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夏
第25話 どうしよう?
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結局あの後、ミシェルにかける言葉が見つからないまま俺は次の日を迎えた。
急を要するようで彼女は結局今日出発してしまう。
お見送りに行かないかとシャロンに声をかけられたが、何だか顔を合わせづらくて、俺は断ってしまった。
シャロンたちはどうやらミシェルがいなくなるのは騎士団の事情と言われているらしい。
彼女の家柄のことは誰も知らないようだ。
「なーにを悩んどるんじゃ」
「え? 」
ミシェルの見送りにも行けず、途言っても特に他にやることもない俺はただぼんやりとしていたところをフレイアに見つけられる。
頭の切れる彼女のことだ、俺の悩みに気が付いたのだろう。
「あの変態女騎士のことじゃろ? 」
「はは……フレイアには分かるか」
当たり前じゃろ、とフレイアが笑う。
「人間っていうのはよく分からん。ここにいたいならいれば良い、なぜしたくもない結婚をする? 」
「それは仕方ないさ、貴族の事情というのは一筋縄ではいかないんだ」
「ふむ? その事情とやらは個人の感情を無視してでも大事なことなのか? 」
それは……。と俺は思わず口ごもる。
神であるフレイアには分からないのかもしれない。人間同士の煩わしさ、めんどくささ、そしてどうしようもなさを。
「人間の世は弱肉強食なんだよ……」
「それは神の世界も同じじゃ。でもそれで言うとおかしいの、アレスは強者であるはずじゃが」
俺は自嘲気味に鼻で笑う。
俺が強者? そんなことはない。確かにたまたま死神と縁を持ってしまったかもしれないか、俺自身はただの落ちこぼれだ。
「まーだ落ちこぼれだのなんだのうじうじしとるんか。アホらしいの。どうせならもっと好きに生きれば良いと思うんじゃが」
好きに生きろと言われても……。
「……やり方が分からない」
簡単じゃ、とフレイアが俺に後ろから抱きつくと、耳元で囁く。
「欲しいものは奪え、お前にはそれだけの力がある」
ーー悪魔の囁きだ
いつもはぼやっとしたフレイアは死神なのだと実感する。
神と人、相容れない何かがそこにはある。
「それじゃ魔物と同じだ。俺は理性ある人間だ」
「別に殺せなんて言ってない。ただお前はあの女を救いたいのだろう? ここにいて欲しいのだろう? 」
それならばやることは一つしかないはずだが、とフレイアが笑う。
「……貴族を敵に回すのか」
「敵に回す? ふふふ、死神に牙を剥いたのは向こうじゃないかのう」
言っておくがの、とフレイアが笑う。
「アレスには騎士女の一族全員の魂を今すぐ抜くことだって出来るんじゃよ? 」
薄々それは気がついていた。でも俺はそれをしたいとは思わない。
「……俺はミシェルに最後に会いたいだけだ。ただそれだけだぞ」
「ふふ」
「行くぞフレイア、ミシェルが行ったであろうミストリウス国領へ」
「その言葉が聞きたかったのじゃ、アレス」
別に貴族をどうにかしたいという訳ではない。ただミシェルの信念を、気持ちを、踏みにじるようなことはしたくないというのが俺の気持ちだ。
これはただのエゴなのかもしれない、でも俺には彼女の祈りを無視することは出来なかった。
◇◇◇
「ほう、ここがミストリウスの屋敷か」
「しーっ、静かにフレイア」
結局来てしまった……。
ミシェルの実家であろうお屋敷に。
どうやらミシェルが到着するより早く着いてしまったらしい、人気がない。
「誰もいないな……あー、でも来たは良いけど俺はどうしたら良いんだ……」
「ふーむ、まずは平和的交渉といくのはどうかの? 結婚とやらは騎士女の親が決めるのじゃろ? それならそいつに話にいくのじゃ! 」
「ええ……」
今のミストリウス家のトップはユーゴ=ミストリウス。やり手なようだが、部下への虐待や賄賂など黒い噂もある人物だ。
「とても話が通じるとは思えないぞ……」
「まあまあ! ものは試しと言うじゃろ? 駄目なら別の方法を……ね」
そう言ったフレイアの瞳が怪しく光ったのを俺は見逃さなかった。
急を要するようで彼女は結局今日出発してしまう。
お見送りに行かないかとシャロンに声をかけられたが、何だか顔を合わせづらくて、俺は断ってしまった。
シャロンたちはどうやらミシェルがいなくなるのは騎士団の事情と言われているらしい。
彼女の家柄のことは誰も知らないようだ。
「なーにを悩んどるんじゃ」
「え? 」
ミシェルの見送りにも行けず、途言っても特に他にやることもない俺はただぼんやりとしていたところをフレイアに見つけられる。
頭の切れる彼女のことだ、俺の悩みに気が付いたのだろう。
「あの変態女騎士のことじゃろ? 」
「はは……フレイアには分かるか」
当たり前じゃろ、とフレイアが笑う。
「人間っていうのはよく分からん。ここにいたいならいれば良い、なぜしたくもない結婚をする? 」
「それは仕方ないさ、貴族の事情というのは一筋縄ではいかないんだ」
「ふむ? その事情とやらは個人の感情を無視してでも大事なことなのか? 」
それは……。と俺は思わず口ごもる。
神であるフレイアには分からないのかもしれない。人間同士の煩わしさ、めんどくささ、そしてどうしようもなさを。
「人間の世は弱肉強食なんだよ……」
「それは神の世界も同じじゃ。でもそれで言うとおかしいの、アレスは強者であるはずじゃが」
俺は自嘲気味に鼻で笑う。
俺が強者? そんなことはない。確かにたまたま死神と縁を持ってしまったかもしれないか、俺自身はただの落ちこぼれだ。
「まーだ落ちこぼれだのなんだのうじうじしとるんか。アホらしいの。どうせならもっと好きに生きれば良いと思うんじゃが」
好きに生きろと言われても……。
「……やり方が分からない」
簡単じゃ、とフレイアが俺に後ろから抱きつくと、耳元で囁く。
「欲しいものは奪え、お前にはそれだけの力がある」
ーー悪魔の囁きだ
いつもはぼやっとしたフレイアは死神なのだと実感する。
神と人、相容れない何かがそこにはある。
「それじゃ魔物と同じだ。俺は理性ある人間だ」
「別に殺せなんて言ってない。ただお前はあの女を救いたいのだろう? ここにいて欲しいのだろう? 」
それならばやることは一つしかないはずだが、とフレイアが笑う。
「……貴族を敵に回すのか」
「敵に回す? ふふふ、死神に牙を剥いたのは向こうじゃないかのう」
言っておくがの、とフレイアが笑う。
「アレスには騎士女の一族全員の魂を今すぐ抜くことだって出来るんじゃよ? 」
薄々それは気がついていた。でも俺はそれをしたいとは思わない。
「……俺はミシェルに最後に会いたいだけだ。ただそれだけだぞ」
「ふふ」
「行くぞフレイア、ミシェルが行ったであろうミストリウス国領へ」
「その言葉が聞きたかったのじゃ、アレス」
別に貴族をどうにかしたいという訳ではない。ただミシェルの信念を、気持ちを、踏みにじるようなことはしたくないというのが俺の気持ちだ。
これはただのエゴなのかもしれない、でも俺には彼女の祈りを無視することは出来なかった。
◇◇◇
「ほう、ここがミストリウスの屋敷か」
「しーっ、静かにフレイア」
結局来てしまった……。
ミシェルの実家であろうお屋敷に。
どうやらミシェルが到着するより早く着いてしまったらしい、人気がない。
「誰もいないな……あー、でも来たは良いけど俺はどうしたら良いんだ……」
「ふーむ、まずは平和的交渉といくのはどうかの? 結婚とやらは騎士女の親が決めるのじゃろ? それならそいつに話にいくのじゃ! 」
「ええ……」
今のミストリウス家のトップはユーゴ=ミストリウス。やり手なようだが、部下への虐待や賄賂など黒い噂もある人物だ。
「とても話が通じるとは思えないぞ……」
「まあまあ! ものは試しと言うじゃろ? 駄目なら別の方法を……ね」
そう言ったフレイアの瞳が怪しく光ったのを俺は見逃さなかった。
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