落ちこぼれ神父、死神と契約して僻地に飛ばされたのでスローライフを送ります

寿司

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第20話 神父を超えて

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 ゴロツキをいなして町に戻ってきた俺たち。うん、特に変わりはなさそうだ。
 早速作物を売って得たお金をカールに届けに行く。
 
 俺たち二人で暮らす分のお金は確保したし、後は町の発展に役立てて貰おう。
 フレイアは少し不満そうではあったが、仕方ないのうと渋々納得してくれたのだった。

「さ、三千万ガルド!? 」

 袋にたんまり入ったお金を見てカールは目玉が飛び出しそうなくらい驚いていた。
 
「はい。ああ、多少俺たちのものを使うのに使ってしまいましたが」

「こ、こ、こ、これを全てイルゼルムに寄付すると……? 」

「はいそうです。このお金で町が発展するなら俺も本望です」

 なんと……と呟くとカールはよろよろとイスに座り込んだ。

「君は神の使いか何かなのかね……」

「神父ですので……間違ってはいないかもしれませんね」

 死神の使いじゃろ! とフレイアが口を挟むが無視無視!!

「……アレスくんならこのお金、どう使う? 」

 急に意見を求められて困惑する俺。
 そうだな……。

 ここは真面目に考えなければなるまい。

「まずは……町の入口と外とを隔てる壁を整備したいですね。俺とミシェルがいるとはいえやはり魔物の襲撃には備えたいです。後は道ですかね。だいぶボロボロで歩きにくいので」

 我ながら悪くはない答えだと思うがどうだろう?

「わしはレストランが欲しいのー、後温泉とやらも欲しい」

「あー、温泉を復活させるのも悪くないな」

 じゃろ? と得意げになるフレイア。

「なるほど……守りを強化か……」

 急に改まるカール。なんだか空気がピリッとするのを感じた。

「アレスくん、やはりこのお金は受け取れない。君が使ってくれ」

「え? どうしてですか? 」

 まさか俺、答えを間違えたのだろうか……?
 カールの機嫌を損ねてしまったのなら謝らなければ……。

「このお金はアレスくん、君が町長として使ってくれ」

「ああなるほど。俺が町長として……っては? 」

 今何と言われた?
 俺が町長?

「君が来てからというもの、この町は良い方向に向かっている。これは君の力のお陰だ」

「いやいやいやいや、たまたまですよ!! 」

 そんなことはない、と首を振るカール。

「君がいなければ愛する孫娘であるシャロンも魔物に殺されていた。感謝してもしきれない」

「俺に町長なんて無理ですよ……!! 俺はただの神父です。それも、落ちこぼれの」

「君は落ちこぼれなんかじゃない。現にイルゼルムを救ってくれているじゃないか」

「でも、俺は……」

「私は長年町長をやっていたがシェルターに引きこもり、魔物の影に怯え、生きていくのに精一杯だった……。そんな状況を変えてくれたのは君、アレスくんだ」

 彼の目は真剣だ。俺をからかっているわけではない。
 
「勿論君に全て丸投げするつもりなどない。私たちも協力は惜しまないつもりだ」

 フレイアの方をちらりと見る。すると彼女はにやりと笑った。

「ふん、もう心は決まっとるんじゃろ? そんな顔をしとる」

 俺の心は……。

「……カールさん」

 改めて彼の目を見る。これは遊びじゃない。

「俺、まだここに来たばかりだけど、この町が好きです。この町がこのままなくなるなんて俺は嫌だ!! 」

 だから……俺は一呼吸置く。

「やります町長! やらせてください!! 」

 こうして俺はイルゼルムの神父兼町長に就任したのだった!

 
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