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春
第13話 春は恋の季節
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花見に来た俺たち、そこは桃色の花びらが舞い、空気の澄んだ綺麗な場所だった。
そしてカールたちはもうそこにいて、シートにたくさんの食べ物を広げてもう宴会を始めているようだ。
「ガハハハハ!!! まさか生きている間に花見なんてものが出来るとはな! 」
すっかり酔っ払ったリュイ。酒の入ったビンを振り回してご機嫌だ。
「ほんとだな! これも死神様の御加護だ!」
そして同じく酔いどれで肩を組むカール。
そんな二人をシャロンじとっとした目で睨み付けていた。
「……邪魔しないって言ってたのに」
ぽつりとそう呟いたのが聞こえたが、邪魔とは一体何のことだろうか……?
「まったく、相変わらず馬鹿してるね」
そしてそんな様子を呆れたように眺めているのがキクリだろう。
人の良さそうなおばあさんだが、その情熱をたたえた瞳はただ者ではないことを表している。
俺の視線に気がついたキクリが不意に近寄ってきた。
「ああ君がアレスかい。すまないね、うるさい連中で」
「いえ、賑やかで楽しいです」
そりゃあ良かった。とクックッと笑うキクリは確かに癖がありそうだ。
「私の名前ぐらいは聞いているかな? 温泉を経営してたキクリだ」
「してた……? 」
「温泉が湧いていたのももう昔の話だな。いつの日か源泉がなくなってしまい……今はただの跡地さ」
そうやって寂しく笑うキクリは複雑な思いを抱いているのだろう。
「そんな……」
「まさか死神様にも温泉を復活させることは出来ないだろうしねえ……こればかりは仕方ない。時間というのは残酷だね」
「あ、聞いているんですね」
当たり前さ、と答えるキクリ。
「あんた町の有名人だからね。死神に惚れられた規格外の神父が来たって」
「何か微妙に違う……」
死神に惚れられたではなく、なつかれた。
規格外ではなく、至って落ちこぼれのダメ神父だ。
「それで、嫁は決めたのかい? 」
「は、はい?? 」
突然振られた話題に俺は思わず上擦った変な声をあげた。
「いやねぇ、この町は若い男がいないだろ? だから恋ばなが足りんのだよ」
「こ、恋ばな……? はぁ……」
「おや、女はいつになっても恋の話が好きなもんだよ。人生の潤いってもんさ」
そんなもんですかね……と呟く俺。
「それで? フレイア、シャロン、ミシェル。三人の中じゃ誰と良い感じなんだい? 皆別格の美女だし性格も良いじゃないか」
「は、はぁ……」
キクリの圧が強すぎて思わず後退りをする俺。これが恋のパワーなのだろうか……。
「まあアレスも来たばかりだし進展もないか……」
「おーい、少年! 何の話だ! 」
ガバッと俺に抱きついて来たのはすっかり出来上がったリュイ。
「うるさいねえ、今は恋愛話をしてるんだよ。邪魔者はあっちにお行き! 」
しっしっとリュイを追いやるキクリ。
「連れねえなぁばあさん。恋か……それなら俺の娘だって良い女だぞ! 」
「娘さん……? ああそういえば奥さんと娘がいるって言ってましたね」
「そうなんだよー! 実は娘がこの町に戻ってきてくれることになって、俺はもうウキウキだ! 」
「ほう、マルタの嬢ちゃんが戻ってくるとは……ますます面白くなりそうだ」
ニヤリと笑うキクリ。うん、嫌な予感しかしない。
「マルタ? 」
「俺の娘の名前だ! クールだけど実は優しくて情熱があってそして何より嫁に似た美女なんだよなぁ、俺の一番大切な宝物だ 」
「なるほど……ぜひお会いしてみたいですね」
「嫌だめだ!!! 娘は君には渡せないからな!! ああマルターーーお父さんだよーーー!!! 」
「うるさいぞ、酔っ払い! でも、アレスの嫁候補が四人か……それも面白そうだな……」
最後の方はぼそりと呟くキクリ。
いやいやいやいや、まだ俺結婚するとも決めてないんですけど!?
「なんじゃ、結婚だの嫁だの下らんのう」
「フレイア! 」
いつの間にか来ていたフレイアがするりと俺に抱き付く。
「結婚なんて人間のしきたりに縛られる必要はない。わしは寛容じゃ、側室の一人や二人で目くじら立てんよ」
「なるほどな…… 」
いやなるほどじゃないですよキクリ!!
「わしのアレスは大変魅力的じゃから他の女が寄ってくるのも当たり前じゃ、まあ一番はわしじゃけどな」
そう言うと俺の持っていた団子をパクリと口に含む。
「……面白い女だ。このキクリ、まだまだ死ねないな」
「くふふっ、魂を取られる前にその目で見届けるが良いぞ。……アレスの選択をな」
目を見合わせてにやりと笑う二人。
あれ? キクリとフレイア、意外と相性が良いのかもしれない?
そしてそれに挟まれる俺は、一体どうしたら良いのだろうか……。
そしてカールたちはもうそこにいて、シートにたくさんの食べ物を広げてもう宴会を始めているようだ。
「ガハハハハ!!! まさか生きている間に花見なんてものが出来るとはな! 」
すっかり酔っ払ったリュイ。酒の入ったビンを振り回してご機嫌だ。
「ほんとだな! これも死神様の御加護だ!」
そして同じく酔いどれで肩を組むカール。
そんな二人をシャロンじとっとした目で睨み付けていた。
「……邪魔しないって言ってたのに」
ぽつりとそう呟いたのが聞こえたが、邪魔とは一体何のことだろうか……?
「まったく、相変わらず馬鹿してるね」
そしてそんな様子を呆れたように眺めているのがキクリだろう。
人の良さそうなおばあさんだが、その情熱をたたえた瞳はただ者ではないことを表している。
俺の視線に気がついたキクリが不意に近寄ってきた。
「ああ君がアレスかい。すまないね、うるさい連中で」
「いえ、賑やかで楽しいです」
そりゃあ良かった。とクックッと笑うキクリは確かに癖がありそうだ。
「私の名前ぐらいは聞いているかな? 温泉を経営してたキクリだ」
「してた……? 」
「温泉が湧いていたのももう昔の話だな。いつの日か源泉がなくなってしまい……今はただの跡地さ」
そうやって寂しく笑うキクリは複雑な思いを抱いているのだろう。
「そんな……」
「まさか死神様にも温泉を復活させることは出来ないだろうしねえ……こればかりは仕方ない。時間というのは残酷だね」
「あ、聞いているんですね」
当たり前さ、と答えるキクリ。
「あんた町の有名人だからね。死神に惚れられた規格外の神父が来たって」
「何か微妙に違う……」
死神に惚れられたではなく、なつかれた。
規格外ではなく、至って落ちこぼれのダメ神父だ。
「それで、嫁は決めたのかい? 」
「は、はい?? 」
突然振られた話題に俺は思わず上擦った変な声をあげた。
「いやねぇ、この町は若い男がいないだろ? だから恋ばなが足りんのだよ」
「こ、恋ばな……? はぁ……」
「おや、女はいつになっても恋の話が好きなもんだよ。人生の潤いってもんさ」
そんなもんですかね……と呟く俺。
「それで? フレイア、シャロン、ミシェル。三人の中じゃ誰と良い感じなんだい? 皆別格の美女だし性格も良いじゃないか」
「は、はぁ……」
キクリの圧が強すぎて思わず後退りをする俺。これが恋のパワーなのだろうか……。
「まあアレスも来たばかりだし進展もないか……」
「おーい、少年! 何の話だ! 」
ガバッと俺に抱きついて来たのはすっかり出来上がったリュイ。
「うるさいねえ、今は恋愛話をしてるんだよ。邪魔者はあっちにお行き! 」
しっしっとリュイを追いやるキクリ。
「連れねえなぁばあさん。恋か……それなら俺の娘だって良い女だぞ! 」
「娘さん……? ああそういえば奥さんと娘がいるって言ってましたね」
「そうなんだよー! 実は娘がこの町に戻ってきてくれることになって、俺はもうウキウキだ! 」
「ほう、マルタの嬢ちゃんが戻ってくるとは……ますます面白くなりそうだ」
ニヤリと笑うキクリ。うん、嫌な予感しかしない。
「マルタ? 」
「俺の娘の名前だ! クールだけど実は優しくて情熱があってそして何より嫁に似た美女なんだよなぁ、俺の一番大切な宝物だ 」
「なるほど……ぜひお会いしてみたいですね」
「嫌だめだ!!! 娘は君には渡せないからな!! ああマルターーーお父さんだよーーー!!! 」
「うるさいぞ、酔っ払い! でも、アレスの嫁候補が四人か……それも面白そうだな……」
最後の方はぼそりと呟くキクリ。
いやいやいやいや、まだ俺結婚するとも決めてないんですけど!?
「なんじゃ、結婚だの嫁だの下らんのう」
「フレイア! 」
いつの間にか来ていたフレイアがするりと俺に抱き付く。
「結婚なんて人間のしきたりに縛られる必要はない。わしは寛容じゃ、側室の一人や二人で目くじら立てんよ」
「なるほどな…… 」
いやなるほどじゃないですよキクリ!!
「わしのアレスは大変魅力的じゃから他の女が寄ってくるのも当たり前じゃ、まあ一番はわしじゃけどな」
そう言うと俺の持っていた団子をパクリと口に含む。
「……面白い女だ。このキクリ、まだまだ死ねないな」
「くふふっ、魂を取られる前にその目で見届けるが良いぞ。……アレスの選択をな」
目を見合わせてにやりと笑う二人。
あれ? キクリとフレイア、意外と相性が良いのかもしれない?
そしてそれに挟まれる俺は、一体どうしたら良いのだろうか……。
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