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第29話 予想の斜め上
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日は流れてろくに対策方法も思いつかないまま当日を迎えてしまった。
「やあ、ようこそ」
「や、やあ」
ぎこちない笑顔を浮かべるアステルとは対照的に爽やかな笑顔で迎えてくれるシュタイン。
ふむ、兄弟とはいっても性格は違うんだな。と当たり前のことで感心する私。
「ふふ、そう堅くならないで良いのに。といっても仕方ないか、会うのは一体何年ぶりかな」
「へへへ……」
もうアステルったら緊張し過ぎて良く分からないこと言ってるし……。
「いや~それにしても男前になったね。最後に会った時はもっとこう……」
言葉を必死に選んでくれているのがよく分かる。
そしてシュタインがちらりと私の方を見た。
「これも君のお陰かな? 」
「とんでもない。全てアステル様の……」
アステルを立てようとそう言いかけたとき、彼自身が口を挟んだ。
「違います! 全部ステラのお陰で! 」
まったく余計なことは言わなくて良いのに……。
するとシュタインは心底楽しそうにクスクスと笑いだした。
「本当に仲が良いんだね。二人は」
「ええ、良くして下さっていますわ」
「興味深いな。さあどうぞ、座ってください」
こういうとき、奴隷は床に座らなければいけない。しかし、ぐいとシュタインに腕を掴まれた。
「ああ、ステラさんはこちらに」
そして案内されたのはアステルの隣。まさか奴隷である私が王族である二人と同じテーブルにつかされるとは……。
シュタインというのも中々変わり者なのかもしれない。
テーブルには高そうなお茶菓子や紅茶がずらりと並んでいる。
どれもこれも美味しそうなものばかりだが、緊張していて喉を通りそうにない。
するとシュタインから話を切り出した。
「アステルは薬学に詳しいと聞いたんだが……」
「いやいやいや、とんでもないです。ただ知識として知っているだけで」
「そんなに謙遜しなくても良いだろう。アステルの薬の噂は度々聞くぞ。なにせ小さな女の子を救ったとか」
「いや~……」
褒められてないのかきょどりまくるアステル。目をキョロキョロさせてシュタインを真っすぐに見られないようだ。
「その素晴らしい薬学の知識はどこで? 」
「母が……こういう分野に詳しくて……」
「なるほど、立派なお母様なんだな。僕は恥ずかしながらこの手の知識は薄くてね、良ければ色々話を聞かせて欲しい」
シュタインはキラキラした瞳でアステルを見つめている。
アステルはその視線に驚きながらも、ぽつりぽつりと話始めた。
そしてしばらく、兄弟の勉強トークが始まったのである。
私が眠たくなってしまったのは内緒だ。
しかしこうしてみるとちゃんと兄弟にしか見えないな。と私は心の中で呟いたのであった。
◇◇◇
二人が話込んでいる内にすっかり日も暮れて、もう良い時間だ。
私は半分眠っていたようで、何だか頭がぽやーんとする。
「そろそろ日も暮れるな。今日は来てくれてありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございます……兄さん」
兄さんと呼ばれたシュタインは嬉しそうに頬を緩ませていた。
「……今日君たちを呼んだのは話をしてみたかったというのもある。だがもう一つ話したいことがあったんだ」
「はい? 」
「アステル、王位を継承する気はないか? 」
「へ? 」
「え? 」
思わず変な声をあげる私とアステル。
今、この人なんと言った……?
「驚かせてしまったようですまないな。だが僕は本気だ、二人でこの国の王となり、国を守っていかないか? 」
「えーっとつまり……? 」
「僕はずっと一人の人間が王となり、この国を守るという体制には無理があると思っていた。しかし僕たち二人が手を取ればどうだろう? 互いに足りない部分を補えるのではないかと思っているんだ」
兄弟二人とも王様になるってこと!?
どうしようこんな展開ゲームにはなかったんだけど!?
「勿論すぐに返事をくれとは言わない。だが、考えていて欲しい。それと……」
そしてシュタインは一枚の写真をアステルに取りだした。
「アステルももう良い年齢だ。そろそろ結婚も視野に入れなきゃいけないな」
「は!? 」
「その女性は家柄も容姿も申し分ない女性だ。一度会ってみると良い」
壊れた人形みたいに私とシュタインの顔を交互に見比べるアステル。
私を見られても困る! だって今の流れは、この私ですら予想していなかったのだから。
「やあ、ようこそ」
「や、やあ」
ぎこちない笑顔を浮かべるアステルとは対照的に爽やかな笑顔で迎えてくれるシュタイン。
ふむ、兄弟とはいっても性格は違うんだな。と当たり前のことで感心する私。
「ふふ、そう堅くならないで良いのに。といっても仕方ないか、会うのは一体何年ぶりかな」
「へへへ……」
もうアステルったら緊張し過ぎて良く分からないこと言ってるし……。
「いや~それにしても男前になったね。最後に会った時はもっとこう……」
言葉を必死に選んでくれているのがよく分かる。
そしてシュタインがちらりと私の方を見た。
「これも君のお陰かな? 」
「とんでもない。全てアステル様の……」
アステルを立てようとそう言いかけたとき、彼自身が口を挟んだ。
「違います! 全部ステラのお陰で! 」
まったく余計なことは言わなくて良いのに……。
するとシュタインは心底楽しそうにクスクスと笑いだした。
「本当に仲が良いんだね。二人は」
「ええ、良くして下さっていますわ」
「興味深いな。さあどうぞ、座ってください」
こういうとき、奴隷は床に座らなければいけない。しかし、ぐいとシュタインに腕を掴まれた。
「ああ、ステラさんはこちらに」
そして案内されたのはアステルの隣。まさか奴隷である私が王族である二人と同じテーブルにつかされるとは……。
シュタインというのも中々変わり者なのかもしれない。
テーブルには高そうなお茶菓子や紅茶がずらりと並んでいる。
どれもこれも美味しそうなものばかりだが、緊張していて喉を通りそうにない。
するとシュタインから話を切り出した。
「アステルは薬学に詳しいと聞いたんだが……」
「いやいやいや、とんでもないです。ただ知識として知っているだけで」
「そんなに謙遜しなくても良いだろう。アステルの薬の噂は度々聞くぞ。なにせ小さな女の子を救ったとか」
「いや~……」
褒められてないのかきょどりまくるアステル。目をキョロキョロさせてシュタインを真っすぐに見られないようだ。
「その素晴らしい薬学の知識はどこで? 」
「母が……こういう分野に詳しくて……」
「なるほど、立派なお母様なんだな。僕は恥ずかしながらこの手の知識は薄くてね、良ければ色々話を聞かせて欲しい」
シュタインはキラキラした瞳でアステルを見つめている。
アステルはその視線に驚きながらも、ぽつりぽつりと話始めた。
そしてしばらく、兄弟の勉強トークが始まったのである。
私が眠たくなってしまったのは内緒だ。
しかしこうしてみるとちゃんと兄弟にしか見えないな。と私は心の中で呟いたのであった。
◇◇◇
二人が話込んでいる内にすっかり日も暮れて、もう良い時間だ。
私は半分眠っていたようで、何だか頭がぽやーんとする。
「そろそろ日も暮れるな。今日は来てくれてありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございます……兄さん」
兄さんと呼ばれたシュタインは嬉しそうに頬を緩ませていた。
「……今日君たちを呼んだのは話をしてみたかったというのもある。だがもう一つ話したいことがあったんだ」
「はい? 」
「アステル、王位を継承する気はないか? 」
「へ? 」
「え? 」
思わず変な声をあげる私とアステル。
今、この人なんと言った……?
「驚かせてしまったようですまないな。だが僕は本気だ、二人でこの国の王となり、国を守っていかないか? 」
「えーっとつまり……? 」
「僕はずっと一人の人間が王となり、この国を守るという体制には無理があると思っていた。しかし僕たち二人が手を取ればどうだろう? 互いに足りない部分を補えるのではないかと思っているんだ」
兄弟二人とも王様になるってこと!?
どうしようこんな展開ゲームにはなかったんだけど!?
「勿論すぐに返事をくれとは言わない。だが、考えていて欲しい。それと……」
そしてシュタインは一枚の写真をアステルに取りだした。
「アステルももう良い年齢だ。そろそろ結婚も視野に入れなきゃいけないな」
「は!? 」
「その女性は家柄も容姿も申し分ない女性だ。一度会ってみると良い」
壊れた人形みたいに私とシュタインの顔を交互に見比べるアステル。
私を見られても困る! だって今の流れは、この私ですら予想していなかったのだから。
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