13 / 50
酪農の村ヨード
第13話 面倒ごとからは逃げちゃいましょう
しおりを挟む
「白状しなさい! あなたがレッド・ドラゴンを倒したんじゃないんでしょう? 協力者の名前を言いなさい! 」
「だから……一応僕が倒したんですって! 」
「一応ってどういうことなの!? はっきりしないわね」
冒頭から聞き苦しい会話をしてすまない。今の状況を簡単に説明すると、成り行きでレッド・ドラゴンを討伐してしまった僕は、ギルドを介さずに依頼を達成してしたということで拘束される羽目になってしまった。
僕にもよく分からないのだか簡単に言うとギルドに喧嘩を売ってしまったらしい。
そんで、リオンと竜のお墓を作ってから薬草をたっぷり持って村に帰った途端に取っ捕まったってわけだ。
「いい加減吐きなさい! 貴方じゃとても勝てる相手じゃないわ! 」
気の強そうな女戦士が眉をつり上がらせて怒鳴る。
「だーかーら! 僕たちは村の人の頼みで薬草を取りに行って、たまたま竜に襲われたから応戦しただだけですって! 」
「その割には傷付いたはずの騎士たちの傷は完全に癒えているし、貴方一人の力じゃないはずよ。誰かと協力して報酬を総取りしようとでも思ったんでしょう? 」
そう、ギルドから依頼を受けると手数料としてその報酬の何割かをギルドに取られてしまう。そのことからこの手の犯罪があることは事実だ。
「それはこのアイテムを使ったって何度も言ったじゃないですか!」
僕は例の本を見せてみるが女戦士
は、ふんと小馬鹿にしたように鼻を鳴らすだけで開こうともしない。
「呪いがかかったボロい本にそんな力があるもんか。そもそも呪われたものを持ち歩くなんてちょっと頭がどうかしてるんじゃないか? 」
そこまで言わなくても良いんじゃないか!? と頭に血が昇るのを必死に耐える。
「そうだ、聖騎士の女の人がいた!! その人に聞けば分かるはずです」
「聖騎士の女……? あぁ、エリザベス様か。そうか、あの御方の手柄を横取りしようって魂胆だったんだな」
「は!? 違う、僕たちは彼女の悲鳴を聞き付けて助けに行ったんだ! 」
「聖騎士ともあろう人が旅芸人なんぞに助けられることなどないわ」
もう話にならない、僕は深くため息をつくと肩を落とした。
「決まりだな。貴様、牢送りにしてやる。さあ、そのボロい剣をこちらに渡せ! 」
「あ、それに触っちゃ……」
僕の剣を奪い取った戦士だったが、途端に顔色がどす黒く変色していく。
「な、なんだこれ……は。さ、寒い……!! 体が……痛い」
震える声で苦しむ女戦士はいよいよばたりと床に倒れ込んでしまった。
「まさかこんなことになるなんて…… 」
呪いの力はやはり存在するのだ。それもこんな強力なものが。
少し忘れかけてはいたが、やはり呪いというのは馬鹿に出来ない。
「ノア、逃げよう」
今まで黙っていたリオンが不意に声をあげ、僕の手を引く。
これ以上ここにいても罪人として牢にぶちこまれるだろう。そうなるぐらいなら逃げた方がマシだ。
僕はこくりと頷くと、女戦士から呪いの剣を奪い取り、さっさとギルドを後にしたのだった。
よくしてもらったヤンさんにはせめて挨拶をしておこうと彼の元へ訪れた僕たち。
ヤンさんは僕たちが採った薬草の量に驚いたように目を丸くしたが、すぐに人当たりの良い笑顔を浮かべると
「ギルドの連中に取っ捕まったんだって? でも俺はお前さんたちが良い人だってこと知ってるからよ」
「ありがとうございます、少々誤解をされてしまったみたいで……」
「あいつらは頭が固いからな。ほれ、これ弁当だ。お腹が空いたら食べると良い」
彼から渡されたのは美味しそうなチーズとハムが挟まったサンドイッチ。思わずごくりと生唾を飲んでしまうほどの逸品だ。
「わーい! 美味しそう! ありがとう」
リオンが無邪気にはしゃぐ。そんな彼女の様子を見つめなからヤンさんは僕にそっと耳打ちをした。
「お金が必要ならここからずっと西に行ったところに、闘技場の町コロセウムがある。丁度今の時期闘技大会をやるからここで入賞目指すと良い」
「え!? いや~、僕にはとてもとても」
「そんなことない、きっと君なら良い線行くと思うぞ」
「なに? 何の話してるの~? 」
リオンがぴょこんと僕たちの間に割り込む。
「何でもない、さあリオン。次は西にある町、コロセウムに行ってみるか」
はーい、と元気に返事をするリオンを連れ、僕は闘技場で有名な町コロセウムに向かうことになったのだった。
「だから……一応僕が倒したんですって! 」
「一応ってどういうことなの!? はっきりしないわね」
冒頭から聞き苦しい会話をしてすまない。今の状況を簡単に説明すると、成り行きでレッド・ドラゴンを討伐してしまった僕は、ギルドを介さずに依頼を達成してしたということで拘束される羽目になってしまった。
僕にもよく分からないのだか簡単に言うとギルドに喧嘩を売ってしまったらしい。
そんで、リオンと竜のお墓を作ってから薬草をたっぷり持って村に帰った途端に取っ捕まったってわけだ。
「いい加減吐きなさい! 貴方じゃとても勝てる相手じゃないわ! 」
気の強そうな女戦士が眉をつり上がらせて怒鳴る。
「だーかーら! 僕たちは村の人の頼みで薬草を取りに行って、たまたま竜に襲われたから応戦しただだけですって! 」
「その割には傷付いたはずの騎士たちの傷は完全に癒えているし、貴方一人の力じゃないはずよ。誰かと協力して報酬を総取りしようとでも思ったんでしょう? 」
そう、ギルドから依頼を受けると手数料としてその報酬の何割かをギルドに取られてしまう。そのことからこの手の犯罪があることは事実だ。
「それはこのアイテムを使ったって何度も言ったじゃないですか!」
僕は例の本を見せてみるが女戦士
は、ふんと小馬鹿にしたように鼻を鳴らすだけで開こうともしない。
「呪いがかかったボロい本にそんな力があるもんか。そもそも呪われたものを持ち歩くなんてちょっと頭がどうかしてるんじゃないか? 」
そこまで言わなくても良いんじゃないか!? と頭に血が昇るのを必死に耐える。
「そうだ、聖騎士の女の人がいた!! その人に聞けば分かるはずです」
「聖騎士の女……? あぁ、エリザベス様か。そうか、あの御方の手柄を横取りしようって魂胆だったんだな」
「は!? 違う、僕たちは彼女の悲鳴を聞き付けて助けに行ったんだ! 」
「聖騎士ともあろう人が旅芸人なんぞに助けられることなどないわ」
もう話にならない、僕は深くため息をつくと肩を落とした。
「決まりだな。貴様、牢送りにしてやる。さあ、そのボロい剣をこちらに渡せ! 」
「あ、それに触っちゃ……」
僕の剣を奪い取った戦士だったが、途端に顔色がどす黒く変色していく。
「な、なんだこれ……は。さ、寒い……!! 体が……痛い」
震える声で苦しむ女戦士はいよいよばたりと床に倒れ込んでしまった。
「まさかこんなことになるなんて…… 」
呪いの力はやはり存在するのだ。それもこんな強力なものが。
少し忘れかけてはいたが、やはり呪いというのは馬鹿に出来ない。
「ノア、逃げよう」
今まで黙っていたリオンが不意に声をあげ、僕の手を引く。
これ以上ここにいても罪人として牢にぶちこまれるだろう。そうなるぐらいなら逃げた方がマシだ。
僕はこくりと頷くと、女戦士から呪いの剣を奪い取り、さっさとギルドを後にしたのだった。
よくしてもらったヤンさんにはせめて挨拶をしておこうと彼の元へ訪れた僕たち。
ヤンさんは僕たちが採った薬草の量に驚いたように目を丸くしたが、すぐに人当たりの良い笑顔を浮かべると
「ギルドの連中に取っ捕まったんだって? でも俺はお前さんたちが良い人だってこと知ってるからよ」
「ありがとうございます、少々誤解をされてしまったみたいで……」
「あいつらは頭が固いからな。ほれ、これ弁当だ。お腹が空いたら食べると良い」
彼から渡されたのは美味しそうなチーズとハムが挟まったサンドイッチ。思わずごくりと生唾を飲んでしまうほどの逸品だ。
「わーい! 美味しそう! ありがとう」
リオンが無邪気にはしゃぐ。そんな彼女の様子を見つめなからヤンさんは僕にそっと耳打ちをした。
「お金が必要ならここからずっと西に行ったところに、闘技場の町コロセウムがある。丁度今の時期闘技大会をやるからここで入賞目指すと良い」
「え!? いや~、僕にはとてもとても」
「そんなことない、きっと君なら良い線行くと思うぞ」
「なに? 何の話してるの~? 」
リオンがぴょこんと僕たちの間に割り込む。
「何でもない、さあリオン。次は西にある町、コロセウムに行ってみるか」
はーい、と元気に返事をするリオンを連れ、僕は闘技場で有名な町コロセウムに向かうことになったのだった。
0
お気に入りに追加
1,688
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです
桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる