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第23話 主人公とモブと
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それっぽい受け答えをしてみたものの、これで良いのだろうか……?
バクバクする心臓を何とか落ち着かせる。
前世でもごく普通の高校生だった私に社交場での礼儀作法なんてよく分からないよ……。
ドレスなんて初めて着たから落ち着かないし、皆がこちらを見ている気がする。
それにさっき大臣のおっさんが謝ってきたけど一体急にどうしたのだろうか……?
「大丈夫、自信を持て」
傍らでヴァイスが励ましてくれるけど、正直自信なんて持てないよ!
そんなことを考えていると……。
「ようこそお越しくださいました。アステルの兄、シュタイン=セリラムドと申します」
なんて最悪なタイミング!!!
そこには爽やかな笑顔を浮かべるシュタインがいた。
金色に碧眼、いかにもヨーロッパ風の王子様といった容姿の美青年だ。
兄弟といえども、腹違いのようなのでアステルとはあまり似ていない。
「ど、ど、どうも」
思わずきょどってしまう私に、ヴァイスが耳元でこう囁く。
「おい、なんだよその返事は!」
「だ、だってー!! 」
くすっと私たちのやり取りを見て笑うシュタイン、そんの動作も優雅だ。
「貴女のような美しい女性が奴隷だなんて信じられません」
そんな甘い言葉を囁いたって私はだまされないからな!
アステルを処刑する悪魔のような男なのだから!
……まあ愛している女性を傷つけられて激怒するのは当然のことなのであながちシュタインが悪いわけではないが。
「勿体ないお言葉ですわ」
「それにしてもあのアステルがお祝いに来てくれるなんて思わなかったです。昔から内向的で、あまり私と関わりたがらない子でしたから」
「我が主もお兄様のことを内心では尊敬していたようですよ。ですから今日もお祝いのために参加致しましたの」
なんちゃって! そんなこと聞いたこともないけど!
でも嘘も方便というやつで、徹底的にアステルの株を上げておかねば!
「ほう……」
しかし意外にもシュタインは嬉しそうな顔をしていて、私は思わず目を丸くした。
あれ? 意外と効果的?
よし、駄目押しだ!
「……容姿端麗で文武両道なお兄様は憧れだと日頃から言っておりました」
「アステルがそんなことを……」
照れた様にくしゃっとした笑みを浮かべるシュタイン。
うーん? 意外と弟思いみたいだし悪い人ではなさそうじゃない?
このままアステルがリィンに変なことをしなければ処刑エンドもなさそうな気がする。
そしてそんな私の思考を遮るように女の子の声が響いた。
「シュタイン様……! 」
あれ……? どこかで聞いたことがあるような……。
「リィン! 」
シュタインが声をあげる。
リ、リ、リ、リ、リィン!?
思わず声のした方を見ると、そこには見慣れたあのキャラクターが立っていた。
主人公 リィン。
茶色のウェーブかかったセミロングに、子犬のようによく動く瞳。
天真爛漫で、誰にでも優しくて、純粋な愛され主人公。
……しかし彼女とアステルは絶対に会わせてはいけない!!
でもなぜ彼女がここに?
リィンはただの町娘であったはず、それにしては綺麗にメイクされているし豪華な薄いピンクのドレスを着ている。
あ……そして私はとあるイベントに思い当たった。
主人公のリィンは冴えない町娘だったが、たまたま参加した社交パーティーで、メイクをされてとんでもない美人に変身する。そしてその姿をシュタインに一目惚れされ、二人は恋に落ちるという冒頭だ。
んんんんん? これ、今の状況と何だか似てないか?
でもリィンの美しさに皆がびっくりするイベントあったっけ?
でもシュタインとリィンが互いに面識があるということは多分あったんだろうな。
「いつまでお話してるんですか。一緒に踊りましょうよ」
「ああ、申し訳ない。つい話し込んでしまったね。それじゃあ弟によろしく言っておいてくれ、また今度一緒に食事でもしよう、とね」
リィンに手を引かれてシュタインは去っていった。
ふう……ひとまず危機は乗り越えたか……。
一人安堵していると、ヴァイスがヒソヒソと囁く。
「おい、あのリィンとかいう女、物凄い顔してお前を睨んでたぞ」
「へ? なんで? 」
「そりゃあ……場の注目をお前に奪われて面白くないんだろ」
私がリィンの?
あ……まさか、私がリィンのイベントを乗っ取ってしまったのでは?
「……それはまずいわね」
「まあ、そんな気にしなくてもいいだろ。ただ女は怖いなーっと思っただけだし」
「いいやまずいわ。ヴァイス、今すぐアステルを連れてここから出るわよ!!! 」
「は!? そんな急に」
そんなちんたらしてたらアステルが危ない!!
なんてヘマをしてしまったのかしら私は……アステルを殺すのはシュタインだけど、原因となっていたのはリィンの方! こっちを刺激してはならないのだ。
私は医務室でもう目を覚まして暇そうにしていたアステルを連れると、飛び出すように城を後にしたのだった。
バクバクする心臓を何とか落ち着かせる。
前世でもごく普通の高校生だった私に社交場での礼儀作法なんてよく分からないよ……。
ドレスなんて初めて着たから落ち着かないし、皆がこちらを見ている気がする。
それにさっき大臣のおっさんが謝ってきたけど一体急にどうしたのだろうか……?
「大丈夫、自信を持て」
傍らでヴァイスが励ましてくれるけど、正直自信なんて持てないよ!
そんなことを考えていると……。
「ようこそお越しくださいました。アステルの兄、シュタイン=セリラムドと申します」
なんて最悪なタイミング!!!
そこには爽やかな笑顔を浮かべるシュタインがいた。
金色に碧眼、いかにもヨーロッパ風の王子様といった容姿の美青年だ。
兄弟といえども、腹違いのようなのでアステルとはあまり似ていない。
「ど、ど、どうも」
思わずきょどってしまう私に、ヴァイスが耳元でこう囁く。
「おい、なんだよその返事は!」
「だ、だってー!! 」
くすっと私たちのやり取りを見て笑うシュタイン、そんの動作も優雅だ。
「貴女のような美しい女性が奴隷だなんて信じられません」
そんな甘い言葉を囁いたって私はだまされないからな!
アステルを処刑する悪魔のような男なのだから!
……まあ愛している女性を傷つけられて激怒するのは当然のことなのであながちシュタインが悪いわけではないが。
「勿体ないお言葉ですわ」
「それにしてもあのアステルがお祝いに来てくれるなんて思わなかったです。昔から内向的で、あまり私と関わりたがらない子でしたから」
「我が主もお兄様のことを内心では尊敬していたようですよ。ですから今日もお祝いのために参加致しましたの」
なんちゃって! そんなこと聞いたこともないけど!
でも嘘も方便というやつで、徹底的にアステルの株を上げておかねば!
「ほう……」
しかし意外にもシュタインは嬉しそうな顔をしていて、私は思わず目を丸くした。
あれ? 意外と効果的?
よし、駄目押しだ!
「……容姿端麗で文武両道なお兄様は憧れだと日頃から言っておりました」
「アステルがそんなことを……」
照れた様にくしゃっとした笑みを浮かべるシュタイン。
うーん? 意外と弟思いみたいだし悪い人ではなさそうじゃない?
このままアステルがリィンに変なことをしなければ処刑エンドもなさそうな気がする。
そしてそんな私の思考を遮るように女の子の声が響いた。
「シュタイン様……! 」
あれ……? どこかで聞いたことがあるような……。
「リィン! 」
シュタインが声をあげる。
リ、リ、リ、リ、リィン!?
思わず声のした方を見ると、そこには見慣れたあのキャラクターが立っていた。
主人公 リィン。
茶色のウェーブかかったセミロングに、子犬のようによく動く瞳。
天真爛漫で、誰にでも優しくて、純粋な愛され主人公。
……しかし彼女とアステルは絶対に会わせてはいけない!!
でもなぜ彼女がここに?
リィンはただの町娘であったはず、それにしては綺麗にメイクされているし豪華な薄いピンクのドレスを着ている。
あ……そして私はとあるイベントに思い当たった。
主人公のリィンは冴えない町娘だったが、たまたま参加した社交パーティーで、メイクをされてとんでもない美人に変身する。そしてその姿をシュタインに一目惚れされ、二人は恋に落ちるという冒頭だ。
んんんんん? これ、今の状況と何だか似てないか?
でもリィンの美しさに皆がびっくりするイベントあったっけ?
でもシュタインとリィンが互いに面識があるということは多分あったんだろうな。
「いつまでお話してるんですか。一緒に踊りましょうよ」
「ああ、申し訳ない。つい話し込んでしまったね。それじゃあ弟によろしく言っておいてくれ、また今度一緒に食事でもしよう、とね」
リィンに手を引かれてシュタインは去っていった。
ふう……ひとまず危機は乗り越えたか……。
一人安堵していると、ヴァイスがヒソヒソと囁く。
「おい、あのリィンとかいう女、物凄い顔してお前を睨んでたぞ」
「へ? なんで? 」
「そりゃあ……場の注目をお前に奪われて面白くないんだろ」
私がリィンの?
あ……まさか、私がリィンのイベントを乗っ取ってしまったのでは?
「……それはまずいわね」
「まあ、そんな気にしなくてもいいだろ。ただ女は怖いなーっと思っただけだし」
「いいやまずいわ。ヴァイス、今すぐアステルを連れてここから出るわよ!!! 」
「は!? そんな急に」
そんなちんたらしてたらアステルが危ない!!
なんてヘマをしてしまったのかしら私は……アステルを殺すのはシュタインだけど、原因となっていたのはリィンの方! こっちを刺激してはならないのだ。
私は医務室でもう目を覚まして暇そうにしていたアステルを連れると、飛び出すように城を後にしたのだった。
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