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第24話 作戦会議
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「俺が気を失っている間に一体何が……」
屋敷に戻った私たち(なぜかヴァイスもついてきた)は早速今後の動き方を話し合うこととなった。
「まずはアステル様、もう怪我は大丈夫なの? 」
「あ、ああ。もう大丈夫だ。体はなんともない」
それなら良かった……。
「しかし急に城を飛び出すなんてどうしたんだよ? 別にもう少しいたって良かっただろ」
ヴァイスが不服そうに頬を膨らませた。
「今回のパーティーでシュタイン様からの印象を良くすることには成功したわ」
「兄さんからの? それは凄いな」
アステルが目を丸くする。
「少し話したかんじだと、彼はアステル様に友好的よ」
ええ!? と思わず身を乗り出すアステル。
「兄さんが!? あの不出来な俺を軽蔑の視線で見てきた兄さんが……? そんなの有りえない」
「それはまだ分からない。シュタイン様の本音をもっと知らなきゃね。でも今日の感じだと今すぐアステル様を殺す、という雰囲気ではなかったわよ」
で、問題はリィンの……と言いかけたとき、あの~と今まで黙って話を聞いていたヴァイスが声を上げる。
「アステル様を殺す、って一体どういうこと? 」
あ゛、しまった。ヴァイスは私の予言のことを知らないんだった。
私はアステルと顔を見合わせると、彼に私が奴隷として買われた経緯を語ったのだった。
◇◇◇
「え~っと……アステルが2年後、シュタインの恋人であるリィンを傷つけたせいで処刑される、と。そしてそれを回避させるためにステラが買われたってことか……? 」
「正解よ」
流石ヴァイス、飲み込みが早い。
「う~~~~ん」
珍しく頭を悩ませるヴァイス。まあ無理もない。
「私を頭のおかしい獣女だと思っても構わない。でも確かに私はそういう予言を見たの」
予言と言ってもゲームのストーリーだけどね……。
「今すぐ納得は出来ない。しかし犬っころが来てからアステルが良い方向に変わったのも事実だ」
「俺が? 」
コクリと頷くヴァイス。
「姉さんが死んでからのアステルは生きた屍のようだった。僕が話しかけてもどこか上の空で、すっかり笑顔も消えてしまった。でもステラが来てからのアステルは姉さんが生きていた頃に戻ったみたいだった」
そしてヴァイスは目を瞑り、何かに思いを馳せている様子だった。
「……僕も協力しよう。アステルが死の運命を回避できるのなら、それ以上に嬉しいことはない」
「ありがとう! 」
ただしだ! とヴァイスがびしっと私を指さす。
「お前が財産目当ての悪人じゃないかと疑ってもいるからな! 変なことをしないように監視という意味もある」
「うん、それは当たり前でしょうね」
まあ……そもそも私には首輪が付いているからそう易々と自由に行動は出来ないけど。
「それで、兄さんが大丈夫そうならもう俺は死なないのでは……? 」
アステルがおずおずと声を上げる。
「シュタイン様は問題ではないわ。一番警戒しなきゃいけないのはリィンよ」
「リィン……」
アステルとヴァイスの声が重なる。
「誰? 」
アステルが首を傾げる。
「あ、そっかアステルは出会ってないのね。それはむしろ好都合かも」
「リィンってあのお前を睨んでた知らない女だろ? なんでそいつが関係あるんだ? 」
ヴァイスが眉間に皺を寄せる。
「アステルはリィンを一目見て恋に落ちてしまう! これが良くないのよこれが! 」
危ないところだった……もしアステルが医務室にいなくてあの場にいたら、このイベントが早まってしまっていたかもしれない。そうすると死亡イベントも早まる可能性が高かったのだ。
「はあ!??! 」
「へえ」
声を荒げるアステルと興味深そうに顎に手をやるヴァイス。
「そんなこと有り得ないよ、俺がそのリィン? という女性を好きになるなんて! 」
「そんなの分からないじゃない、まだ出会ってないんだから。でも絶対好きになっちゃ駄目よ……あ、別に好きになるのは良いのか……いやでも……」
人の気持ちにまで制限をかけるのは良くない気がする。
「ないないない!! 第一、俺、好きな人いるし!! 」
「え? 」
思わず固まる私。嘘でしょ……? ここに来て別の女が登場するなんて……。
しまったといった表情でアステルが口を抑える。
「そうなのねアステル様……まさか別に好きな人がいたなんて」
どうしよう、そうなると私の予言もあてにならなくなるかもしれない。
でも、ほぼ一緒にいたのに一体どこでアステルは別の女性に恋をしたのだろう?
「いや……あの……」
私から視線を反らすアステル。心なしか顔が赤い。
「主のプライベートにまで首を突っ込むなんて良くないと思うんだけど、名前ぐらいは教えてくれないかしら? もしかしたら新たな死亡ルートに……」
「いや……変な人じゃないから……大丈夫だ」
「そうなんだ。それなら私も知っている人なのかしら? 」
「知っているというか……その……」
もごもごと言葉を濁すアステル。
そんなに名前を言いづらい人なのかな? でも私も知っている?
うーん、思い当たる人が誰もいないな。
「もうその辺にしてやれ……」
口元の笑いを隠そうともしていないヴァイスが私たちの間に割って入った。
まあそうね、あまりしつこく追及するもんじゃないわね。
「分かったわ」
それでは一先ずの目標は、リィンに関わらない! 刺激しない!
……アステルの思い人が気がかりだが、これで死亡ルートからは逸れるだろう。
屋敷に戻った私たち(なぜかヴァイスもついてきた)は早速今後の動き方を話し合うこととなった。
「まずはアステル様、もう怪我は大丈夫なの? 」
「あ、ああ。もう大丈夫だ。体はなんともない」
それなら良かった……。
「しかし急に城を飛び出すなんてどうしたんだよ? 別にもう少しいたって良かっただろ」
ヴァイスが不服そうに頬を膨らませた。
「今回のパーティーでシュタイン様からの印象を良くすることには成功したわ」
「兄さんからの? それは凄いな」
アステルが目を丸くする。
「少し話したかんじだと、彼はアステル様に友好的よ」
ええ!? と思わず身を乗り出すアステル。
「兄さんが!? あの不出来な俺を軽蔑の視線で見てきた兄さんが……? そんなの有りえない」
「それはまだ分からない。シュタイン様の本音をもっと知らなきゃね。でも今日の感じだと今すぐアステル様を殺す、という雰囲気ではなかったわよ」
で、問題はリィンの……と言いかけたとき、あの~と今まで黙って話を聞いていたヴァイスが声を上げる。
「アステル様を殺す、って一体どういうこと? 」
あ゛、しまった。ヴァイスは私の予言のことを知らないんだった。
私はアステルと顔を見合わせると、彼に私が奴隷として買われた経緯を語ったのだった。
◇◇◇
「え~っと……アステルが2年後、シュタインの恋人であるリィンを傷つけたせいで処刑される、と。そしてそれを回避させるためにステラが買われたってことか……? 」
「正解よ」
流石ヴァイス、飲み込みが早い。
「う~~~~ん」
珍しく頭を悩ませるヴァイス。まあ無理もない。
「私を頭のおかしい獣女だと思っても構わない。でも確かに私はそういう予言を見たの」
予言と言ってもゲームのストーリーだけどね……。
「今すぐ納得は出来ない。しかし犬っころが来てからアステルが良い方向に変わったのも事実だ」
「俺が? 」
コクリと頷くヴァイス。
「姉さんが死んでからのアステルは生きた屍のようだった。僕が話しかけてもどこか上の空で、すっかり笑顔も消えてしまった。でもステラが来てからのアステルは姉さんが生きていた頃に戻ったみたいだった」
そしてヴァイスは目を瞑り、何かに思いを馳せている様子だった。
「……僕も協力しよう。アステルが死の運命を回避できるのなら、それ以上に嬉しいことはない」
「ありがとう! 」
ただしだ! とヴァイスがびしっと私を指さす。
「お前が財産目当ての悪人じゃないかと疑ってもいるからな! 変なことをしないように監視という意味もある」
「うん、それは当たり前でしょうね」
まあ……そもそも私には首輪が付いているからそう易々と自由に行動は出来ないけど。
「それで、兄さんが大丈夫そうならもう俺は死なないのでは……? 」
アステルがおずおずと声を上げる。
「シュタイン様は問題ではないわ。一番警戒しなきゃいけないのはリィンよ」
「リィン……」
アステルとヴァイスの声が重なる。
「誰? 」
アステルが首を傾げる。
「あ、そっかアステルは出会ってないのね。それはむしろ好都合かも」
「リィンってあのお前を睨んでた知らない女だろ? なんでそいつが関係あるんだ? 」
ヴァイスが眉間に皺を寄せる。
「アステルはリィンを一目見て恋に落ちてしまう! これが良くないのよこれが! 」
危ないところだった……もしアステルが医務室にいなくてあの場にいたら、このイベントが早まってしまっていたかもしれない。そうすると死亡イベントも早まる可能性が高かったのだ。
「はあ!??! 」
「へえ」
声を荒げるアステルと興味深そうに顎に手をやるヴァイス。
「そんなこと有り得ないよ、俺がそのリィン? という女性を好きになるなんて! 」
「そんなの分からないじゃない、まだ出会ってないんだから。でも絶対好きになっちゃ駄目よ……あ、別に好きになるのは良いのか……いやでも……」
人の気持ちにまで制限をかけるのは良くない気がする。
「ないないない!! 第一、俺、好きな人いるし!! 」
「え? 」
思わず固まる私。嘘でしょ……? ここに来て別の女が登場するなんて……。
しまったといった表情でアステルが口を抑える。
「そうなのねアステル様……まさか別に好きな人がいたなんて」
どうしよう、そうなると私の予言もあてにならなくなるかもしれない。
でも、ほぼ一緒にいたのに一体どこでアステルは別の女性に恋をしたのだろう?
「いや……あの……」
私から視線を反らすアステル。心なしか顔が赤い。
「主のプライベートにまで首を突っ込むなんて良くないと思うんだけど、名前ぐらいは教えてくれないかしら? もしかしたら新たな死亡ルートに……」
「いや……変な人じゃないから……大丈夫だ」
「そうなんだ。それなら私も知っている人なのかしら? 」
「知っているというか……その……」
もごもごと言葉を濁すアステル。
そんなに名前を言いづらい人なのかな? でも私も知っている?
うーん、思い当たる人が誰もいないな。
「もうその辺にしてやれ……」
口元の笑いを隠そうともしていないヴァイスが私たちの間に割って入った。
まあそうね、あまりしつこく追及するもんじゃないわね。
「分かったわ」
それでは一先ずの目標は、リィンに関わらない! 刺激しない!
……アステルの思い人が気がかりだが、これで死亡ルートからは逸れるだろう。
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