20 / 46
第20話 いきなり事件?
しおりを挟む
「き、来ちゃったよ……どうしよう、俺お腹痛くなってきた」
ついにシュタインの誕生日パーティー当日を迎えた私たち。
……本当はアステルだけのはずだったんだけど、どうしてもというのでついて来てしまった。
やはり城は凄いなーと感動する。アステルのお屋敷ももちろん豪邸だけど、お城には到底かなわない。
でも掃除とか大変そうね、とつい私は主婦目線で見てしまうのだった。
「しゃきっとしなさいよ、何度か来たことあるんでしょう? 」
「そりゃあるけどさ……」
この日の為に綺麗な正装も用意したし、髪のセットも完璧。
うん、今のアステルは乙女ゲームのパッケージを飾ってもおかしくないような王子様だ。
「でも何か笑われてない……? 俺やっぱり変なんじゃ……」
「変じゃないわよ、カッコいいよ。皆貴方に見惚れてるんでしょ」
でも確かに視線は感じる。それも、良くない方の。
人が多すぎるので流石の私も聞き分けられないが、何か言われている気がする。
「……ステラがそう言うなら」
耳を真っ赤にして俯くアステル。
「ん? 良く分からないけど、ほら、さっさとお兄様に挨拶に行きましょうよ! 」
「ええ!? もう何年も会話してないよ」
良い、アステル様!? と私は彼の耳に顔を寄せる。
「貴方は二年後にお兄様に殺される。だから、今のうちに仲良くなっておけばその可能性はぐっと低くなるわよ」
「そうだけど……そんな簡単にいくかな……」
やってみなきゃ分からないじゃない、と私はウィンク一つ。
「そうかな……」
なんとかアステルをなだめて、引っ張っていこうとしたそのとき、見知らぬおじさんに声をかけられた。
身なりからして相当身分が高そうだ。傍らには綺麗な女性を連れている。
緑色の高そうなローブに身を包み、少し太り気味なのかお腹がぽこんと出ている。
「おお、君はアステルくんか。大きくなったねえ」
「あ、あ、あ、こんにちは」
アステル挙動不審過ぎ!!!
「落ち着いてよアステル様」
私は小声でそう囁き、軽く彼の脇腹を小突く。
「……そうは言ってもさ!」
小声でそう返すアステル。
「ほう、お母さんに似て随分な美青年に成長したね。私の娘の夫に欲しいくらいだ」
「こ、光栄です」
お! 偉い人にもばっちり好印象!
やっぱりアステル、素材は良いのよね素材は。
何だか誇らしい気持ちになる私。その素材の良さに気が付いたのは私なのよね、と言いたくなってしまう。
「しかし……」
ジロリとおじさんは私に視線を移す。
「汚らしい奴隷を持ち込むのは頂けないね~、しかも獣風情を連れ込むなんて」
「へ? 」
一瞬何を言われているのか理解が追いつかなかった。
それはアステルも同じだったようで、口をぽかんと開けておじさんを見ている。
「いいかい? 君も王族ならば彼女のような美しい奴隷を買わなければいけないよ」
そしておもむろにおじさんの傍らで控えていたその女性の肩を抱く。濁り切ったその瞳から、彼女が日常的にどんなことをされているのか一目瞭然だ。
呆れてものも言えない。私が思っていた以上に奴隷というものは地位が低いのか。
「それに先ほど、その獣は君にとんでもない口を利いていたではないか。いかんねー、きちんと立場の違いというものを分からせなければ」
こういうものを使ってね、と彼が懐から鞭を取り出す。
そして何のためらいもなく突然私に向かってそれを振り下ろした。
「え」
唸りながら向かうそれを、いつもなら避けることなど造作もない。
しかし今の私は油断し切っていた。
もう間に合わない、固く目を瞑る。
バチンという破裂音が響き渡った。
……あれ? 痛くもかゆくもない。
「くっ……」
目を開けると、信じられない光景が広がっていた。
なんと私を庇うようにアステルが鞭を受けてくれていたのだ。
彼の額から鮮血が流れている。
「アステル!! 」
思わず敬語を忘れてしまう私。
「なんと!!? 」
流石のおじさんも血の気が引いたようだ。
もごもごと言い訳をしながら辺りの様子をそわそわと見回している。
大きな音に気が付いた他の貴族たちがざわめいている。
「おいおい、何をしてるんだ」
そして集団の中から進み出たのはヴァイスだった。
「ヴァイス……」
私は縋る様な目で、アステルを抱きかかえたままヴァイスを見つめる。
早く医務室に連れていって、止血をして……。
どうしよう、考えがぐちゃぐちゃして上手くまとめられない。
私は一体何をすれば良いんだっけ……?
「行くぞ」
彼は私たちを見て全てを察したのか、直ぐに医務室に連れ出してくれた。
ついにシュタインの誕生日パーティー当日を迎えた私たち。
……本当はアステルだけのはずだったんだけど、どうしてもというのでついて来てしまった。
やはり城は凄いなーと感動する。アステルのお屋敷ももちろん豪邸だけど、お城には到底かなわない。
でも掃除とか大変そうね、とつい私は主婦目線で見てしまうのだった。
「しゃきっとしなさいよ、何度か来たことあるんでしょう? 」
「そりゃあるけどさ……」
この日の為に綺麗な正装も用意したし、髪のセットも完璧。
うん、今のアステルは乙女ゲームのパッケージを飾ってもおかしくないような王子様だ。
「でも何か笑われてない……? 俺やっぱり変なんじゃ……」
「変じゃないわよ、カッコいいよ。皆貴方に見惚れてるんでしょ」
でも確かに視線は感じる。それも、良くない方の。
人が多すぎるので流石の私も聞き分けられないが、何か言われている気がする。
「……ステラがそう言うなら」
耳を真っ赤にして俯くアステル。
「ん? 良く分からないけど、ほら、さっさとお兄様に挨拶に行きましょうよ! 」
「ええ!? もう何年も会話してないよ」
良い、アステル様!? と私は彼の耳に顔を寄せる。
「貴方は二年後にお兄様に殺される。だから、今のうちに仲良くなっておけばその可能性はぐっと低くなるわよ」
「そうだけど……そんな簡単にいくかな……」
やってみなきゃ分からないじゃない、と私はウィンク一つ。
「そうかな……」
なんとかアステルをなだめて、引っ張っていこうとしたそのとき、見知らぬおじさんに声をかけられた。
身なりからして相当身分が高そうだ。傍らには綺麗な女性を連れている。
緑色の高そうなローブに身を包み、少し太り気味なのかお腹がぽこんと出ている。
「おお、君はアステルくんか。大きくなったねえ」
「あ、あ、あ、こんにちは」
アステル挙動不審過ぎ!!!
「落ち着いてよアステル様」
私は小声でそう囁き、軽く彼の脇腹を小突く。
「……そうは言ってもさ!」
小声でそう返すアステル。
「ほう、お母さんに似て随分な美青年に成長したね。私の娘の夫に欲しいくらいだ」
「こ、光栄です」
お! 偉い人にもばっちり好印象!
やっぱりアステル、素材は良いのよね素材は。
何だか誇らしい気持ちになる私。その素材の良さに気が付いたのは私なのよね、と言いたくなってしまう。
「しかし……」
ジロリとおじさんは私に視線を移す。
「汚らしい奴隷を持ち込むのは頂けないね~、しかも獣風情を連れ込むなんて」
「へ? 」
一瞬何を言われているのか理解が追いつかなかった。
それはアステルも同じだったようで、口をぽかんと開けておじさんを見ている。
「いいかい? 君も王族ならば彼女のような美しい奴隷を買わなければいけないよ」
そしておもむろにおじさんの傍らで控えていたその女性の肩を抱く。濁り切ったその瞳から、彼女が日常的にどんなことをされているのか一目瞭然だ。
呆れてものも言えない。私が思っていた以上に奴隷というものは地位が低いのか。
「それに先ほど、その獣は君にとんでもない口を利いていたではないか。いかんねー、きちんと立場の違いというものを分からせなければ」
こういうものを使ってね、と彼が懐から鞭を取り出す。
そして何のためらいもなく突然私に向かってそれを振り下ろした。
「え」
唸りながら向かうそれを、いつもなら避けることなど造作もない。
しかし今の私は油断し切っていた。
もう間に合わない、固く目を瞑る。
バチンという破裂音が響き渡った。
……あれ? 痛くもかゆくもない。
「くっ……」
目を開けると、信じられない光景が広がっていた。
なんと私を庇うようにアステルが鞭を受けてくれていたのだ。
彼の額から鮮血が流れている。
「アステル!! 」
思わず敬語を忘れてしまう私。
「なんと!!? 」
流石のおじさんも血の気が引いたようだ。
もごもごと言い訳をしながら辺りの様子をそわそわと見回している。
大きな音に気が付いた他の貴族たちがざわめいている。
「おいおい、何をしてるんだ」
そして集団の中から進み出たのはヴァイスだった。
「ヴァイス……」
私は縋る様な目で、アステルを抱きかかえたままヴァイスを見つめる。
早く医務室に連れていって、止血をして……。
どうしよう、考えがぐちゃぐちゃして上手くまとめられない。
私は一体何をすれば良いんだっけ……?
「行くぞ」
彼は私たちを見て全てを察したのか、直ぐに医務室に連れ出してくれた。
0
お気に入りに追加
2,468
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

変態王子&モブ令嬢 番外編
咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と
「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の
番外編集です。
本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。
「小説家になろう」でも公開しています。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』


夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる