チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司

文字の大きさ
上 下
25 / 64

第24話 念願の

しおりを挟む
「どうですかヨリ! 似合いますか? 」  

「あーあー、似合う似合う」

 背中の痣も消えてすっかり元気を取り戻したシエルは、買ったばかりのワンピースを着て嬉しそうにくるくる回っている。

 俺は荷物持ちとしてシエルに駆り出されていた。

「後は普段着で洗いやすいような服で良いか……」

「あ、ヨリ! これ! 」

 ご機嫌なシエルが指をさしたのはアクセサリーを売っている露店だった。
 大きな宝石が嵌め込まれた銀の腕輪や、結晶を加工した首飾りなど、色々なものが売っている。
 そして何より、どれもこれも良いお値段だ。

「子どもにアクセサリーなんて早いんじゃねえか」

「違いますよ! こっちです」

 シエルがぷりぷり怒りながら手に取ったのは小さなイヤリングだった。

 小振りな結晶がついているだけのシンプルなデザインだ。そして商品名には「比翼のイヤリング」と書かれていた。

「何だこれ? 」

「それは心の通じ合った男女が一つずつ身に付けるマジックアイテムさ」

 横から店員らしきおじいさんが顔を覗かせた。
 そして俺たち二人を食い入るように見つめると、にたりと意味深な笑みを浮かべる。

「何だいお二人さん、随分変わった組み合わせだねえ。こりゃ男女の仲じゃあなさそうだな」

「当たり前だ! 」

 断じて俺はロリコンなどではない! 
 これだけは命を懸けて誓おう!!
 俺は、年下の女の子を手込めにして喜ぶような趣味はないと!

「なぁに別に心を通じ合わせるのは恋人だけじゃないさ。そのアイテムは片方がピンチになったときに居場所を教えてくれる、そんな魔法がかけられているんだよ」

「へえ……」

 確かにそれは便利そうだな。
 魔法が使えない俺にとって、シエルとはぐれたときに探すのはかなり骨が折れる。
 なにせスマホなんてものはないので連絡を取り合うことが出来ないのだ。

「よし、買おう」

 言わばGPS機能付きのキッズケータイみたいなものだ。うん。そうそう、別に艶っぽい意味はない。

「毎度、5万ゴールドね」

「はいはい」

 5万ゴールドか……。高いな。でもアクセサリーってのはこのぐらいはするのだろう。
 
 おじいさんからイヤリングを受け取った俺は片方をシエルに投げ渡す。

「ほらよ、シエル」

「ありがとう」

 シエルは嬉しそうに目を細めると、自分の右の耳たぶにイヤリングを装着した。

「ヨリは左に着けて下さいね! 」

「ええ!? 俺も着けるの!? 」

 アクセサリーなんて着けたことない俺は気恥ずかしさで死にそうだ。これ、肌身離さず持ってれば良いんじゃないの……? 駄目……?

 しかしシエルはプンと口を尖らせていて、許してはくれそうにない。

「当たり前です」

「分かったよ……」

 シエルの剣幕に負けて渋々イヤリングを着けてみる俺。うわ、いてえ!! 何だか耳たぶに違和感を感じる。
 お洒落な人ってのは毎日こんな拷問みたいなことをしていたのか……そう考えるとああいう人たちって凄いんだな。

「ほら、着けたぞ」

 俺は左耳をシエルに見せる。
 すると、シエルはぱぁと太陽のような笑顔を見せた。

「おそろいですね! 」

「……そうだな」

 アラサーにもなる男が何やってるんだろうか。だがまあ悪い気はしない。

「じゃあ服も買えたしそろそろ帰るか」

「うん」

 そのときシエルが何かを見つけたかのようにはっと振り返った。

「シエル? 」
 
「誰かがこっちを見てます、多分一人かと」

「え? 誰だ」

 まさかこの前の荒くれものだったら……。いや奴等に一人で来る勇気はないか。

「追い返しますか? 」

「いや良い。ほっておこう。」

「分かりました」

 こうして俺たちは後ろを気にしつつも、帰路に着いたのである。
 俺たちを尾けるなんて一体誰だ? 正直な話、俺には思い当たる節がないのだった。

 
 
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。 果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...