転生したけどモブ奴隷だったので、悪役王子を更生させようと思います

寿司

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第31話 悪役令嬢登場

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 事のあらましをヴァイスに報告しなければならない。
 しかしこういうときに限って彼は家に現れないのだ。なんともタイミングが悪いというか……。

「ではひとまず、返事は保留ということでよろしいですね? 」

「ああ。こんな話、直ぐには決められない」

 うんまあ妥当だろうな、と私も内心で納得する。

 そのとき、玄関の呼び鈴がちりんと鳴った。あのヴァイスが正面から入ってくるなんて珍しい、と思いつつも対応しにいく私。

「はーい」

 そしてそこにいたのは……。

「ご機嫌よう、ここがアステル様のご自宅でよろしくて? 」

 金色の髪をツインテールに束ね、気の強そうなつり目の美少女。そして後ろには何人もの従者が控えている。

「え……っと? 」

 この顔……どこかで見たような。

「あっ! ロゼッタ=ミストリウス! 」

 ロゼッタ=ミストリウスとは、これまたゲームに出てくる本物の悪役令嬢だ。
 シュタインの許嫁だったが彼はリィンに恋をし、その嫉妬からリィンをいじめてしまう。
 そしてその悪事がバレて婚約は破棄され、それ以降特に登場はしないキャラクターだ。

「あら、どうして私の名前を……? 」

「いえ、たまたま街で名前を聞いたものですから……! 美しいご令嬢がいると! 」

「あら、そうなの」

 気分をよくしたらしいロゼッタがふふっと笑う。

 しかしなぜロゼッタがここに!? 彼女はアステルと接点はなかったはずだ。

「どうしたステラ……」

 私たちを話し声を聞き付けたらしいアステルが顔を出した。
 するとロゼッタは私を押し退けると、アステルに抱き着く。

「会いたかったですわ! アステル様!! 」

「は!? 」
 
 私とアステルの声が綺麗に重なった。

◇◇◇

「えーっと、つまりロゼッタ様がアステル様の婚約者である、と」

「そういうことになりますわね。今日は挨拶に伺いましたの」

 優雅に持参した紅茶を嗜むロゼッタ。

「え、そんな、俺聞いてない! 」

「あらそうでしたの? でも時期が少し早まっただけですわ」

 にっこり笑顔を崩さないロゼッタ。だが彼女の仮面に騙されてはいけない。可愛い顔して裏ではリィンをいじめぬいた悪役令嬢なのだ。

「ロゼッタ様はシュタイン様の婚約者だったような……」

 すると途端にロゼッタの顔色が変わる。
 むむ? これは何かしら事情があるな?

「ど、奴隷風情には関係のないことですわ」

「兄さん? 兄さんと何か関係があるのか? 」

 さすがのアステルもこの言葉は聞き逃せなかったようだ。

「え、あ、何にもないですわよ。私はアステル様一筋、ですわ」

「……」

 流れる沈黙。
 耐えられなくなった私がこう呟く。

「リィン」

「その女の名前は出さないで下さる!? 」

 声をあげたときにはもう遅い。
 思い切り墓穴を掘ったロゼッタはしまったという顔で、私たちの顔を交互に見ていた。
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