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第62話 仲間が増えた?
しおりを挟む「……本当に良いのか? 」
「ああ、別に構わないさ」
なんとロッカは自分の兵士としての鎧を俺に貸すと言い出したのだ。その方が動きやすいだろう、ということで。
「でも君が罰せられるんじゃ……」
「大丈夫大丈夫、そしたら俺は賊に鎧を取られた被害者ですーって顔してれば良いのさ」
にかっと笑うロッカ。意外と抜け目ない性格のようだ。
「それじゃあ有り難く借りるよ。助かる」
「礼はいらないさ。俺はヨリのお陰でこの国から脱出出来そうだし、感謝してもしたりないよ」
「脱出? 」
「言っただろ? 金さえあればこの国から出ることが出来る。だからこれはチャンスなのさ」
この国は俺には冷たすぎる、とロッカはため息をついた。
「そうか、元気で」
「そっちこそ、見つかるなよ」
ロッカは俺たちを正規の出入り口ではなく、地下室のような場所に案内した。
「この地下道はいざってときに使うシェルターみたいなものさ。蟻の巣みたいに複雑だけど、城の地下道とも繋がっているはずだ」
「それは凄いな」
思わず声を漏らすとロッカは親指を立てる。
「だろ? これでも俺は偉い兵士なんだ。まあ地上を歩くよりも見つかりにくいと思うよ」
あとこれな。とロッカは俺に紙切れを手渡す。
「これは? 」
どうやらどこかの地図のようだが……。
「地下道の地図だ。蟻の巣みたいに複雑だからかなり迷う。それを見て何とか歩いてくれ」
「ありがとう」
至れり尽くせりだな……と俺は内心呟いた。
こんな誰とも知れないよそ者にここまで良くしてくれるなんて、何だか裏がありそうだと疑うが……。
そんな俺の表情に気がついたのか、ロッカがふっと笑みをこぼした。
「別に君たちを嵌めようって気はないよ。俺はただこの国が嫌いなだけ。滅茶苦茶になっちゃえと思ってるだけさ」
……嘘はついてなさそうだが。
そうだ、一応月読の神衣で調べておこう。
そう考えた俺は彼に握手を求めた。
「じゃあ別れの握手でも」
「ああ」
ロッカは何の疑いもなく俺の手を握った。そのとき頭に流れ込んできたのは……地面に倒れ込むロッカ。
そしてそれを見下ろす長い髪をした美青年。
「余所者の手助けをしたのは君かな、ロッカ」
美青年がにこやかに言葉を紡ぐ。
顔は笑顔だが、そのちぐはぐさが恐ろしい。
「……ぐ……」
相当痛め付けられているのだろう、ロッカは声も出せない。
「余所者の名前を教えてくれないかな? 」
「……」
ロッカは何も言わない。いや、言えないという方が正しいのかもしれない。
そして俺は我に帰った。
今見えたのは……恐らくロッカの不確定未来。
このままだと彼は帝王に殺されるのだ。
「何だい? 青い顔して」
そうとも知らないロッカが怪訝そうに俺の顔を見る。
「……ロッカ、落ち着いて聞いてくれ」
「何だ? 」
「このままだと君は死ぬ。そういう未来が見えた」
「は!? 」
「長い髪をした美しい男だ。彼が君を拷問している未来が見えたんだ」
「そ、そんな馬鹿な。たちの悪い冗談は止してくれよ」
「冗談何かじゃない! 」
これを回避するには一体どうしたら良いのだろうか?
おそらくこのまま別れればロッカは国を出ようと門に行くつもりだろう。きっとそこで捕まるのかもしれない。
「……でも信じられないよ、その、未来予知だなんて」
「ああ俺もそう思う。こんなこといきなりいって頭のおかしい奴だってな。ただ君はこのままではこの国から出られないんだ」
「そうか……」
するとロッカは顎に手を当てて考え始めた。
心配そうに俺たちの様子を見ていたシエルが、きゅっと俺の服の袖を掴む。
「じゃあ俺も行こうかな」
「は? 」
「俺も君たちの冒険に着いていこうってことだ。地図があるとはいえ道案内は必要だろ? 」
「そりゃ有り難いけども……まさかそう来るとは」
ロッカはにっと白い歯を見せて笑った。
「どうせこのまま国を出ようとしても死ぬんだろ? それなら君たちを手伝えば未来が変わるだろ」
「変わるかもしれないけど……でもより酷くなる可能性も……」
「まーまー、そう固いこと言わずに。大丈夫、俺だって兵士の端くれさ」
能天気に笑うロッカだが本当に分かっているのだろうか……。いやまあいきなり君は死ぬと言われて信じる方がおかしいか。
「分かった。道案内をお願いしたい」
「任せろ」
それに複雑な地下道で迷いに迷うよりはマシだ。
俺たちの目的はサクヤの捜索。
別に帝王を暗殺しに来たわけではないのだ。
ロッカはシエルを見てこう続ける。
「俺にも君ぐらいの妹がいたんだ。それを思い出すなあ」
「妹さんが……? 」
「元々体が弱くて死んでしまったけどな。だから俺にとってこの国はいい思い出がないんだ。さっさと出られるなら出たいもんさ」
何も言えずに黙り込む俺たちを見て、ロッカが慌てて言葉を続けた。
「ああごめん、別に暗くするつもりはなかったんだ。ただ君みたいな小さい子を見ると思い出してな」
「……そうか」
「さ、行こうか。君の予知が本物ならあまり同じとこに留まるのもまずいだろ? 」
そう言ってウインク一つするロッカは、強がっているように見えた。
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