外れ職業の旅芸人(LV.15)だったけれど、呪いの装備を使いこなせるチートに目覚めました

ようこそアンフェルサーカス団へ

第46話 空間渡り

「間に合わなかった……」

　泣きじゃくる人影が見える。声の感じからしておそらく女性だろうか。
　そして目の前には倒れ伏すジョージ、オークレイ、そして筋肉隆々な男性と長髪の男性。

「私……私のせい？　嘘でしょ、ねえ、皆……起きてよ。置いていかないで……」

　地面に膝をつきうなだれる彼女はしばらく泣き叫んでいたが、あるとき、覚悟を決めたように自分の短刀を取り出した。

「大丈夫、少し痛いだけ。直ぐに転生して、皆と会える……」

　ぶつぶつと自分に言い聞かせるように彼女は彼女はそう繰り返すと、自分の首に短刀を押し当てた。

「あああああああ！！！！！　」
　
　一気に短刀を突き差した彼女、飛び散る鮮血、どしゃりと崩れ落ちる女性。

 ーーーー

「ノアさん！！　」

　テスカの声で現実に引き戻された。
　今のはおそらく盗賊ヴァイスの記憶……？

　そして僕の手の中には今までと同じく、呪いを打ち消した新たな装備があった。

『神龍の聖仮面』

　鳥を模したような仮面から、名前の通り龍の顔を象ったようなものに変わっている。
　黒いくて古ぼけたそれは、まるで磨かれたかのように白銀に輝いている。

「ノアさん……これは……？　」

　そして僕は我に還った。今は呑気に分析している場合ではない。
　慌ててその仮面を装備すると、コアとテスカ、そしてリオンを抱える。

　うん、先ほどとはうって変わり、まるで羽のように体が軽い。

「殺してやる……！！　貴様からな！！　」

　そしてソフィアの方を向くと、今まさにクロエの攻撃の手が彼女に伸びようとしているさなかであった。

「ソフィア！　」

　このままだと彼女の命が危ない。
　しかし、今の場所から彼女ものいる場所まではそれなりに距離がある。

　間に合うか……？

　いや、間に合わせるのだ

　僕は強く地面を蹴った。
　すると、瞬きをして次の瞬間には、僕はソフィアの抱えていた。

「何！？　今、どこから……！？　」

　自分でも理解が追いつかない。しかし確かに今僕は空間を渡った。
　そして僕はソフィアたちを安全な場所まで移動させると、そっと四人を地面に下ろす。

「あんた……その力」

　ソフィアがあんぐりと口を開けてぽかんとしている。

「説明は後！　」

　僕は再びクロエに向かって走り出す。そしてイメージをする。どこに移動し、どこに行けば彼女を翻弄出来るのかと。

「あの一瞬で……まさか私の速さを超えた！？　」

　目で捉えることすら出来なかったクロエの動きがまるでスローモーションのように見える。
　今、この場を支配しているのは自分。そんな高揚感が僕を駆り立てた。

「くそくそくそくそ！！！ありえない、人間ごときが私の速さを超えるなど……！」

　初めてクロエに焦りが見えた。その焦りに引っ張られてか、動きが酷く雑になっている。
　ぶんぶん自分の手を振り回し、何とか僕に攻撃を当てようとしているのだろう。

「貰った！！　」

　僕は生まれた隙を見逃さなかった。
　
　その刹那の時間、僕の剣技は彼女の首を跳ね飛ばした。