26 / 46
第26話 アステルとステラ
しおりを挟む
一体どういう状況なのだろう。
ステラの看病をしに、彼女の部屋に入った。
そして熱を測ろうとして、彼女の額に手を触れた。
そしたらーーー。
今の俺はなぜか彼女に押し倒されていた。
「ス、ステラ!? 」
俺の体をベッドに押し付ける彼女の腕力は恐ろしく強い。
そして彼女は荒い息を繰り返しながらただ何かに耐えるようにじっとしていた。
「ア、ステル……」
ふり絞るように彼女は言う。
「ステラどうしたんだ? そんなに体調が悪いなら今すぐ病院へ……! 」
「……食べたくて仕方がないの」
「食べたい? お腹が空いたのか? それなら何か食べ物を……」
違う、とステラはゆるゆると首を振る。
「私、アステルが食べたいな」
「は!? 俺!? 」
思わずステラを二度見してしまう俺。
今何て言った? ステラが俺を食べたい?
そして俺は気が付いてしまった。彼女の金色の瞳が妖しいぐらいの赤に染まり、頬は上気している。彼女の口元からはきらりと犬歯が覗いていた。
なにより、彼女から漂う甘い香り。これが酷く俺の鼻孔を犯し、判断能力を奪い去ってしまった。
そのとき、一瞬だけ彼女の手の力が緩んだのが分かった。
「……お願い、嫌なら今すぐ私を蹴り倒して。今なら……まだ間に合う」
「え!? 」
「これ以上我慢できない……止まんなくなっちゃう……早く! 」
ふーふーと汗を流しながら必死に耐えているステラ。
食べたい、と言われても不思議と怖い気持ちはなかった。
俺はそっと彼女を抱きしめる。
「……良いよ、食べても」
「え!? 」
今度はステラが驚いたように目を丸くする。
「俺、ステラになら食べられても良い。君の血肉になれるのなら……悪くないかもね」
「だ、駄目だよ。そんな……」
今度はステラが躊躇し始める。自分から言っといてなんなのだろうか。
「……痛いのは嫌だから」
そう答えると、ステラは意を決したように目を閉じた。
そしてステラの牙が覗いた口元が、ゆっくりと俺の首筋に近づいてきた。
◇◇◇
目が覚めた私、ステラはいつの間にか次の日を迎えていることに気が付いた。
「あ、あれ!? 私寝てたの? って何で裸!? 」
いつの間にか服を脱ぎ捨てていて、近くに散らばっていた。
寝具も乱れていたため、おそらく昨晩暑すぎて寝てる間に脱いでしまったのだろう。
あーあ、めんどくさいと文句を呟きながら服を着て、寝具を整える。
「寝たからかしら? いやに頭がすっきりしているわ」
昨日の雑念は綺麗さっぱりなくなってしまったようで、とりあえず今回の発情期は治まったようだ。
さーて、昨日はアステルを追い返してしまったし、その埋め合わせをしなければ。
朝ご飯、作らなきゃね。と私はルンルンで部屋を後にしたのだった。
ステラの看病をしに、彼女の部屋に入った。
そして熱を測ろうとして、彼女の額に手を触れた。
そしたらーーー。
今の俺はなぜか彼女に押し倒されていた。
「ス、ステラ!? 」
俺の体をベッドに押し付ける彼女の腕力は恐ろしく強い。
そして彼女は荒い息を繰り返しながらただ何かに耐えるようにじっとしていた。
「ア、ステル……」
ふり絞るように彼女は言う。
「ステラどうしたんだ? そんなに体調が悪いなら今すぐ病院へ……! 」
「……食べたくて仕方がないの」
「食べたい? お腹が空いたのか? それなら何か食べ物を……」
違う、とステラはゆるゆると首を振る。
「私、アステルが食べたいな」
「は!? 俺!? 」
思わずステラを二度見してしまう俺。
今何て言った? ステラが俺を食べたい?
そして俺は気が付いてしまった。彼女の金色の瞳が妖しいぐらいの赤に染まり、頬は上気している。彼女の口元からはきらりと犬歯が覗いていた。
なにより、彼女から漂う甘い香り。これが酷く俺の鼻孔を犯し、判断能力を奪い去ってしまった。
そのとき、一瞬だけ彼女の手の力が緩んだのが分かった。
「……お願い、嫌なら今すぐ私を蹴り倒して。今なら……まだ間に合う」
「え!? 」
「これ以上我慢できない……止まんなくなっちゃう……早く! 」
ふーふーと汗を流しながら必死に耐えているステラ。
食べたい、と言われても不思議と怖い気持ちはなかった。
俺はそっと彼女を抱きしめる。
「……良いよ、食べても」
「え!? 」
今度はステラが驚いたように目を丸くする。
「俺、ステラになら食べられても良い。君の血肉になれるのなら……悪くないかもね」
「だ、駄目だよ。そんな……」
今度はステラが躊躇し始める。自分から言っといてなんなのだろうか。
「……痛いのは嫌だから」
そう答えると、ステラは意を決したように目を閉じた。
そしてステラの牙が覗いた口元が、ゆっくりと俺の首筋に近づいてきた。
◇◇◇
目が覚めた私、ステラはいつの間にか次の日を迎えていることに気が付いた。
「あ、あれ!? 私寝てたの? って何で裸!? 」
いつの間にか服を脱ぎ捨てていて、近くに散らばっていた。
寝具も乱れていたため、おそらく昨晩暑すぎて寝てる間に脱いでしまったのだろう。
あーあ、めんどくさいと文句を呟きながら服を着て、寝具を整える。
「寝たからかしら? いやに頭がすっきりしているわ」
昨日の雑念は綺麗さっぱりなくなってしまったようで、とりあえず今回の発情期は治まったようだ。
さーて、昨日はアステルを追い返してしまったし、その埋め合わせをしなければ。
朝ご飯、作らなきゃね。と私はルンルンで部屋を後にしたのだった。
0
お気に入りに追加
2,468
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

変態王子&モブ令嬢 番外編
咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と
「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の
番外編集です。
本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。
「小説家になろう」でも公開しています。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる