チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司

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第18話 謎の商人 サクヤ

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  なるほど、どうやらこの世界では奴隷に対してまだまだ差別と言うものがあるらしい。
 日本で育った俺にはイマイチピンと来ないのだが、俺が世間知らずだったせいでシエルを傷付けてしまった。

 俺の手を強く握りながら歩くシエルが不意に口を開いた。

「あの、私は大丈夫です。あの服も、実はそんなに欲しくなかったですし」

「シエル……」

「それに今の服も気に入ってるんです。確かに汚れているけど、洗えばまだまだ使えます」

 空元気なのは見て明らかだった。
 目にはうっすら涙が浮かんでいて、でも泣かまいと必死に唇を噛んで耐えていた。

「なあシエル、その、背中の刻印はどうすれば消えるんだ? この前は無理だと言っていたが、方法がまったくない訳じゃないだろう」

「……」

 シエルは口をつぐんでいたが、不意に喋り始めた。

「……確かにあります。これを付けられたときに、魔法使いのおじさんが言っていました。これを消せるのは天使の涙というアイテムぐらいだろうと」

「天使の涙? 」

 何だか凄そうな名前だ。
 いかにもレアアイテムなのだろうということが伝わってくる。

「はい、究極の回復アイテムです。あらゆる怪我や病気を治すと言われています。ですがほんとにそんなものがあるのかは分かりません。あくまでも言い伝えですから」

  確かにこの辺りの店で売っているという話は聞いたことないな。
 この辺りの道具屋には売っていなそうだ。

「なるほど。それさえあればシエルを……」

 とんでもないです! とシエルが目を丸くした。

「もしあったとしても高価です。とてもじゃないけど……買えませんよ」

 お金の問題ならなんとかなるんだよな、と俺はひそかに思っていた。

 そのとき、何かお探しなん? という元気な声が響いた。

 思わずそちらに視線を向けると、そこにいたのは切り揃った黒髪を艶めかせ、唇にひいた紅が印象的な着物の美少女。
 背中にはその身長に似つかわない大荷物を抱えている。

 思わずここは日本か? と錯覚してしまいそうな出で立ちだ。
 
 彼女の肩には狐のような小動物が長い尻尾をゆらゆらさせて、こちらを睨んでいた。

「すまんな、ちょっと話盗み聞いてしもたわ」

 日本の色々な方言が混ざったような不思議な喋り方だ。

「君は? 」

「うちはサクヤ。流浪の商売人や」

「商売人? 」

 そ、とサクヤと名乗る少女が頷く。

「古今東西、あらゆるアイテムを取引するカリスマ商売人、サクヤ様と言えばうちのことよ」

 見るからに胡散臭いな……しかし胸を張って自己紹介をするサクヤはどことなく自信がありそうだ。

「あらゆるアイテムか……それって本当なのか? 」

 うちを舐めて貰っちゃ困ります、とサクヤは指を振る。

「うちが売れないアイテムなんてこの世にありませんわ。何か探してるんやろ? ほら、言うてみい」

 しかし俺が話すより先に、サクヤはあっと小さく声をあげた。

「商いの話をこんな道の真ん中でするもんじゃありませんな。こりゃうちの配慮不足だったわ。お二人さん付いてきて、うちの店で話をしましょうや」

 俺とシエルははたと顔を見合わせ、お互いにどうしようかと目で訴えた。しかし、一先ず彼女の後を付いていくことにした。
 
 サクヤ、イマイチ信用は出来ないが、藁にもすがりたい気分だったからだ。

 もし天使の涙とやらが手に入れば、シエルを呪いから解放することが出来るかもしれない。

 あまり過度な期待をするのは良くないが、何か手がかりが掴めれば良いな。
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