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第15話 接触
しおりを挟む「じゃあやるぞ」
「う、うん」
ルティがあたしの顎を持ち上げる。
すると、そっとあたしの唇に自分の唇を重ね合わせた。
軽く触れるぐらいのキス。ま、まあこのぐらいなら挨拶みたいなものだろう。
と、思っていた次の瞬間。
「んん!?? 」
生暖かいものがあたしの口内に侵入してくるのが分かった。それが彼の舌であることに気が付いたのは少し後だ。
思わず逃げようと腰を引くあたしだったが、逃がすまいと彼にがっちりと腰を支えられている。
「んあっ……ま、待って……」
彼の舌がまるで生き物のようにあたしの口の中を這う。ぴちゃぴちゃという水音がやけにいやらしい。
あたしが彼の体を押し退けようとしても、ルティは掴んで離さない。
軽いキスなんてもんじゃない、あたしが前世でも彼氏としたことがないような貪るような口付けだ。
頭がビリビリと痺れて、何をされているのかよく分からなくなってきた。あたしは今、どこで何をしているんだっけ?
薄目で目を開くと、ルティの長い睫が伏せられているのが見えた。彼にとってこれはスキンシップなどではない。ただ魔力を与える、それだけの行為であり意味はない。
しかしこの身を貫くような快楽は何なのだろうか、魔力が体内に入っている、その影響なのか?
「これぐらいだろう」
あたしがその行為から解放されたのはその後すぐであった。ぱっと体を離されたあたしは思わずその場に崩れ落ちた。
まだ体が熱い。それに心臓がバクバクと早鐘を打ったように動く。
「はぁ……はぁ……」
あたしは肩で息をしながら、何も考えられなくなっていた。
「どうした? これで魔法が使えるぞ」
「そ、そうなのね。ありがとう」
「だが恐らく使えて数十回程度だろうな。より深い接触を行えばより魔力を与えることが出来るが……」
「よ、より深い接触……? 」
「そうだ。口内から与えられる量には限界がある」
「それはまた今度で良いわ。とりあえず使えるんでしょ? 」
より深い接触なんてしたら一体あたしはどんな風になってしまうんだろう、そう考えると下っ腹が疼くような気がした。
……って何考えてるのあたしは。まさかされたいなんて思っちゃった?
雑念を振りきるように、あたしは今使える魔法を確認しようと目を閉じる。するとステータスが浮かび上がってきた。
『混沌回復魔法』
『混沌防御魔法』
『混沌解毒魔法』
『混沌の矢』
『混沌解呪魔法』
おおう……何か全部の魔法に混沌という文字がついている。しかし魔法が使えるようになったのは本当らしい。
「これで使えただろ? 」
「うん! ありがと」
あたしはにっと笑顔を浮かべる。
そうと決まれば早速確かめてみたくなるのが人間の性というもの。
丁度良く現れたスライムに向かって、あたしは混沌の矢を唱えた。
すると地面がゆらゆらと揺れたかと思うと、次の瞬間まるで生き物のように真っ暗な物体がスライムの体を貫いた。
そしてそのまま溶けるように魔物の姿は消え去ってしまったのだ。
「うわあ……凄い……」
「ふむ、我の力を貸し与えているのだ。これぐらい出来なければ困る」
そしてルティはあたしの方を向くと、ちろりと舌を出してこう言った。
「もっと凄いことを出来るようにもなるが、どうする? 」
「結構です!! 」
あたしの声が森中に反響したのだった。
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