転生したけどモブ奴隷だったので、悪役王子を更生させようと思います

寿司

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第26話 アステルとステラ

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 一体どういう状況なのだろう。
 
 ステラの看病をしに、彼女の部屋に入った。
 そして熱を測ろうとして、彼女の額に手を触れた。

 そしたらーーー。

 今の俺はなぜか彼女に押し倒されていた。

「ス、ステラ!? 」

 俺の体をベッドに押し付ける彼女の腕力は恐ろしく強い。
 そして彼女は荒い息を繰り返しながらただ何かに耐えるようにじっとしていた。

「ア、ステル……」

 ふり絞るように彼女は言う。

「ステラどうしたんだ? そんなに体調が悪いなら今すぐ病院へ……! 」

「……食べたくて仕方がないの」

「食べたい? お腹が空いたのか? それなら何か食べ物を……」

 違う、とステラはゆるゆると首を振る。

「私、アステルが食べたいな」

「は!? 俺!? 」

 思わずステラを二度見してしまう俺。
 今何て言った? ステラが俺を食べたい?

 そして俺は気が付いてしまった。彼女の金色の瞳が妖しいぐらいの赤に染まり、頬は上気している。彼女の口元からはきらりと犬歯が覗いていた。

 なにより、彼女から漂う甘い香り。これが酷く俺の鼻孔を犯し、判断能力を奪い去ってしまった。

 そのとき、一瞬だけ彼女の手の力が緩んだのが分かった。

「……お願い、嫌なら今すぐ私を蹴り倒して。今なら……まだ間に合う」

「え!? 」

「これ以上我慢できない……止まんなくなっちゃう……早く! 」

 ふーふーと汗を流しながら必死に耐えているステラ。
 食べたい、と言われても不思議と怖い気持ちはなかった。

 俺はそっと彼女を抱きしめる。

「……良いよ、食べても」

「え!? 」

 今度はステラが驚いたように目を丸くする。

「俺、ステラになら食べられても良い。君の血肉になれるのなら……悪くないかもね」

「だ、駄目だよ。そんな……」

 今度はステラが躊躇し始める。自分から言っといてなんなのだろうか。

「……痛いのは嫌だから」


 そう答えると、ステラは意を決したように目を閉じた。
 そしてステラの牙が覗いた口元が、ゆっくりと俺の首筋に近づいてきた。

◇◇◇

 目が覚めた私、ステラはいつの間にか次の日を迎えていることに気が付いた。

「あ、あれ!? 私寝てたの? って何で裸!? 」

 いつの間にか服を脱ぎ捨てていて、近くに散らばっていた。
 寝具も乱れていたため、おそらく昨晩暑すぎて寝てる間に脱いでしまったのだろう。

 あーあ、めんどくさいと文句を呟きながら服を着て、寝具を整える。

「寝たからかしら? いやに頭がすっきりしているわ」

 昨日の雑念は綺麗さっぱりなくなってしまったようで、とりあえず今回の発情期は治まったようだ。
 さーて、昨日はアステルを追い返してしまったし、その埋め合わせをしなければ。
 朝ご飯、作らなきゃね。と私はルンルンで部屋を後にしたのだった。
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