15 / 64
第14話 二人でご飯
しおりを挟む
お腹も空いたし、シエルを連れてルーナの食堂に来た俺たち。
「いらっしゃーい、あらヨリじゃない! 」
ルーナは依然として明るく接客をしている。
「ひっ……」
ルーナの大きな声にびっくりしたのか、シエルが小さく悲鳴をあげて俺の背中に隠れる。
「んん? その子は初めて見る子だね……すっごく綺麗な女の子だ! 」
「ああ彼女は……」
ここは何と誤魔化すのが正解だろうか。友達、にしては年が離れすぎているし、妹にしては似ていない。恋人、なんて論外だし、奴隷を買ったなんて馬鹿正直に答えるのもナンセンスだ。
「娘みたいなものだ」
娘とは言っていない。娘みたいなものだ。
ルーナはふーんと少々怪訝そうな顔をしたものの、それ以上何も聞いては来なかった。どうやら複雑な事情があるのだと想像したらしい。
「シエルは少々人見知りだからな、あんまりいじらないでやってくれ」
「シエルちゃんって言うのね。可愛い~~! 本当は抱き締めたいけど我慢するわ」
ルーナはさあさあ、座って。と俺たちを席に案内してくれた。
「お腹空いてるだろ? 何でも頼んで良いぞ」
「え、でも……」
遠慮がちにもじもじとするシエル。
「遠慮するな。このパワフルデラックスランチなんて美味かったぞ」
写真を指差すと、シエルは美味しそう! と目を輝かせる。
しかしすぐにはっとしたような表情をすると、首を横に振り始めた。
「い、いや私はこのサラダだけで大丈夫です」
「それだけで足りるのか? シエルは細すぎだぞ、もっと食べた方が……」
「良いんです! 」
まあ彼女にも彼女の事情があるのか……。しかしシエルはしょぼんとした様子でランチを見つめている。
「注文決まったー? 」
「ああ。パワフルデラックスランチ1人前とサラダで」
「はーい」
注文を取り終えたルーナがパタパタと厨房へと消えていく。
シエルはその様子を不思議そうに見つめていた。
「凄いです……外の世界はこうなっているのですね」
「外の世界って……シエルは奴隷だった期間が長いのか? 」
「そう、ですね」
顔を曇らせるシエル。まずい、聞いてはいけないことに触れてしまったのかもしれない。
「ま、過去なんて関係ないよな。変なこと聞いて悪いな」
シエルは曖昧に微笑んだだけで、特に何も言わなかった。
そうしてポツポツ雑談をしているうちに、注文した料理が運ばれてきた。
「はーいお待たせ。サラダは誰? 」
「俺だ」
えっ!? とした顔でシエルが目を丸くする。
「シエルちゃんがランチね。じゃあごゆっくり」
「あ、あの。注文逆です。私がサラダで……」
「あれ? そんなの? 」
ルーナが俺を見つめる。
「いや、合ってるぞ。もうこの年になると胃が弱くてな。美味しいから頼んでみたが今日はキツそうだ。シエル、代わりに食べてくれないか? 」
「ヨリはもうおっさんだねー。ほらほら、シエルちゃん食べちゃいなよ」
シエルの目が輝き始めた。
そして数回確かめるように俺と料理を見る。
俺が黙って頷いてやると、シエルは勢い良く食べ始めた。
「良い食べっぷり。……粋なことするね」
ルーナがちらりと俺を見たが、俺は何のことだか、と彼女から視線を逸らした。
「いらっしゃーい、あらヨリじゃない! 」
ルーナは依然として明るく接客をしている。
「ひっ……」
ルーナの大きな声にびっくりしたのか、シエルが小さく悲鳴をあげて俺の背中に隠れる。
「んん? その子は初めて見る子だね……すっごく綺麗な女の子だ! 」
「ああ彼女は……」
ここは何と誤魔化すのが正解だろうか。友達、にしては年が離れすぎているし、妹にしては似ていない。恋人、なんて論外だし、奴隷を買ったなんて馬鹿正直に答えるのもナンセンスだ。
「娘みたいなものだ」
娘とは言っていない。娘みたいなものだ。
ルーナはふーんと少々怪訝そうな顔をしたものの、それ以上何も聞いては来なかった。どうやら複雑な事情があるのだと想像したらしい。
「シエルは少々人見知りだからな、あんまりいじらないでやってくれ」
「シエルちゃんって言うのね。可愛い~~! 本当は抱き締めたいけど我慢するわ」
ルーナはさあさあ、座って。と俺たちを席に案内してくれた。
「お腹空いてるだろ? 何でも頼んで良いぞ」
「え、でも……」
遠慮がちにもじもじとするシエル。
「遠慮するな。このパワフルデラックスランチなんて美味かったぞ」
写真を指差すと、シエルは美味しそう! と目を輝かせる。
しかしすぐにはっとしたような表情をすると、首を横に振り始めた。
「い、いや私はこのサラダだけで大丈夫です」
「それだけで足りるのか? シエルは細すぎだぞ、もっと食べた方が……」
「良いんです! 」
まあ彼女にも彼女の事情があるのか……。しかしシエルはしょぼんとした様子でランチを見つめている。
「注文決まったー? 」
「ああ。パワフルデラックスランチ1人前とサラダで」
「はーい」
注文を取り終えたルーナがパタパタと厨房へと消えていく。
シエルはその様子を不思議そうに見つめていた。
「凄いです……外の世界はこうなっているのですね」
「外の世界って……シエルは奴隷だった期間が長いのか? 」
「そう、ですね」
顔を曇らせるシエル。まずい、聞いてはいけないことに触れてしまったのかもしれない。
「ま、過去なんて関係ないよな。変なこと聞いて悪いな」
シエルは曖昧に微笑んだだけで、特に何も言わなかった。
そうしてポツポツ雑談をしているうちに、注文した料理が運ばれてきた。
「はーいお待たせ。サラダは誰? 」
「俺だ」
えっ!? とした顔でシエルが目を丸くする。
「シエルちゃんがランチね。じゃあごゆっくり」
「あ、あの。注文逆です。私がサラダで……」
「あれ? そんなの? 」
ルーナが俺を見つめる。
「いや、合ってるぞ。もうこの年になると胃が弱くてな。美味しいから頼んでみたが今日はキツそうだ。シエル、代わりに食べてくれないか? 」
「ヨリはもうおっさんだねー。ほらほら、シエルちゃん食べちゃいなよ」
シエルの目が輝き始めた。
そして数回確かめるように俺と料理を見る。
俺が黙って頷いてやると、シエルは勢い良く食べ始めた。
「良い食べっぷり。……粋なことするね」
ルーナがちらりと俺を見たが、俺は何のことだか、と彼女から視線を逸らした。
6
お気に入りに追加
3,045
あなたにおすすめの小説
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる