった様子で私と自分の手の中を交互に見比べる。
唖然とする暗殺者さんだったが流石はプロ、直ぐに我に帰ると、分が悪いと思ったのか一目散に逃げ出した。
「ヴァイス、二人をよろしく! 私はあいつを追う! 」
「気を付けろよ! 」
ヴァイスが返事をするより先に、私は奴を追いかけ始めていた。
「……ステラ!! 」
ただ、アステルの声で私の動きはぴたりと止まる。
「何? 」
「……無理はしないでくれ」
私はにっこり笑顔を浮かべると、アステルに向かってピースサインを送った。
人の賑わう町だから確かに身は隠しやすいかもしれない。だが私の嗅覚は犬並。そう簡単に私の追跡は振り切れない。
人の波を掻き分けてただ一目散にそいつを追いかける私。
自慢ではないが私の足の早さは普通じゃない。
あっという間に私たちの距離は縮まっていく。
ただ、そいつは不可解な動きをした。
「……路地裏? 」
路地裏の奥へ奥へと進んでいく襲撃者。これは罠だろうか……一人で行ったらたくさんの敵が待ち構えていてジエンドという訳だろうか。
「うーん……でもなぁ」
今引き返したらおそらく逃がすことになるだろう。
少しでもアステルたちを襲撃した理由を探っておきたい気はする。
「まぁ、考えていても仕方ないか! 」
私はアステルの番犬。
彼を守るためなら自分の命など惜しくはない。
そう覚悟を決めた私は、路地裏へと足を進めたのだった。
例えたくさん敵がいたとしても、今の私なら何とか出来るだろう。多分、いやきっと。
なぜなら私は帰らなければいけないのだから。
「アステル! 」
弾かれたように現場へと向かう私とヴァイス。
そしてそこには、黒い仮面を被った怪しい人物と、ロゼッタを庇うようにして彼女を背に隠すアステルの姿。
周りの人々を刃物を持ったその黒い仮面に驚き、逃げ惑っている。
日中の町に現れた全身真っ黒な人物。
あまりにも異様な光景だ。
「な、な、な、何者だ! 」
震える声でその仮面の人に喋りかけるアステル。
しかしその人は言葉を発しない。
ああ、あのアステルがここまで成長するなんて……奴隷冥利に尽きる。って、今はそんな感慨に浸っている場合ではない。
まるで返事の代わりとでも言うのか、アステルに向かってそいつは飛びかかった。
ロゼッタのきゃあ! という甲高い声が嫌に耳に響いた。
なるほど、早い。相当腕の立つ暗殺者だと見える。
でも
「私には遅い」
とっさにアステルの前に出た私はそいつののっろーい刃を勢いよく蹴り飛ばした。
丸腰になったそいつは何が起きたのか分からないといった様子で私と自分の手の中を交互に見比べる。
唖然とする暗殺者さんだったが流石はプロ、直ぐに我に帰ると、分が悪いと思ったのか一目散に逃げ出した。
「ヴァイス、二人をよろしく! 私はあいつを追う! 」
「気を付けろよ! 」
ヴァイスが返事をするより先に、私は奴を追いかけ始めていた。
「……ステラ!! 」
ただ、アステルの声で私の動きはぴたりと止まる。
「何? 」
「……無理はしないでくれ」
私はにっこり笑顔を浮かべると、アステルに向かってピースサインを送った。
人の賑わう町だから確かに身は隠しやすいかもしれない。だが私の嗅覚は犬並。そう簡単に私の追跡は振り切れない。
人の波を掻き分けてただ一目散にそいつを追いかける私。
自慢ではないが私の足の早さは普通じゃない。
あっという間に私たちの距離は縮まっていく。
ただ、そいつは不可解な動きをした。
「……路地裏? 」
路地裏の奥へ奥へと進んでいく襲撃者。これは罠だろうか……一人で行ったらたくさんの敵が待ち構えていてジエンドという訳だろうか。
「うーん……でもなぁ」
今引き返したらおそらく逃がすことになるだろう。
少しでもアステルたちを襲撃した理由を探っておきたい気はする。
「まぁ、考えていても仕方ないか! 」
私はアステルの番犬。
彼を守るためなら自分の命など惜しくはない。
そう覚悟を決めた私は、路地裏へと足を進めたのだった。
例えたくさん敵がいたとしても、今の私なら何とか出来るだろう。多分、いやきっと。
なぜなら私は帰らなければいけないのだから。
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