チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

プロローグ

 飛び降りってやっぱ痛いのかな？
 そんなことを考える俺の名前は桐山頼人。28才。

 俺は会社の屋上のきわでただ立ち尽くしていた。頬に当たる風が気持ち良い。しかし少し下を見ると、思わず身震いしてしまうほど高い。

 しかもあと数分後には俺はここから飛び降りて、真下のコンクリートに叩き付けられて見るも無惨な死体になっているのだろう。

 はは、飛び降り自殺者が出るなんてこんなブラック企業でも困るだろう。ざまあみやがれ。

 ーー思えば金に困った人生だった。

 ガキだった頃は家が貧乏だったのでゲーム機なんて買って貰えたこともないし、高級アイスの味も知らなかった。
 服だって兄ちゃんのお下がりだったからいつもボロボロだったし、お腹いっぱいご飯を食べたことはない。

 早く自分で稼いで裕福な生活を夢見ていたが大人になってからもあまり変わらなかった。
 朝から晩まで一心不乱に働いても学のない俺に与えられたのは雀の涙ほどの給料で、それも税やらなんやらでほとんど持っていかれてしまう。

 もし俺にお金があればこんな状況になっていなかったのだろう。

 大学だって行けたし、飯だってお腹いっぱい食べることが出来た。
 そうすればこんなブラック企業で心身共にボロボロにされることもなかっのだろう。

「どーぞ神様、来世では俺を金持ちにしてください」

 そう呟いた俺は、空中に体を投げ出した。

 バイバイ世界、最高にクソなところだったよ。

 そしてそのとき、魔方陣のようなものが空中に浮かび上がったかと思うと、投げ出された俺の体が吸い込まれていく。

 人間は死ぬとき、こうやって死ぬのだろうか？ 意外とファンタジーなんだな、と下らないことを俺は最期に考えていたのだった。