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第9話 いきなりピンチ
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亜空間カバンもそれなりに便利だ。
あの大量の魔結晶を放り込んでもまだまだ余裕がある。
ついでに回復薬というものも買ってみた。体力のない俺にはいずれ使う日が来るだろう。
一口飲んでみると日本の栄養ドリンクに青汁を足したような微妙な味わいをしている。
本当にこんなんで体力が回復するのだろうか……? まあ薬と考えれば不味いのは納得だが。
そして肝心のお金もまったく減っていない。
やはり俺の所持金は減るということを知らないらしい。
「店員に滅茶苦茶お礼言われたな……お店が始まって以来の上客らしいな」
まああれだけ爆買いするお客もそうそういないだろう。ただ俺一人にお金が集中して経済バランスが崩れたりしないのだろうか……?
しばらく考えてみたが頭の悪い俺にはよく分からなかった。まあ一気に使わずにちょこちょこ使っていけばそうそう変なことにはならないだろう。
……多分。
さあ、次は何を買おうかなーと鼻唄混じりに店を眺めていると、いつの間にか人気のない路地裏に入っていたようだ。
ゴミの臭いが充満していて、タバコの吸い殻や空き瓶が転がっている。あまり治安は良くなさそうだ。
危ない危ない。まだ土地勘がないため、うっかりしていると迷子になってしまいそうだ。
慌てて踵を返そうとすると、何者かに肩を叩かれた。
「おい」
「はい? 」
振り向いた瞬間、俺は頬に強い衝撃を受けて、吹き飛ばされた。
壁に叩き付けられ、悶絶する俺。
口のなかに血が広がった。
「見てたぜ兄ちゃん、景気が良いじゃないの」
恐る恐る顔をあげると、そこにはゴリゴリマッチョで、全身傷だらけの大男。背後には仲間らしき連中二、三人がニヤニヤ笑っている。
「俺たち今、金に困ってるんだ。ちょっと貸してくれないかなあ? 」
しまった。こいつら、俺が爆買いしているところを見て目をつけたようだ。
俺としては迂闊だった。あんな大衆の面前で目立つことをしては狙われるのは当たり前だ。
浮かれきっていた俺は回り込み様子を警戒することをすっかり忘れていた。
「このカバン、俺たちにくれよな」
グイと俺のカバンを引っ張る大男。俺は取られまいと必死に抑えるが、鳩尾に再び蹴りを入れられて、その手を離してしまった。
「ぐはっ…… 」
再び叩き付けられる俺。
口の中に血の味が広がり、胃の中のものが逆流してくるのが分かった。
「雑魚は大人しく渡しときゃ良いのよ。じゃあな兄ちゃん、この恩は忘れないよー」
カバンを強奪した奴等が、バタバタと路地裏の奥へと消えていく。
まずい、あれを取られては俺の薔薇色生活もお仕舞いだ……。
しかしボロボロにやられたので立つことも出来ない。
せめて回復薬さえあればな……。俺は近くに落ちていた汚い袋の中をまさぐる。運良く回復アイテムが入っていれば良いんだけど……。
勇者ってもんはタンスやタルを漁ってアイテムを入手するもんだろ? ……まあ俺は勇者ではないけも。
「ん? 」
そこから出てきたのは大量のゴールド。
慌てて中身を覗く俺。
そこにはあのもはや見慣れた亜空間に大量のゴールド、そして大量のアイテムが並んでいる。
ど、どういうことだ……?
まさかあの能力はあのカバンでしか発動しないというわけではないのか?
俺が触れた袋の物体だったら何でも良いのか……。そして全ての空間が繋がっているようだ。
そうすると俺がもうあのカバンを追いかける理由はないっちゃないんだけど……。
だが良い思い出がないとは言え日本から持ってきた唯一の私物、あんな奴等に奪われるのは癪だ。
「よし」
そう考えた俺は、回復薬を飲み干すと、袋を引き摺りながら彼らを追いかけ始めたのである。
見てろ、俺から物を盗んだことを後悔させてやる。
あの大量の魔結晶を放り込んでもまだまだ余裕がある。
ついでに回復薬というものも買ってみた。体力のない俺にはいずれ使う日が来るだろう。
一口飲んでみると日本の栄養ドリンクに青汁を足したような微妙な味わいをしている。
本当にこんなんで体力が回復するのだろうか……? まあ薬と考えれば不味いのは納得だが。
そして肝心のお金もまったく減っていない。
やはり俺の所持金は減るということを知らないらしい。
「店員に滅茶苦茶お礼言われたな……お店が始まって以来の上客らしいな」
まああれだけ爆買いするお客もそうそういないだろう。ただ俺一人にお金が集中して経済バランスが崩れたりしないのだろうか……?
しばらく考えてみたが頭の悪い俺にはよく分からなかった。まあ一気に使わずにちょこちょこ使っていけばそうそう変なことにはならないだろう。
……多分。
さあ、次は何を買おうかなーと鼻唄混じりに店を眺めていると、いつの間にか人気のない路地裏に入っていたようだ。
ゴミの臭いが充満していて、タバコの吸い殻や空き瓶が転がっている。あまり治安は良くなさそうだ。
危ない危ない。まだ土地勘がないため、うっかりしていると迷子になってしまいそうだ。
慌てて踵を返そうとすると、何者かに肩を叩かれた。
「おい」
「はい? 」
振り向いた瞬間、俺は頬に強い衝撃を受けて、吹き飛ばされた。
壁に叩き付けられ、悶絶する俺。
口のなかに血が広がった。
「見てたぜ兄ちゃん、景気が良いじゃないの」
恐る恐る顔をあげると、そこにはゴリゴリマッチョで、全身傷だらけの大男。背後には仲間らしき連中二、三人がニヤニヤ笑っている。
「俺たち今、金に困ってるんだ。ちょっと貸してくれないかなあ? 」
しまった。こいつら、俺が爆買いしているところを見て目をつけたようだ。
俺としては迂闊だった。あんな大衆の面前で目立つことをしては狙われるのは当たり前だ。
浮かれきっていた俺は回り込み様子を警戒することをすっかり忘れていた。
「このカバン、俺たちにくれよな」
グイと俺のカバンを引っ張る大男。俺は取られまいと必死に抑えるが、鳩尾に再び蹴りを入れられて、その手を離してしまった。
「ぐはっ…… 」
再び叩き付けられる俺。
口の中に血の味が広がり、胃の中のものが逆流してくるのが分かった。
「雑魚は大人しく渡しときゃ良いのよ。じゃあな兄ちゃん、この恩は忘れないよー」
カバンを強奪した奴等が、バタバタと路地裏の奥へと消えていく。
まずい、あれを取られては俺の薔薇色生活もお仕舞いだ……。
しかしボロボロにやられたので立つことも出来ない。
せめて回復薬さえあればな……。俺は近くに落ちていた汚い袋の中をまさぐる。運良く回復アイテムが入っていれば良いんだけど……。
勇者ってもんはタンスやタルを漁ってアイテムを入手するもんだろ? ……まあ俺は勇者ではないけも。
「ん? 」
そこから出てきたのは大量のゴールド。
慌てて中身を覗く俺。
そこにはあのもはや見慣れた亜空間に大量のゴールド、そして大量のアイテムが並んでいる。
ど、どういうことだ……?
まさかあの能力はあのカバンでしか発動しないというわけではないのか?
俺が触れた袋の物体だったら何でも良いのか……。そして全ての空間が繋がっているようだ。
そうすると俺がもうあのカバンを追いかける理由はないっちゃないんだけど……。
だが良い思い出がないとは言え日本から持ってきた唯一の私物、あんな奴等に奪われるのは癪だ。
「よし」
そう考えた俺は、回復薬を飲み干すと、袋を引き摺りながら彼らを追いかけ始めたのである。
見てろ、俺から物を盗んだことを後悔させてやる。
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