外れ職業の旅芸人(LV.15)だったけれど、呪いの装備を使いこなせるチートに目覚めました

寿司

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酪農の村ヨード

第13話 面倒ごとからは逃げちゃいましょう

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「白状しなさい! あなたがレッド・ドラゴンを倒したんじゃないんでしょう? 協力者の名前を言いなさい! 」

「だから……一応僕が倒したんですって! 」

「一応ってどういうことなの!? はっきりしないわね」

 冒頭から聞き苦しい会話をしてすまない。今の状況を簡単に説明すると、成り行きでレッド・ドラゴンを討伐してしまった僕は、ギルドを介さずに依頼を達成してしたということで拘束される羽目になってしまった。

 僕にもよく分からないのだか簡単に言うとギルドに喧嘩を売ってしまったらしい。

 そんで、リオンと竜のお墓を作ってから薬草をたっぷり持って村に帰った途端に取っ捕まったってわけだ。

「いい加減吐きなさい! 貴方じゃとても勝てる相手じゃないわ! 」
 
 気の強そうな女戦士が眉をつり上がらせて怒鳴る。

「だーかーら! 僕たちは村の人の頼みで薬草を取りに行って、たまたま竜に襲われたから応戦しただだけですって! 」

「その割には傷付いたはずの騎士たちの傷は完全に癒えているし、貴方一人の力じゃないはずよ。誰かと協力して報酬を総取りしようとでも思ったんでしょう? 」

 そう、ギルドから依頼を受けると手数料としてその報酬の何割かをギルドに取られてしまう。そのことからこの手の犯罪があることは事実だ。

「それはこのアイテムを使ったって何度も言ったじゃないですか!」

 僕は例の本を見せてみるが女戦士
は、ふんと小馬鹿にしたように鼻を鳴らすだけで開こうともしない。

「呪いがかかったボロい本にそんな力があるもんか。そもそも呪われたものを持ち歩くなんてちょっと頭がどうかしてるんじゃないか? 」

 そこまで言わなくても良いんじゃないか!? と頭に血が昇るのを必死に耐える。

「そうだ、聖騎士の女の人がいた!! その人に聞けば分かるはずです」

「聖騎士の女……? あぁ、エリザベス様か。そうか、あの御方の手柄を横取りしようって魂胆だったんだな」

「は!? 違う、僕たちは彼女の悲鳴を聞き付けて助けに行ったんだ! 」

「聖騎士ともあろう人が旅芸人なんぞに助けられることなどないわ」

 もう話にならない、僕は深くため息をつくと肩を落とした。
 
「決まりだな。貴様、牢送りにしてやる。さあ、そのボロい剣をこちらに渡せ! 」

「あ、それに触っちゃ……」

 僕の剣を奪い取った戦士だったが、途端に顔色がどす黒く変色していく。

「な、なんだこれ……は。さ、寒い……!! 体が……痛い」

 震える声で苦しむ女戦士はいよいよばたりと床に倒れ込んでしまった。

「まさかこんなことになるなんて…… 」

 呪いの力はやはり存在するのだ。それもこんな強力なものが。
 少し忘れかけてはいたが、やはり呪いというのは馬鹿に出来ない。
 
「ノア、逃げよう」

 今まで黙っていたリオンが不意に声をあげ、僕の手を引く。

 これ以上ここにいても罪人として牢にぶちこまれるだろう。そうなるぐらいなら逃げた方がマシだ。

 僕はこくりと頷くと、女戦士から呪いの剣を奪い取り、さっさとギルドを後にしたのだった。

 よくしてもらったヤンさんにはせめて挨拶をしておこうと彼の元へ訪れた僕たち。

 ヤンさんは僕たちが採った薬草の量に驚いたように目を丸くしたが、すぐに人当たりの良い笑顔を浮かべると

「ギルドの連中に取っ捕まったんだって? でも俺はお前さんたちが良い人だってこと知ってるからよ」

「ありがとうございます、少々誤解をされてしまったみたいで……」

「あいつらは頭が固いからな。ほれ、これ弁当だ。お腹が空いたら食べると良い」

 彼から渡されたのは美味しそうなチーズとハムが挟まったサンドイッチ。思わずごくりと生唾を飲んでしまうほどの逸品だ。

「わーい! 美味しそう! ありがとう」
 
 リオンが無邪気にはしゃぐ。そんな彼女の様子を見つめなからヤンさんは僕にそっと耳打ちをした。

「お金が必要ならここからずっと西に行ったところに、闘技場の町コロセウムがある。丁度今の時期闘技大会をやるからここで入賞目指すと良い」

「え!? いや~、僕にはとてもとても」

「そんなことない、きっと君なら良い線行くと思うぞ」

 「なに? 何の話してるの~? 」

 リオンがぴょこんと僕たちの間に割り込む。

「何でもない、さあリオン。次は西にある町、コロセウムに行ってみるか」

 はーい、と元気に返事をするリオンを連れ、僕は闘技場で有名な町コロセウムに向かうことになったのだった。
 
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