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第8話 いただきます
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買い込んだ食材をテーブルに並べる。うん、これだけあれば一週間は持ちそうだ。
「食事なんて関係あるのか……? 」
怪訝そうな顔をするアステル。そんな彼に私は言ってやる。
「良いですか、アステル様? 今の貴方は痩せすぎだし、不健康ですよ」
確かに顔立ちは整っているが、パサパサの髪の毛にガリガリの体、病的なぐらい真っ白な肌がその美貌を台無しにしている。
「ふ、不健康……」
「そりゃ毎日そんなクッキーばかり食べてたらそうなるわよ。一応聞くけど……一日何食食べてる? 」
「……えっーと……一……」
「え? 」
「一日一食を食べたり食べなかったりかな……」
ほらみろ、まずはここから変えていかなければなるまい。
「今日から私が三食作るからちゃんと食べなさい」
「……でもお腹空かない」
「死にたくないんでしょ? 」
そう言うとアステルはこくんと頷いた。
素直でよろしい、そして私はキッチンに入ると前世の記憶を頼りに夕食を作り始めたのであった。
◇◇◇
「おお……!! 」
食卓に並べられたのはほかほかのご飯、味噌汁、豚のしょうが焼きに、おひたし。
……西洋ファンタジーには似つかわしくないものばかりだ。でも仕方ない、お洒落なおフレンチなんて私には作れないのだから。
というかそもそも王子様は味噌汁なんて飲むのだろうか……?
「凄いなステラ、どれも美味しそう」
「久々に作ったけど、私もまだ中々ね」
二人でいただきますと、手を合わせて食べ始める。
味噌汁を一口飲んだアステルが目を丸くした。
「美味しい……! これは何て言う料理なんだ? 」
「えーっと、味噌スープ? 」
「豚肉も美味しいし、これは……米? ステラは米を食べる文化だったのか」
「そうよ、この国の人はパンを食べるかもしれないけどね」
「俺たちはあまり米は食べないな。でも美味しい。この味噌スープには米の方が合ってるな」
パクパクと美味しそうに食べるアステル。お腹が空かないと言っていたので少な目に作っていたのだが、このままだとあっという間に完食してしまいそうだ。
「こら、野菜残さない」
おひたしだけそのまま残っていることに気がついた私はじろりと睨む。
「……バレた? 」
「栄養が偏った食事ばかりしてると死ぬわよ」
「死ぬ……!? 」
そう言うと顔色を変えたアステルは野菜を口に放り込んだ。うん、こう言えば何でも言うこと聞いてくれそうだ。
「……あ、美味しい」
「でしょ! 食わず嫌いは良くないよ」
お母さん直伝のおひたし!
これを不味いなんて言わせない。
……そしてアステルはあっという間に全ての料理を完食してしまった。
食後のフルーツを剥いていると、アステルが不意にぽつりと呟いた。
「誰かと食事をするなんて母が死んで以来初めてだ」
「え、そうなの」
と言っても私も前世以来か……。
「ああ、母が生きていた頃は手料理を食べていたが、亡くなってからはずっと適当に済ませてきた」
「そうなんだ……」
「だからありがとう、ステラ。久しぶりに誰かと食卓を囲むことが出来て嬉しい」
ふわっとした笑みを浮かべるアステル。おお、こうしてみるとやっぱりイケメンだ!
「気にしないで、これが私のお仕事なんだから」
「そうだな」
これで食事問題は解決!!
……後は。
「で、アステル、その長すぎる髪切った方が良いわよ」
「え!? 」
「前髪長すぎだし、髪もボサボサ。まさかとは思うけどちゃんとお風呂入ってるでしょうね」
ギクッとした表情で目をそらすアステル。
「シャワーだけで済ませたりしてないでしょうね」
「……」
沈黙は同意と取るぞ。
「それ食べたらお風呂行きましょう、身なりは大事よ」
嫌がるアステルを引きずって私はアステルをお風呂に連れていったのだった。
「食事なんて関係あるのか……? 」
怪訝そうな顔をするアステル。そんな彼に私は言ってやる。
「良いですか、アステル様? 今の貴方は痩せすぎだし、不健康ですよ」
確かに顔立ちは整っているが、パサパサの髪の毛にガリガリの体、病的なぐらい真っ白な肌がその美貌を台無しにしている。
「ふ、不健康……」
「そりゃ毎日そんなクッキーばかり食べてたらそうなるわよ。一応聞くけど……一日何食食べてる? 」
「……えっーと……一……」
「え? 」
「一日一食を食べたり食べなかったりかな……」
ほらみろ、まずはここから変えていかなければなるまい。
「今日から私が三食作るからちゃんと食べなさい」
「……でもお腹空かない」
「死にたくないんでしょ? 」
そう言うとアステルはこくんと頷いた。
素直でよろしい、そして私はキッチンに入ると前世の記憶を頼りに夕食を作り始めたのであった。
◇◇◇
「おお……!! 」
食卓に並べられたのはほかほかのご飯、味噌汁、豚のしょうが焼きに、おひたし。
……西洋ファンタジーには似つかわしくないものばかりだ。でも仕方ない、お洒落なおフレンチなんて私には作れないのだから。
というかそもそも王子様は味噌汁なんて飲むのだろうか……?
「凄いなステラ、どれも美味しそう」
「久々に作ったけど、私もまだ中々ね」
二人でいただきますと、手を合わせて食べ始める。
味噌汁を一口飲んだアステルが目を丸くした。
「美味しい……! これは何て言う料理なんだ? 」
「えーっと、味噌スープ? 」
「豚肉も美味しいし、これは……米? ステラは米を食べる文化だったのか」
「そうよ、この国の人はパンを食べるかもしれないけどね」
「俺たちはあまり米は食べないな。でも美味しい。この味噌スープには米の方が合ってるな」
パクパクと美味しそうに食べるアステル。お腹が空かないと言っていたので少な目に作っていたのだが、このままだとあっという間に完食してしまいそうだ。
「こら、野菜残さない」
おひたしだけそのまま残っていることに気がついた私はじろりと睨む。
「……バレた? 」
「栄養が偏った食事ばかりしてると死ぬわよ」
「死ぬ……!? 」
そう言うと顔色を変えたアステルは野菜を口に放り込んだ。うん、こう言えば何でも言うこと聞いてくれそうだ。
「……あ、美味しい」
「でしょ! 食わず嫌いは良くないよ」
お母さん直伝のおひたし!
これを不味いなんて言わせない。
……そしてアステルはあっという間に全ての料理を完食してしまった。
食後のフルーツを剥いていると、アステルが不意にぽつりと呟いた。
「誰かと食事をするなんて母が死んで以来初めてだ」
「え、そうなの」
と言っても私も前世以来か……。
「ああ、母が生きていた頃は手料理を食べていたが、亡くなってからはずっと適当に済ませてきた」
「そうなんだ……」
「だからありがとう、ステラ。久しぶりに誰かと食卓を囲むことが出来て嬉しい」
ふわっとした笑みを浮かべるアステル。おお、こうしてみるとやっぱりイケメンだ!
「気にしないで、これが私のお仕事なんだから」
「そうだな」
これで食事問題は解決!!
……後は。
「で、アステル、その長すぎる髪切った方が良いわよ」
「え!? 」
「前髪長すぎだし、髪もボサボサ。まさかとは思うけどちゃんとお風呂入ってるでしょうね」
ギクッとした表情で目をそらすアステル。
「シャワーだけで済ませたりしてないでしょうね」
「……」
沈黙は同意と取るぞ。
「それ食べたらお風呂行きましょう、身なりは大事よ」
嫌がるアステルを引きずって私はアステルをお風呂に連れていったのだった。
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