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第18話 ヴァイス登場
しおりを挟む「えーっと……つまりヴァイスさんはアステル様のお母さんの弟……? 」
「ピンポーン! 正解! 」
指ぱっちんをかますヴァイス。あ。この人、私が苦手なタイプの人だ……。
「叔父さんはたまに俺の様子を見に来てくれるんだ。いつ来るかは分からないけど……」
「手紙のやり取りはしてたから奴隷を買ったことは知ってたけど、まさかこんなイケメンに変身しているとはね。あとアステル、僕のことを叔父さんと呼ぶのはやめなさい」
ヴァイスが優雅に紅茶を口に含む。
「えっと……、ありがとうございます」
照れ笑いを浮かべるアステル。
「顔色も良いし、隈も薄くなっているじゃないか」
「はは、ステラのお陰です」
「ステラ……か。君が噂の星導の獣かな? 」
違います、と私は答える。
「そんな大層な存在ではありません」
「へえ? じゃあ君がアステルの運命が見えるってのも嘘なのかい? 」
にやりと笑うヴァイス。からかうような口調だ。
「どう取って頂いても結構ですよ」
うう、まずい。負けず嫌いのせいかつい張り合ってしまう。
ピリピリとした空気が流れる。
「あ、あ、俺、紅茶のお代わり取ってくるね」
この空気に耐えきれなくなったアステルがバタバタと部屋から出ていった。
ちょっと待ってよ! この男と二人きりにしないで!
「ふふ、あの子もだいぶ空気が読めるようになったね」
心底嬉しそうに笑うヴァイス。
そして彼は、さてと呟くと、私に近寄る。
「あの子は姉さんの大事な宝物だ。泥棒猫に好き勝手させる訳にはいかないんだけどな」
泥棒猫って私のこと!? まだ出会ったばかりなのに失礼なやつだ。
「泥棒猫? そんなもの、この屋敷にはいないわ。獰猛な番犬ならいますけどね」
「くっ、ははははは。君面白いね。まさかそう返してくるとは! 」
不意に噴き出したヴァイスが腹を抱えて笑う。
変な人……。この人は一体何が目的なんだ……?
「な、なんですか? 」
「君は番犬をやめたいとは思わないのかい? 」
「はぁ? 」
一体何の話をしているのだろうか? 思わず呆れた声をあげてしまう。
そう怖い顔をしないでくれよ、とヴァイスは私の髪に触れる。
「僕も君に興味が出て来てしまってね。どうだい? こんな屋敷抜け出して自由になりたくはないか? 」
「馬鹿馬鹿しい」
私はぱちんとヴァイスの手を払った。
「私はアステル様を死の運命から救うためにここにいる、自由? そんなもの興味がない」
もしゲームと同じ展開を迎えるとしたらアステルは二年後に殺される。
そう悠長にしてはいられないのだ。
「あ!! 一体何を! 」
戻ってきたらしいアステルが私たちの間に割り込んだ。
そして私の肩を抱くと、ヴァイスをきっと睨む。
「直ぐ綺麗な女性を見ると口説くんだから……やめてくださいよ」
「いや~、口説こうとしたんだけど失敗してしまったよ。まさか僕の美貌が通用しない女がいるとはね」
さらりと自分の髪をなびかせるヴァイス。
「大丈夫ステラ? 何もされてない? 」
「平気よ」
「良かった……」
それにしてもいつまで私の肩を掴んでいるのだろう……まあ別に良いけど。
「ふふ、僕に靡かないなんて大した忠誠心だよ。大事にしなさい」
あまりのナルシストぶりにイラつく私はつい……。
「ええ、私おじさんには興味ないですし」
ぴきっというヴァイスの頭の血管が切れたような音がした。
「……何だって? 」
「だから、私はずっと年上のおじさんになんか興味ないって言ったんです」
「……もう一度言ってみろ犬っころ」
ドスの利いた声。こっちが本性なのだろう。
「お・じ・さ・ん! 」
「上等だ!! 」
そこからはもう滅茶苦茶だった。ヴァイスと取っ組み合いになった私は大げんかを繰り広げた。
ヴァイスは物腰柔らかな上品な男性ではなく、ただのナルシストな男だ。
……彼と私の仲が最悪になったのは言うまでもない。
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