チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司

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第51話 謎の世界

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「今帰ったぞー、サクヤー」

 ルーナを引き戻して帰宅する俺たち。
 しかし返事を返したのはシエルだった。

「おかえりなさい」

 まだ眠いのか目が完全に開いていない。
 
「あれシエル起きたのか。サクヤは? 」

「私が起きたら用事があるって言って帰っちゃったよ。また来るみたいです」

 どうも丁度入れ違いになってしまったようだ。
 まあまた来るって言い残したということはきっと大丈夫なのだろう。

 「サクヤさん……ごめんなさい」

 ルーナが入れ違いになったことを気にしたのかしゅんと肩を落とした。そんな彼女に俺は気にするな、と声をかける。

「ふぁあ、私もうちょい寝よかな」

「おいシエル、寝過ぎだぞ」

「疲れちゃったんだもん」

 俺たちが帰って来て安心したのかシエルは再びもぞもぞとベッドに潜り込むと、またすやすやと寝息をたて始めた。

 最近どうもシエルの睡眠時間が長い。本人は別に病気ではないと言っているが心配だ。今度暇を見つけてマインさんに診て貰おうか。

「じゃあ仕方ないな。日を改めるか? 」

 しかしルーナは首を横に振る。

「ううん、今すぐ見てみたい。ヨリがいるなら」

「そうか?  」

 ルーナはアルバムを拾い上げ、俺に差し出した。
 そして真っ直ぐに俺をじっと見つめる。こくりと頷いた彼女は覚悟を決めているようだ。
 その覚悟には応えねばなるまい。

「やり方は私が分かる。お願いヨリ、見守ってて」

「分かった」

 俺はアルバムの端っこを掴む。

「……パパ、一体何を隠してたの? 答えてよ……私に何を見せたくなかったの? 」
 
 ボタボタと大粒の涙がアルバムに染み込んだ。
 
「真実を示せ!!!!! 」

 そのとき、アルバムに淡い光がどんどん集まっていく。まるでルーナの来訪を待っていたかのようだ。
そしてその光は輝きを増していくと、今度はルーナを飲み込もうとゆらゆらと揺らめく。

「な、なに!? これ。やだ!! 」

 予想外の出来事に面食らうルーナ。
 半分パニックにななった彼女は、纏わり付く光を振り払うような動作をする。
 

「ルーナ!! 」

 俺は慌ててルーナの手を握る。
 
「ヨリ! 」

 すると、大きな光は俺たちごと全てを包み込んだのであった。

◇◇◇

 次の瞬間、目を覚ました俺たちの前には見知らぬ町並みがあった。どこか日本の和を体現したような町で、俺は懐かしさに襲われた。例えるなら江戸時代の町並みのようだ。道行く人もサクヤのように着物を纏っている。

「どこだここは……? 俺たちは家にいたはずだ? 」

「ううん……」

「ルーナ! 」

 ルーナも俺より少し遅れて目を覚ましたようだ。
 すぐに周りの変化に気が付き、うわっ! と声をあげた。

『やあ、よく来てくれたね』

「うわっ!? 」

 そしてすぐ側には大きな黒犬が鋭い瞳でこちらを見ていた。

『そう驚かないでくれ。私はベルグの使い魔。ここを守る番人さ』

「番人……? あ、もしかしてルーク?」

 ルーナが何か思い当たる節があるのか、大きく目を見開いた。ルークと呼ばれた黒犬は少しだけ表情を緩める。

『お久しぶりです、ルーナお嬢様』

「やっぱり!! ルークなのね! 」

 話についていけない俺は一人首をかしげた。
 えーっと、ルークはベルグさんの使い魔で、ルーナも会ったことがあると……?

 するとそれに気が付いたルーナが紹介をしてくれた。

「ああ、ルークは本当はケルベロスという魔物。でもパパが契約して、使い魔として使役しているの。最近は見掛けなかったけど……こんなところにいたのね」

『しばらく見ない内に大きくなりましたな。その隣の方は……恋人ですかな? 』

「え!!? 違う違う違う!!! そんなじゃない!!! 」

 顔を真っ赤にしてぶんぶんと手を振るルーナ。
 
「あー、俺はその。付き添いみたいなもんだ」

『ふむ、そうなんですな。しかしルーナお嬢様、素直になった方が上手くいくかもしれませんぞ』

「だ、だから! 」

 ルーナは顔を真っ赤にしたまま反論するが、ルークにとってはどこ吹く風だ。
 そして俺に近付いてくると、しばらく興味深そうに見つめてきた。その深い緑の瞳に吸い込まれそうになる。


『……ふむ、貴方は何か不思議な匂いがするな』

「え、俺臭いですか? 」

 するとルークがケラケラと笑い始めた。

『そういうことではない。何だか主を思い出す、そんな匂いだ』

「主……? 」

『深い眠りについてる主だ』

 主というのはベルグさんのことなのだろうか……?
 ルークの瞳はどこか遠い何かを憂いている、そんな色をしていた。

「そう、ルークはなんでこんなところにいるの? そしてここはどこなの? 」

 ルーナがそんな質問を投げる。
 うん、俺もしようと思っていた最もな疑問だ。

 ルークはまるでその質問を予想していたかのようにさも当然と言った口ぶりでこう答える。
 
『ふむ、お答えしましょう。ここはベルグの作り出した記憶の世界。そして私がここにいるのはこの世界を守るため。これで答えになってますかな? 』

「記憶の世界……? 」

『そうです。ベルグが体験した、知ったことを記録するために作り出した仮想世界なのです』

「つまり、ここは本当の世界ではない……? 」

『そうです。だから貴方たちはここにいる人間に触れることも会話することも出来ません。一切の干渉が許されない世界なのです』

「そう……」

『口で説明するより見た方が早いでしょう。私はここの案内人も担っているのですよ。さあ、行きましょう』

 そう行って踵を返すルークを、俺たちは追いかけ始めた。
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