チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司

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第49話 ソロバトル!?

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 近所を一通り探し回ったがルーナはいない。
 
 ……というか走り回りすぎた過ぎて肺が痛い。

「ルー……ナ……どこだ」

 よく考えれば俺ってこの街のことも、ルーナのこともよく知らないんだなということに気が付いた。シエルと二人、閉じた家で暮らせればそれで良い。そんな気持ちで日々を過ごしていた。

 今彼女を追っているのだってもしかしたら偽善なのかもしれない。

 でも、俺は彼女を追いかけざるをえないのだ。

 いつの間にか町外れの原っぱのようなところに出ていた。ここは人通りのない空き地のような場所で、本当に何もない。

「きゃっ……!!」

 しかしそこに見覚えのある少女と、あれは……ガーゴイルか!? 

 ガタガタと震えるルーナの目の前に、体がグズグズになっているもののまだ息のあるガーゴイルがじりじりと迫っている。

「まずい、生き残りか!? 」

 おそらく俺の魔法で致命傷を負ったものの、ここまで逃げ延びてきた個体なのだろう。流石にここまでは騎士たちも考え付かなかったようだ。

 俺は思わず腰にさした剣に手を伸ばす。どうしよう……まだ一回も実戦経験はないんだけど……。
 というかただこれは飾りで装備しているだけであって……。

 いやいやいや言い訳なんてしている場合じゃない。俺はルーナの前に立ち塞がる。

「ヨリ……!! 」

 ルーナがすがるような声をあげた。

「下がってろ! 」

 手に持つ魔結晶の剣がガタガタと小刻みに震える。あ、あれ? これってこんなに重かったっけ? 一応片手剣のはずなのに異様に重たい。

「グルルル」

 瀕死のガーゴイルが俺に向かって威嚇している。
 
 ーー怖い。今はシエルがいない。
 俺がこいつを倒さなければならない。

 グワオ! という何とも文字に起こしにくい鳴き声をあげた後、ガーゴイルが腕を振り上げた。

 まずい、これに当たれば俺は真っ二つだ。

 すると、脳裏にガーゴイルの腕が俺の右腕を掠める映像が浮かんだ。

「右か……!? 」

 慌てて左に飛び退くと、ガーゴイルの爪が地面に突き刺さる。

「グ!? 」

 まさか避けられるとは思わなかったのか、驚いたように叫ぶガーゴイル。そしてラッキーなことに、鋭い爪が地面に食い込み、身動きが取れなくなっていた。

「まさかこれ……予知か」

 月読の神衣のお陰で少し先の攻撃が見える。
 これも俺が使い方に慣れてきたから出来ることなのだろうか?

 しかしこれは非力な俺にとっては立派なアドバンテージになる。勇者のように強くない俺は、アイテムの力を駆使しなければならない。

 そして身動きが止まった今がチャンスだ。
 この隙に首をーー。

 ーーもう片方の腕で切り裂かれる未来

「あっぶね!」

 不意に振り上げられた爪を俺はひらりとかわす。

 予知のお陰で俺はガーゴイルの囮作戦に引っ掛からずに済んだ。おそらく丸腰だと思い舐め腐っているところを襲うつもりだったのだろう。
 
  その手には引っ掛からねーよ! 残念だったな!

 そして次に見えたのは俺が首を切り落とす未来だ。これは来ても良い未来。今しかない!!

「うおおおお!!!!」

 俺は片手剣を両手で持つと、思い切り振り上げ、そして全身の力を込めてガーゴイルの首に向かって振り下ろした。

 メリメリと嫌な音と、嫌な振動が伝わる。

 そして鼓膜が破れそうなほどのガーゴイルの断末魔と共に、ごろりと首が切り落とされた。

「よっしゃ! 」

 危ない危ない。何とか勝てた。
 でも瀕死のガーゴイルと良い勝負って俺って相当弱いんだな……。
 それに一つ分かったことはやっぱり俺は肉体戦には向いてない。遠くからちまちま安全に魔法を撃っている方が性に合う。
 魔法ならひたすら魔力を回復し続ければ何とかなるしな……。うん、今度からはこれで行こう。

 そんなことを考えていると、後ろからドンという衝撃と共に、ルーナが抱きついてきた。

「ヨリ……!! 」

「おっと」

 思わずバランスを崩しそうになるのを何とかこらえ、彼女を支える。

「ありがとう、私怖くて……殺されるかと思った」

「いや、そのなんだ。無事で良かった」

 ボロボロと子どものように泣きながらルーナは俺の服をぎゅっと掴む。
 その細い体は震えていて、本当に怖かったのだろう。

 ……こういうときどんな言葉をかければ良いのか本当に分からない。抱き返したら流石にキモいよな? セクハラで訴えられたらどうしよう?

 でもずっと無言なのも気まずいし……いやいやでも変なこと言って変な空気になるのも嫌だし。

 こういうときモテる男ならきっと上手く慰められるんだろうなぁなんて下らないことを考えながら俺はただ泣き続けるルーナをそっと見守っていた。

「ヨリって、かっこいいんだね」

「え? 」

「……何でもない」

 そうルーナは言うと、ちろりと舌を出しておどけてみせた。
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