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闘技大会の街 コロセウム

第17話 エリザベスとの遭遇

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 久しぶりにふかふかベッドに飛び込んだ僕たちはしばしその柔らかさを楽しんだ後、明日の闘技大会への作戦を練ることにした。

……まぁ作戦と言っても出来るだけ怪我をせずに参加賞をゲットしようというセコい考えなのだが。

「……ノアなら大丈夫」

 リオンがぐっとガッツポーズを見せた。その目は僕の勝利を確信しているかのようだ。

 まさかこの万年控えだった僕が闘技大会闘技大会に出ることになるなんて考えてもみなかった。
 いつもアスベルの活躍を端っこで見ているだけの僕だったのだ。

「そういえば、リヒトってどういう意味なの? 」

 ふと、思い出してリオンに聞く。リヒト……僕もどこかで聞いたような気がするんだけどな。

 しかしリオンはちょこんと首を傾げただけで何も答えない。しばしの沈黙の後、ようやく口を開く。

「……分からない。ただ誰かの名前だった気がする」

「名前か……ご両親どちらかの名前かもしれないな」

 リヒトなんて名前中々いないだろうし、これは彼女の親を探す良い手がかりになりそうだ。

「さて、僕は明日に向けて大量の薬草でも買い込んでこようかな。リオンは? 」

「ここで待ってる」

 僕は分かったと答えると、絶対に外にでるんじゃないぞと彼女に言い聞かせる。そしてそのまま道具屋に向かったのだった。

◇◇◇

 辺りはぼちぼち暗くなっており、人通りもまばらだ。流石にこの時間になるとあの大男たちの姿も見えなくなっていた。

「全財産……67ガルドか。6個ぐらいは買い占められるかな」

 一応あの呪いのアイテムがあるのだが何回使えるかも分からないし、いつ呪いが降りかかってきてもおかしくない。ここは薬草で堅実に回復するのが一番だ。

 欲を言えばポーションも買っておきたいところなのだが、いかんせんお金がないので諦めるしかない。
 ああどうしよう……まさか死ぬなんてことはないよね?

 そもそも旅芸人ごときが闘技大会に参加すること自体が異例中の異例なのだ。
 そう考えると心臓がバクバクと脈打つのを感じた。

「待て」

 すると不意に後ろから声をかけられた。振り替えるとそこにいたのはなんとあの女騎士、エリザベス。
 思わずどきりと心臓が止まるかと思った。まさかこんなただの道端で遭遇してしまうなんてツイていない。

「何か? 」

 僕は努めて平静を装い返事をする。声は震えてないだろうか? 心配ではある。

「あのとき飲食店にいたやつだな? 女の子を連れていただろう」

「そうでしたっけ? 」

「ん? どこかで聞いたことのある声だな……」

 怪訝そうに顔をしかめるエリザベス。なるほどその顔も美しい。が、僕は焦る気持ちでいっぱいだった。

「そうか? 僕、じゃなくて……俺は貴女と会うのは初めてだが」

 せめてものカモフラ―ジュとして口調を変えてみる。
 下らない足掻き方だが、通用すると良いなあ……。

「いや……この声。どこで聞いたのだったか……」

「もう良いか? 妹を待たせているんだ」

「……!! そうだあのレッド・ドラゴンのときの! 」

 やばい、バレる! 本能的に察した僕は一目散にリオンの元へと走った。エリザベスの方を振り返ることはなかった。
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